その1
数日後。
山野森終業式の日を迎える。
体育会に全校生徒が集められ部活で活躍した生徒に賞状を受け取り、校長先生からの夏休みにおける注意事項を説明して式が終わり教室に戻る。
「生徒諸君。ひと夏の青春を悪い事せず健やかに羽目を外し過ぎず夏休みの課題は絶対に忘れるなよ。いいな?」
「ぎくっ」
「あっ、はは••••••」
一部の生徒を睨みつけ担任からのありがた〜い一言で終礼し同時にクラスの何人かが騒ぎ出した。ふぅーっ、相変わらずお怖い人である。
「やっと、勉強ばかりの生活から解放されたぜ」
「ねえねえ、みんなで花火とか見に行かない?」
「賛成〜、わたし浴衣と着て行こうかな」
「くっそー! 補習があるから、俺の夏休みはまだ先なんだよな〜」
「ざま。勉強をさぼった奴が悪いんだよ」
一部生徒が夏休みの予定について盛り上がっていると、夏休みが来るなと改めて実感する。
「ふぅ、やっと俺達の夏がやって来たな」
「だな。陰陽キャラにとって娯楽三昧な日々が送れる学生だけの特権が」
二人で思わず感傷に浸る。
夏休みは特にオタクのイベント事がいっぱいで待ち遠しいかった。
「外が暑いからって部屋に篭って娯楽三昧は体に良くないねぇから気をつけろよ」
「失敬な。俺は別にひきこもりじゃない。
ただ一人でゲームする事が多くてたまたまやる場所が家にいる時が多いだけだ」
「かぁ〜、勿体なねぇ。
彼女を連れて花火見たり海行ったりする行動力こそがひと夏の青春て奴だろうが」
「はぁ••••、やれやれ。佐久田こそ、何言ってんだか。
今時のオタクは割とすごいだぞ。
欲しい物の為ならば何時間でも待って手に入れようとしたり、推しの為なら何処だって行ける行動力があるのだからな」
「ま、まじ?」
「マジマジ。あとな、今時ゲームのクオリティは現実世界では行けない未知の世界の景色を絶世の美少女と見に行ける時代だ。 それを知らない佐久田が勿体ない。 人生歴=彼女歴無しの佐久田に特に」
「うっ。ゲームなら気軽に理想の彼女と冒険が出来る。い、意外とありかも?」
「だろ? だったら佐久田も俺と同じ陰キャラにならないか?」
「ならん! ••••••ってその台詞はこっちが言うべきだろうが何サラッとデスった挙句陰キャラ属性を付けようしてんだ。鬼か!」
「ふん。そっちが俺の事引きこもりの吸血鬼オタクと思い込んでいるのが悪い」
「そう言っとらんやろが。
けど、確かに偏見的な物言いだったのは認めるが彼女歴無し=人生の所は結構気にしてるだよ」
とほほぉ〜ん、と効果音が流れそうなどんよりした雰囲気を醸し出す。
ルックス良くて顔が好青年って感じなのに何故モテないことを根に持っているらしい。羨ましい悩みだな。
「悪いちょっと言い過ぎたな。お詫びと言っちゃなんだか彼女作りに少しだけ手伝うよ。陰キャラの俺ができることなんてたかが知れてるけどさ」
「マジ! 助かるぅ〜、夏休み中にお前誘うからな。必ず予定開けておくよ」
「へいへい。ただし当日に誘うのはNGな」
「了解。じゃあまたな。
あっ、それと好み女子がオタクだった時はお知恵を貸してくれよな」
帰り間際に褒める佐久田にいい奴だよなと生暖かい目で見送った。
「ひなっち。夏休み何する! 海、山それとも宇宙‼️」
「余り日夏を困らせない程度にしなさい。
貴方に引っ張り回されるこっちが困るもの。後、宇宙は当分いけないわよ」
「ふふ、ありがとう。柑奈、千鶴」
向こうは夏休みの予定を和気藹々と話し合う姿は微笑ましいなと感傷に浸り一人職員室に向かう。
「今日はプール清掃の件をお前達が引き受けてくれて感謝するよ。
これが掃除道具が入った倉庫の鍵だ。プールの水は既に抜いてある」
「どうも」
真凪先生から部室の鍵と倉庫の鍵を貰い合図し本題に移る。
「後、清掃が終わったら、プールに水を入れ直すことはしなくても良いからな」
「みんなにも伝えておきます」
「頼んだ。それと、清掃する時間は午後四時には切り上げてくれると助かる。
先生たちも今日は早めに仕事を切り上げて、校舎をいつもより早く閉めていくつもりだ。気をつけてくれ」
「先生にはお世話なっているので早めに清掃が終わるように努めます」
清掃に関する簡単な説明を受け部室に向かう。
「さてと、みんな待ちますかな」
一番乗りした木嶋はメンバーが来るのを読書でもしながら待つことした。




