金色に照らす 11
二の丸内は負傷兵でいっぱいになっていた。
右肘から先を失い顔を蒼白にして唸っている者、胴に布を巻かれ息をするのもやっとな者、生きているのか死んでいるのか判然としない者。そこには阿鼻叫喚の光景が広がっていた。
(はな殿……、はな殿はどこじゃ)
金太夫は転がっている人の間を駆け回った。
するとそこへ、三の丸から負傷した兵を担いで戻ってくる男が金太夫の視界に入ってきた。
背に負われた者の首から血がとめどなく流れ、男の肩を濡らしている。
塀の脇にそれが置かれるのを見て、まさかと思い金太夫は恐る恐る近寄って行った。それは甲冑を身に着けたはなの死体であった。
「諏訪頼清様がお討ち死になされたと聞いた奥殿は、侍女数人を連れて敵に挑みなさったのじゃ。三人ばかりの敵を討ち取られたあと、旦那様を追って自らの命をお絶ちなされた。見事な最期じゃった」
聞いているのかいないのか、金太夫はその場で膝を折りはなの頭を抱くと、狂ったように慟哭した。
まるで獣が遠吠えしているかのようであった。
その光景は異様であり、当たり前の様でもあった。
あたりが一瞬、静まり返る。
はなを塀の傍らに優しく横たえると、背中の開いたままだった朱色の唐傘をその横に立てかけた。
燦燦と頭上から降り注ぐ何も知らない太陽の光から守ってやるかのように。
金太夫は、すでに敵兵でごった返している三の丸へと歩んでいった。
ゆったりと門の外へ出る。
涙で真っ赤になった目を見開くと、槍を天高く突き上げ、目前に迫ってくる敵に向かって大声で叫びながら駆けだしていった。
高遠城はその日のうちに陥落した。
武田軍の戦死者は、城主仁科盛信をはじめ四百人以上に上った。
その死者のなかに、金太夫も含まれている。
勝頼が天目山で討たれ武田家が滅びたのは、この九日後のことであった。




