眼鏡のピント
「こんなに目が悪くなってしまうとは」論理博士は机の上に眼鏡を外し、胸ポケットから別のメガネを取り出した。「どうして眼鏡を二つ持っているのですか?」追求くんは不思議そうに眼鏡を見つめた。「はて、答えを聞いてしまうのかね?」追求くんはハッとした表情で首を横に振った。「では、眼鏡はどうやって視力を調整しているのかな?」「はい。レンズの厚みで目に届く光の屈折率を変化させています」論理博士はゆっくりと頷き、寂しげに言った。「この目はもう…」追求くんは眼鏡を観察して少し俯いた。「わかりました。こっちはレンズが厚い。つまり遠くを見る為のもの。そしてそっちは薄いから近くを見る為のものですね」「その通り。歳には勝てんなぁ」「羨ましいです」論理博士はポカンとした表情で「何故?」と問いた。「だってボヤけた世界と普通の世界を眼鏡で調整できるし、色んな眼鏡のファッションを楽しめるし、それに目の疲れで時間を知れるしーー」論理博士は追求くんの頭をそっと撫でた。「追求くんには敵わないようじゃな。では、ワシの目のピントはどこに合っていると思う?」追求くんは暫く考え込んだ。論理博士は涙ぐむ裸眼で考え込む追求くんを眺めた。






