夜空を舞う、鳥を望んだもの
わたしがりょうてをひろげても、
おそらはちっともとべないが、
とべることりはわたしのように、
じべたをはやくはしれない。
満月の月が、煌々と輝いた夜だった。
月の光が、夜の森を明るく照らしている。
白く明るい夜の中、鳥の如き姿をしたものが、優雅に空を舞っていた。
時にはゆらゆらとさまよいながら森へ降り
時にはするりと高度を上げて。
まるで何かを探すように、いつまでも夜の空を舞っていた。
――もの悲しい。
なぜか、見る人をそう感じさせる光景だった。
――月を背にしながら、僕は夜空の中を飛んでいた。
心の中は、澄みきっている。
純粋な、憎しみ。
その憎しみに対する、嫌悪、疑念、抑止力、そんなものはない。
完全なる憎しみだ。
だから心の中はとても穏やか。これからやろうとする行為に一切のためらいは無い。
そうだ。
僕は飛んでいる。
気がつけばここにいたが、確かに空の上なら奴を探しやすい。
狐を探すために、無意識のうちに空を選んだか……と、そう思えてくる。
僕の体の下には、真っ暗な夜の森がある。
空気は澄んでいる。
心地よい風が僕のほおをなでた。
こうしてゆらゆらと漂っていると、徐々に意識が失い始めるようだ。
狐を。
狐を。
狐を、探している。
父を殺し、
母を殺した。
母は、何も関係がなかったはずだ。
狐を、あいつを……殺そうとした訳じゃ無い。
ただ、その場にいただけなのだ。
父の事が心配で、後を追っただけだったのだ。
なのに何故。
なぜ殺した。
つう、と
ほおに涙がつたった。
僕は夜空を浮遊している
月を背にしながら。