以下略 その3
一方。
「酷いやりとりを垣間見たわね」
「まーた。あの二人が変な話で盛り上がってるよー、キモ。ひなっちもそう思うでしょ?
「〜〜〜〜〜っ⁉️」
「おーい。ひなっち、どうしたのさ? 急に黙り込んで」
「日夏。顔が赤いけど大丈夫なの?」
「べ、別にぃ〜⁉️ な、なな、なんでもないわよ。ふん!」
アイツの言葉に赤面した顔を見せたくなくてそっぽ向く。
ご機嫌斜めになると言う急な豹変ぶりに本当に大丈夫なのかと二人が心配し出す。
「も、もしかして日夏。彼か言ったことが気に障ったのね」
立花のことを思いやり木嶋に冷たい視線を送る。
「ひなっちのこと意味の分からない呪言がひなっちに迷惑かけてたのなら柑奈が木嶋を懲らしめてやる」
交戦的な態度の甘城に立花も辿々しくなる。
「ちょっと二人共、別に彼が言ったことなんて全く、全然気にしてないんだから」
甘城が殺気だって木嶋を睨む様子に流石の立花も止める。
向こうからしたら変な言い草で恨みを買われるのは流石に気がひけるもの。
「むぅ••••ひなっちが言うなら」
「貴方がそれでいいなら」
二人がもどかしそうなら態度に思わずクスリと笑う。
「柑奈 千鶴ありがとうね。私のこと心配してくれて」
優しく微笑み肩の荷が降りたご様子に「それに」とぼそりと呟く。
「あ、あんな変人オタクなんかに私の気品ある可愛いさを一言で表現するなんて一年速いわよ」
『ぉぉ•••••••••••ふ』
気難しい立花の「後で懲らしめやるだから」と言葉とは裏腹に分かりやすいデレっぷりに二人が圧巻の声を漏らす。
「あのさ〜、千鶴」
「貴方がしたい事が分かるわ。けど、我慢しなさい」
他所に感動に打ち震え飛び出しそうになる甘城を止める苦杉。見ていて危なっかしいな。
「(ちづる。あたし今、無性にうちに秘めた萌え上がる感情が押されないだけど)」
「(柑奈さんと意見が合うのは尺だけども今は堪えなさい。余計に日夏を困らせるだけよ)」
「(あのツンが強いひなっちが一年で許すなんて機会滅多にないよ!今すぐギューって抱きしめた可愛いが目の前にあるだよ)」
「(今、本能のままに行動したら日夏に嫌われるわよ)」
「(うぐっ••••••。そ、それだけはいやだよぉ〜•••••ぅっ。仕方がないね。ここはがまん、がまん)」
ドウドウと宥める苦杉と顰め面になった甘城。側から見たら異様な光景である。
「二人ともどうしたのよ? 様子が変よ」
すっかり冷静になった立花が二人の変化に対してキョトンとする。 ツンデレの天然記念物は今日も輝いていた。
「向こうで面白い展開になっておられる気がしますわね」
「はっ! 今先輩が僕以外の方とイチャイチャしている気がする」
桜華院が物しげなな一人言を呟き葵に電流が走る。
「タクヤ•••••• オレ、今日で人生最後かもしれない」
「ナイナイ、そこはせめて帰りに槍が降ってくるとかにしておけ」
佐久田が歓喜に震える様を冷静に淡々とツッコミを入れる。
嵐前静編の序章でしかも朝のホームルームで長々としていますがもうすぐ台風の目は過ぎる時がやって来くる。
「それはそれて大変だろうが。••••••けど、生きてなんぼではあるな」
佐久田が生への執着を捨て去ることをなんとか防ぐ。これで一安心になるわけもなく。
するとブルゥブルゥと着信音が連続して木嶋のスマホを鳴らしチラッと画面を見ると馴染みあれがやってくる。
「ちょっとゲームの誘いが来たから今から野暮用だ」
「えぇー。もうちょい、オレの美談に付き合ってくれよ」
「こっちが大事だからな」
ごねると佐久田より目の前の優先するべきことが出来たので軽くあしらいと向こうは肩が下がって呆れ顔を見せる。
「へいへい。こちら、そろそろお暇してやるが、そろそろチャイムがなるからほどほどしておけよ」
ヒラヒラと手を振り席へ戻りに行く佐久田に苦笑する。
「(たく、後で飲み物奢ってやるか)」
空気が読めるいい奴な佐久田に内心穏やかになった木嶋は例のやり取りを始めるためチャットを見る。
そこには辛辣なメッセージとキャラアイコンがやってきた。
『キーターの阿保、朴念仁、主人公もどき』
『いきなり薮からミサイル飛ばしてくる所言わせてもらうが最後のはただの褒め言葉だぞウォーウィン』
皮肉が通じない木嶋なりの返事をする。
このやりとりをする相手はクラスメイトの水瀬 美冬である。
何故俺達がゲーム内会話ツールを使用しているのはお互いが知り合いであることを避ける為と水瀬がオタクであることがバレるのを避けているからである。
一応ゲームアカウントで本名を言うのを防ぐ為俺がキーターで水瀬がウォーウィンと名乗っている。
水と冬を足してウォーウィンとか安直ではあるが本人は気に入っている。
『それで、用件があったのか』
『べーっにぃ〜〜〜、無償にキーターへ嫌味が言いたかっただけ。
それと、あんなに褒め方しか出来ないキーターの語彙力が情けない過ぎるのを特別にあたしが哀れで上げるねよ〜だ』
『それについてはあの状況なら仕方がないと思うんだけど。
二次元のキャラに例えるか女性声優ぐらいしか知らない俺に女優の誰かに似ているなんて適当なこと言っても嘘だと見抜かれて余計に怪しまる所だから正直に言ったまでさ』
『それで例えに出したのが四葉クローバーのヒロインとか、キーターてば変な所で口上手なことで』
『我ながらいい例えだと自負している。
なんなら、俺のことは二次元ソムリエとでも言ってくれても構わない』
ふふーんと自信満々のキャラアイコンと共に返事を送り『呼ばんわ!』と速攻で返し水瀬がこちらを睨みつける。
水瀬も俺たちと同じ教室にいる状況で今は木嶋から離れて席で座る。
今の彼女はヘアピンを外し後ろ髪を下ろして伊達メガネを掛け、側から見て読書好きな大人しめの容姿でオタクであることがバレるのを回避する為の目立たない方法を行なっている。
「むぅぅ••••••••」
遠目から水瀬が眉を睨む視線が来ているがタイミングよく予鈴がなり担任の先生が現れそっちに視線を向ける。




