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放牧期と収穫期

9月9日。朱里と春奈は気分よく目覚めた。2人は同じマンションの違う階に住んでいた。まだ先日の余韻が残っている。朱里たちはクルトたちの手で女に戻してもらえたのだ。となればその恩義に報いなければ。2人は古いタイプ。三十路だからという理由で参戦を断ってきたが、クルトたちが私たちを女の子扱いしてくれるのなら問題ない。しかも弟たちが玲子たちの面倒を見てくれるという。現役のマルスの言葉には重みがある。彼らには魔法戦士を優しくしつける義務を負うからだ。確かにマルスはシードマンと違うが、交戦国の手で魔法戦士を大切にはぐくむという方針にブレはないはず。あとは私たちの代わりをどうするか?だが、とりあえず私たち4人はメビソア公国に申請を行わねばならない。といってもマクダにひとこと言うだけだが、まだ玲子たちの本心を聞いていない。娘たちが帰宅するとさっそく家族会議が開かれた。朱里の部屋のリビングで4人は話し合いを重ねた。玲子たちはまだハビエルたちとの面識がなく、懸念を示した。「お母さんたちはクルトたちにされたんだからいいとして。私たちはまだ彼らとの面識がないからね」かと言って頭から反対するわけでもない。娘たちは母親たちへの嫉妬もあるし、この時点で参戦を決めるのは早計。なのでいったん保留とした。玲子たちは安堵した。朱里たちはこれ以上ムリは言えないし、娘たちが慎重になる気持ちもわかる。私たちはあくまでも弱い立場。決定権がマルス側にある以上、仕方がない。でも態度を保留した玲子たちは内心複雑。私たちはリアルで浮いた存在に過ぎず、クラス内でも孤立気味。幸いにも純正女学院は文化祭を廃止したため、10月に文化祭の準備で孤立する恐れはない。でも周りに気になる異性や先生はおらず、出逢いを異世界に求めざるを得ない。朱里たちも同じ。2人はちょっとした美人だが、32歳でバツイチ子持ちという属性がリアルで厳しいハンデとなる。2組の美人母娘は静かに参戦に向かい始めた。玲子たちにも異存はないが、もう少しきっかけが必要だ。周りの女の子たちは続々と参戦または復帰を決めていた。それは刺激にもなり、時にはプレッシャーに変わる。でも娘たちに仕事がある以上、好き勝手はできない。果たして私たちの代わりなんているのかな?今は若い子が簡単に集まる時代ではないが、異世界は変わりつつある。マクダによれば年明けから8月末までに10組20人の魔法戦士が釈放された。しかも全員が満10歳から12歳の幼き魔法戦士たち。彼女たちはみんな可愛くて気立てがよく、将来の復帰を当て込み、釈放された。この子たちは純粋無垢で、中にはシードマンの支配から脱するのをイヤがる子もいた。そこで異世界側は彼らが何か不祥事を起こしたことにした。彼女たちはしぶしぶ納得したが、ご主人様に未練たらたら。でもこうした放牧期がのちのち実り多き収穫期へと着実につながっていくのだ。リタイヤした幼き魔法戦士たちは早くも復帰を考え始めた。中には少し休みたい子もいたが、大半はそうではない。性の悦びに目覚めた子たちは止まらなかった。彼女たちは必然的に前のご主人様と似た人を求めた。異世界側も彼女たちの好みや趣向を熟知した上で、最もふさわしいご主人様をあてがうよう努めた。[キサラ]の小野寺えりこと向井尚美は12歳で友人同士。2人はシードマンのお仕置きも悪くはないが、今度はマルスのお兄ちゃんたちがいいかもと思い始めた。家庭訪問に来てくれた玲子たちにも好感した。「あんなに美人なのに。なんで玲子さんたち参戦しないのかな?」「わからないわ。でも美月さんたちだって必ず参戦してくるはずよ」えりこは天然タイプだが、尚美はリアリスト。でもいざ参戦となるといち早くシードマンにハマり込んだのは尚美。こうした逆転現象は枚挙にいとまがない。でも私たちと歳が近い方が安心感が違う。すでにえりこには16歳のジュール。尚美には14歳のミシェルが付けられたが、まだ2人には知らされていない。あまりこちらからせっつくのもよろしくない。思春期の女の子は扱いが難しい。なのでしばらくの間はリアルで羽根を伸ばすのもありだ。えりこたちはリアルに戻ってもなかなか居場所を見出せなかった。別に2人が例外なわけでもなく、たいがいそうだ。幼き魔法戦士たちに突出したスペックはないが、独自の世界観の持ち主であることは間違いない。えりこたちからすれば日本なんて薄っぺらくて冷たい国でしかない。ひとたび性の悦びを知れば止まらなくなるのもムリはない。リアルでは絶対に味わえないのだから。2人は聖花女学院中等部1年生だが、クラスは隣同士。文化祭は廃止され、受験はなくバイトは校則で禁止。部活は帰宅部となれば異世界にでも出逢いを求めるしかない。周りに気になる異性や先生はいなかった。同じ自治会にもいない以上、次はマルスのお兄ちゃんしかいない。

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