マルス制度の創設
9月4日。メビソア公国は園田ほのかと松下亜紀と母親たちについて仮の決定を下した。園田里美とほのか母娘には[アサギ]。松下麻由と亜紀母娘には[モエギ]というコンビ名が付与された。里美は16歳のニコロ。ほのかは14歳のノエル。麻由は16歳のウィード。亜紀は14歳のカルツが受け持つ。ニコロとノエル。ウィードとカルツは仲のいい兄弟。もちろん仮の決定だし、いつまでに参戦しないといけないという法的な拘束力はない。マルスは満14歳から18歳までの少年兵士。それ以上だとシードマンに分類された。メビソア公国はマルス制度の創設と美人母娘や姉妹の魔法戦士取り込みの両立を図った。彼らは従来のシードマン制度には懐疑的。確かにシードマンが魔法戦士をかしずかせ、従わせた時代があった。でもそれは果たして健全な形だろうか?今なおシシラサギ公国など異世界の大半はシードマン制度を踏襲している。そして今なおシードマンに憧れる女の子がたくさんいるのも歴然たる事実だ。でもメビソア公国は後発であるがゆえにマルス制度を採用した。その理由は若い国だからだ。リアルだとメビソア公国はベトナムに近い。違うのは親日でないこと。日本を模範としない国は異世界では当たり前。残念ながらリアルでは思春期の女の子の参戦が激減した。その理由は必ずしも少子化が原因ではない。あまりにも異世界側が幼い子たちを乱獲しすぎたからだ。そのためメビソア公国はシードマン制度の創設が頓挫した。あまりにも庶民が反対したからだ。彼らはもう少し対戦相手の年齢を下げて魔法戦士との力の拮抗を図るべきだと主張した。今なお他の国では満10歳の魔法戦士と22歳のシードマンがふつうに対戦している。厳密に言うと10歳児のコンビと22歳の成人男性コンビが戦っている。魔法戦士は2人1組で参戦するのが基本だからだ。バスケに例えると2ON2。でも10歳児は恥じらいが強くないため成人男性に対抗できない。彼女たちはシードマンから恥じらいを強くされなければ永遠に強くなれないのだ。果たしてこれでいいのだろうか?中には「それでも私たちは幸せ」と言い切る子たちもいるが、魔法戦士は世界線を超えれば精神体に変わる。精神体は精神と肉体の融合体だが、精神に重きが置かれ、デリケートに扱わなければならない。なのであまりハードなプレイには耐えられない。シードマンからの報告には「いくら中出ししても孕ませることはなかった」という証言もあるが、必ずしも信用できない。対戦場所にはレフェリーはおろかギャラリーもマスコミもいない。そんな隔絶した場所でシードマンがコンプライアンスを遵守するだろうか?もちろんマルスならば大丈夫とは言い切れないが、シードマンよりはマシ。良心の呵責くらいあるだろう。メビソア公国がほのかたちにコンビ名を付与しながらも参戦を許さないのはこうした複雑な事情があった。こうした仮の決定も里美たちには知らされない。参戦はあくまでも彼女たち次第というわけだ。メビソア公国は朱里たちの参戦も織り込み済み。朱里と玲子には[オシリス]。春奈と美月には[サラサ]というコンビ名が付与された。朱里は18歳のクルト。玲子は16歳のハビエル。春奈は18歳のコーツ。美月は16歳のリメルが受け持つ。クルトとハビエル。コーツとリメルは仲のいい兄弟。もちろんまだ朱里たちには知らされないが、異世界側はちゃんと彼女たちの好みに合った男の子をあてがってくれる。もちろん100パーセントではないが、相性はそう悪くないはず。ただしメビソア公国は慢性的な人材不足に悩んでおり、今しばらくは朱里たちの尽力が不可欠なので4人の参戦は急がない。津川花苗と津川悠子の切なる願いも叶えられた。これは対戦相手のヨアヒムたちが花苗たちとの再戦を熱望したからでもある。魔法戦士の対戦はいわばスポーツのリーグ戦に近く、そこに命のやり取りはない。いわば対戦は女として磨き抜かれるための花嫁修業。マルスの軍規にそう明記してあるわけではないが、魔法戦士は対戦なくして完成に向かうことはない。彼女たちは対戦相手と共同作業を重ねるたびに成長していく。この知らせはマクダから花苗たちに伝えられた。もちろんそれがヨアヒムたちの切なる願いであることも余すところなく伝えられた。だからといっていつまでに参戦してきなさいとは指示されない。異世界側は名古屋の地獄の酷暑を思い知り、花苗たちにムリはさせられないと判断した。このあたり異世界は変わりつつある。もともと異世界は日本以上に男社会だったが、日本を見てコレではダメだと気づいた。もともと彼らは日本人みたいにバカだったが、魔法戦士の取り込みを始めてから変わり始めた。彼女たちはみんなアンチ日本だったからだ。そのため彼らはなし崩し的にアンチ日本になっていった。いまだに根っこは変わらないが、日本より遥かにマシになった。