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金色に照らす 7

 信濃国伊那谷の真中あたりで天竜川と三峰川がぶつかる地点がある。

 そこを三峰川沿いに溯ると藤沢川と合流する。

 そのふたつの川に囲まれた三角地帯に、高遠城は佇んでいた。

 西は断崖絶壁の石垣、三方は小高い山に囲まれた平山城である。


 織田信忠の軍勢が天竜川沿いを北上し、高遠城の目と鼻の先にある貝沼原に陣を敷いたのは、天正十年(1582)二月二十九日のことだった。


 武田勝頼の弟である、高遠城主仁科盛信(にしなもりのぶ)は、降伏を促す信忠の使者を追い払うと、決戦の意思を明確にした。


 翌日、織田軍先鋒の滝川一益(たきがわがずます)が高遠城の南に位置する白山を超えて、勝間村に陣取った。かつて金太夫たちに山菜をくれた子供たちが住んでいた村である。

 さらに武田から織田方へ寝返った小笠原信嶺(おがさわらのぶみね)を先頭に、川尻秀隆(かわじりひでたか)毛利秀頼(もうりひでより)水野忠重(みずのただしげ)らの軍勢が城を包囲した。

 織田軍総勢五万。

 対する高遠城兵は、二千である。


 金太夫は、高遠城の南の曲輪、法幢院曲輪に配置された。

 夕刻、黒い煙が東の山の向こうから昇っているのが法幢院曲輪から見えた。

 法幢院から外へ出ると、金太夫は東の山を凝視した。

 するとそこへ見張りに出ていた又兵衛が慌てた様子で曲輪内に駆け込んできた。


「金太の兄貴!大変だ!織田軍が山寺に火を放った!」


「なにぃ!」


 山寺には、城下町の人々や村人たちが避難しているはずであった。

 おそらく勝間村の子供たちもいるであろう。


 金太夫は目を見開き、もくもくと昇る煙を睨んだまま、黙ってしばらく動かなかった。

 


 

 

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