ソーニャとターニャの参戦
9月6日。マホロバ公国はソーニャとターニャの参戦を認めると発表した。マホロバ公国はカルーン公国と世界線が違う。異世界の女性も世界線を超えれば精神体に変わる。精神体に変われば魔法が発動する。魔法は精神体でしか発動しない。だからといって戦闘力が格段に上がりはしない。からだが軽くなり、空中戦が有利になるだけだ。もちろん必殺技などありはしない。ソーニャは18歳のアミカ。ターニャは16歳のエレナが受け持つ。アミカとエレナは仲のいい姉妹だが、両性具有。彼女たちはナルシスと呼ばれる少女兵士。ナルシスは両性具有の少女兵士だが、職業軍人でも戦闘のプロでもない。異世界で両性具有は女性に分類された。女性全体の約1割しかいないが、お姫さまたちは手を取り合って喜んだ。ソーニャたちはナルシスに優しくしつけてもらいたいと熱望していたからだ。世界線の違う国でナルシス制度を採用した国はマホロバ公国しかない。2人には[リラ]というコンビ名が与えられた。ソーニャは18歳のオルガ。ターニャは16歳のキリコから訓練を受けることに決まった。オルガとキリコは仲のいい姉妹。彼女たちはミルカと呼ばれる少女兵士だが、職業軍人でも戦闘のプロでもない。お姫さまたちは週ごとに訓練と対戦を重ねていく。いずれも17時から始める。訓練は1時間。対戦は30分だが、これには対戦前の雑談タイム10分が含まれる。体格や体力で見劣りする魔法戦士のために与えられたハンデだ。なので対戦は前後半10分ハーフ。訓練は休憩を挟んで行われる。ソーニャたちは14日から訓練が始まる。ふだんは学校があるため、異世界の学校は土日休みが通例だから週末の土曜が適切と判断された。ユニークなのは訓練も対戦も交戦国で行うこと。魔法戦士の正規のコスチュームも全て交戦国が無償で貸与する。彼女たちは交戦国の人たちの手で大切にはぐくまれるのが異世界の通例。もともと魔法戦士は法華会の所属だった。今年の5月3日に滅亡した日本を拠点に不気味にうごめく仏教団体。もちろん反社。しかし法華の外道は彼女たちを利用してあろうことか異世界制覇を目論み、見事に粉砕された。幹部たちはみんな獄につながれ、死刑か終身刑に処せられた。でも魔法戦士に罪はなく、彼女たちは当時の交戦国のシラサギ公国が面倒を見ることに決まった。法華の外道がデザインした魔法戦士の正規のコスチュームは品がなくてダサかったが、シラサギ公国は無名の若い女性デザイナーを起用した。こうした交戦国側の努力が実り、現在に至る。でもいまだにナルシスやミルカに正規のコスチュームはなく、白のテニスウェアで代用しているのが現状だ。このあたりは改善の余地がある。訓練は風が強い場所。対戦は虫が出る場所が選ばれる。前者はミニスカートがめくれやすいから。後者は吊り橋効果を期待したため。2つの場所に共通するのは七色の後光が差し込むこと。ナルシスやミルカの背後から七色の後光が差し込むことで意図的に魔法戦士に[敗者の構図]を取らせる。彼女たちは知らず知らずに敗者の構図に馴らされていく。異世界側はこうした演出が大好き。対戦場所にはのぼりが立つ。例えばシルビアなら[桃尻戦隊咲子さま有紀ちゃんご歓迎]。それも日本語ではなく現地語で。対戦相手に意味を知らされ、咲子たちは顔を赤らめて恥じ入ってしまう。でもこれはシルビアがもっと強くなるから悪くない仕組み。どうやら悪しき昭和をモデルにしているようだが、彼らにそんな自覚はない。たまたま昭和特有のあけっぴろげな性風俗が似ただけだが、意外なほど魔法戦士に大好評。ノリのよさが受けるようだ。彼女たちは異世界に取り込まれるのを潔く受け入れる。中にはイヤがる子もいるが、リアルに居場所を見出せない以上、魔法戦士の晴れ舞台は異世界しかない。リアルに戻れば砂を噛むような味気ない日々。彼女たちは異世界でしか女として扱われない。でも異世界では大した美人でなくてもかなりの美人に分類される。ちょっと可愛ければかなり可愛い部類に入る。気立てがよければ更に評価が上がる。プロポーションは痩せ型でさえあればさほど問題にされない。魔法戦士は発育が遅れ気味な子が多いが、そんな子たちは成長途上だと温かく迎えられた。勝ち気なタイプはドジっ子に仕立て上げられるのがお約束の流れ。実は咲子と有紀がその典型。シルビアは[ドジっ子コース]に分類され、地形が複雑で標高が高い場所で対戦させられた。すると毎回ではないが、横からの突風で煽られる。咲子たちは対戦前にニュース映画の撮影現場に回され、そこで馴らされた。それからアマトたちと共演したため[私たちが先輩]という意識が抜けない。そのため対戦前にマルスの前にふわりと降り立ち、マウントを取ろうとする。すると横からの突風でアマトたちの前で股を開いたはしたない姿を余すところなくさらけ出される羽目になる。