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金色に照らす 完

 安永元年(1776)のとある日、高遠の城下町を旅装束に身を包んだ一人の若い侍がさまよい歩いていた。

 

「お尋ねいたします。天正十年にこの地で戦死したという武田の臣、渡辺という武士についてお聞きしたいのですが」


 旅の侍は、通りすがる人々にこう声をかけた。

 

「勝間村にある寺の住職が詳しいだろう」


 という情報を耳にすると、すぐにその寺へと足を運んだ。


「天正十年の戦で死んだ渡辺という武士についてお聞きしたいのですが」


 若い侍は、境内に散らばった桜の花びらを竹箒で集めている恰幅のいい和尚に声をかけた。

 その和尚は少し驚いた表情をしたが、すぐに庫裏へと旅人を案内した。


 案内された部屋の床の間には、そこには不相応な古ぼけた赤提灯が飾られ、槍掛けには柄の部分が赤い槍が掛けられている。

 侍が提灯と槍を交互に眺めていると、先ほどの和尚が二つの茶碗をもって部屋に入ってきた。

 向かいに腰かけると、大きな体を窮屈そうに屈めながら青年の前に白湯を差し出した。


「渡辺様のことでしたね。この村には五郎山という山がございますが、天正十年の戦で亡くなられた仁科五郎盛信様のご遺体が眠られていることから名づけられたそうにございます。峰伝いには、同じように戦で亡くなられた方々を村の人たちが手厚く葬り、祠を建てたそうにございますが、その中に渡辺様の祠もございます」


 住職は細い目をさらに細めながら、嬉しそうに高遠の戦について語り出した。

 聞けば、先祖代々語り継がれてきた戦の詳細を彼は父から伝えられたらしい。

 旅の青年は、住職に真剣な眼差しを向けながら彼の話に耳を傾けていた。


 翌日、五郎山の中腹に聳える大きな杉の下に建てられた石祠に、鈴が供えられていた。

 その鈴には、

「武田家之臣渡邊金太夫照六代孫下野州宇都宮城主戸田家之臣渡邊金太夫茂」

と刻まれている。

 黄金色の木漏れ日の下、祠の傍らに咲く一輪の水仙が春風に撫でられ、黄色い花弁を心地よさそうに揺らしていた。



 これまで読んでいただき、誠にありがとうございました。

 参考文献やら執筆中に思ったことやらをここにつらつらと書こうとも思いましたが、蛇足であり私の至らない点を曝け出すことにもなりかねませんので、控えさせていただきます。

 皆様の率直なご意見、ご感想をお聞きしたいです。

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