表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

金色に照らす 8

 天正十年(1582)三月一日の夜、高遠城を囲む山々には、城の内まで照らすかのように織田軍の篝火が焚かれていた。


 金太夫は武田家臣、今福昌和(いまふくまさかず)らと共に、法幢院曲輪にて戦の仕度を整えていた。


 夜が明けようとしている。


 三峰川を挟んだ正面の勝間村に陣取る滝川軍に動きがあるのを、金太夫は確認した。


「来るぞ」


 金太夫は、傍らにいる昌和に声をかけた。


「川を渡ってくるところを攻め立てましょう」


 金太夫と昌和は配下に下知すると、門を出て物陰に潜み、敵を待ち伏せた。


(三峰川の流れは速い。敵はどこに浅瀬があるか知るまい。渡るのに手間取っているところへ奇襲をかければ、勝てる)


 向こう岸にいる滝川軍を見ながら、金太夫は雑賀鉢の兜の緒を締め直した。


 しかし、金太夫と昌和は敵の進軍を見て驚いた。


(おかしい、なぜだ。なぜ浅瀬を知っておる)


 敵は川の浅いところを迷うことなく進んでくるのだ。


「どちらにせよ、渡ってくるところを一気に襲うぞ」


 昌和に伝えると、金太夫は手槍を口に咥えた。

 敵が川の中ほどまで来たときを見計らって、昌和は叫んだ。


「放て!」


 その声を合図に今福隊の鉄砲が一斉に火を噴いた。

 直後、隠れていた金太夫の部隊が鬨の声を挙げながら、敵に襲い掛かった。

 金太夫はゆったりと川辺に出ると、唐傘をぱさりと広げ、宙でくるくると回転させた。金色の短冊がきらきらと光る。

 唐傘を器用に背中に指すと、手槍を握り直し天に突き上げながら叫んだ。


「俺の名は渡辺金太夫照!日の本一の槍なり!」





 

 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ