始まりの日
1人の少年が瓶が大量に入ったカゴを抱え、屋根から屋根へと渡り、坂のカーブをショートカットするために高低差ある場所から飛び降り、その身軽な動きで一番街と呼ばれる場所を走り抜けている。
「ボウズ!今日はそんなに急いでどうしたんだ!」
「牛乳配達だよ、おじさん」
足踏みをしながらその場で止まり、家の窓から話しかけてきたおじさんに返事をする。
「朝から偉えな!ほれ、これ持ってき」
「ありがと、おじさん」
投げられた果物をキャッチし、お礼を言ってから走り出す。カゴを左手で抱えながら果物を口に運び、噛み砕く。
「すっぱ!………レモンってやつかこれ」
皮ごと食べる初めての果実に少し戸惑い、顔を歪めるも全て頬張り配達を続ける。
《飛行船場》
「ここが最後か」
最後に着くは飛行船場と呼ばれる飛行船を止め、管理される施設に置かれる1台の飛行船。その飛行船にはプロペラが4つ取り付けられ、気球のようなものはつけられていない。
「飛行船………だよな。ここでいいのかな」
1枚の大きな板による橋をかけられていたので、少年はそれを渡って船の甲板に乗り込む。
「外に置いとくのはまずい………よな。すみませーん!牛乳配達に来ました!誰か!」
その船のどこからも返事が返ってくることはなく、少年は致し方なく隣に止まってる船の人に聞くことにする。
「すみません!この船の持ち主がどこ言ったかわかりませんか?」
「その船の嬢ちゃん達ならさっきどっかいちまったとこだ。どうした」
強面で重い荷物を軽々運べる筋肉を寒い中見えるようにしてる男性は意外と優しい声で問いに対して返してくれる。
「牛乳配達をしに来たんですけど」
「なら、船内に運んどきな。起き手紙でも置いておけば気づくだろ」
「わかりました。ありがとうございます」
少年は船内に入り、牛乳を置けそうな場所を探す。
「この机でいいか。置き手紙を………よし、じゃあ帰ろうか………な………」
残ってた残りの牛乳瓶を置き、手紙を置いたのでその場から去ろうとした時一つの物が目に映る。
「これ………デバイスだよな」
大切そうにガラスケースにしまわれた西洋風の長剣を見つめる。
「使われてないのかな………すげえ綺麗だけdo」
ガコンっと、船が揺れる。
「っ!?。まさか、切り離された!?」
この飛行船場の飛行船は特殊な技術で常に浮いており、プロペラは上昇下降が主な役目となっており、普段は飛行船場の方から接続用レーンが出ており、そこに止まっている。
今、そのレーンから飛行船が切り離されたのだ。
「やばい………これがバレたら………獣人族に迷惑がかかる!」
そう思うと咄嗟に船内の物陰に隠れた。
この偶然が重なった冬の朝
これがマビト・ソウヤという少年の人生における歯車が狂った始まりの日だった