見えない範囲
「論理博士!はぁはぁ。外は霧でした。推定500mです。やっぱり濃霧はなかなか発生しませんね」論理博士は追求くんにタオルを渡した。「そうじゃな。濃霧は稀じゃからの。さて、追求くん。霧の原因と視野の減少の関係は何かな?」「はい。霧の原因は前日の雨と気温が低いことによって空気中の水分が飽和状態になり、微細な水滴が発生することです。あれ、でも視野が減少するのは何ででしょう。前に進めば景色が見えるようになるのも妙です」論理博士は森の模型を指差しながら言った。「例えば、木が生い茂った森の真ん中では近くが見えるけど森の外は見えるかな?」追求は頭を拭きながら言った。「その状況では木が邪魔で見えませんね。あっ!そうか!分かりました。つまり自分の周囲は水滴の密度が低いから見えるけど、遠くは水滴が折り重なって見えないわけですね。」「その通りじゃ。おっ、外の霧がさらに濃くなったようじゃよ」追求くんは窓の外を見た。「論理博士。今見える限界はあの太い木ですよね」論理博士は頷く。「今度こそ視程200m以下の濃霧の世界の景色が見れるかもしれません。距離を測ってきます」追求くんはまた家を飛び出して駆け出した。