第二十四話 捨身飼虎
さあ、夜季
夜季おまえはどれほど私を楽しませてくれるのだ?
「イやだ……」
満たされぬ器のことなど忘れてしまえ、おまえは欲望のまま生きればいい
「いヤダ……」
おまえが望めば、手にできぬものなどなにもない
「イヤダ……」
きつねも殺せる
ほしい物も手に入る
おまえは、神の力を手に入れた
さあ
さあ
さあ
「欲望のままに、求めるがいい、混沌よ」
「いやアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……………!!!!!」
混沌が咆吼する。
腕が
手のひらが
縦横無尽に辺りを覆い尽くす。
まるで、首を失った犬のように。
まるで、親を失った子のように。
何かを求めながら辺りを、森を、空を、駆け巡る。
すべてを奪うように
すべてを欲するように
「――憂、逃げるぞ」
ぐい、と腕を引っ張り、華梁が、そう言う。
「――でも!」
「あれは、もう人では無い、人がどうこうできるものではない、言うなれば、人の心そのものだ――、あれに人の姿で勝とうなど、殻も破れぬひな鳥が獅子の群れに挑むようなものだ」
「でも、それじゃあ、救えないのか……!? 夜季を!」
「救う手はある、が、今は無理だ」
「なぜ!?」
「夜季を元に戻すためには、夜季をあんな姿にした霊元の力と――夜季自身のこころが必要だ、でも、今はどちらも無理だ、霊元も夜季も、自身を見失っている」
「…………」
「今はおまえまで失うわけにはいかないんだ、分かってくれ、憂」
その時、
ふ、と華梁の力が緩んだ。
「か、りょう?」
見ると、
華梁のもう一つの腕を
混沌の黒い腕が、堅くつかんで――――
「華梁――――!?」
「生きろよ、憂」
そう言って
ぽん、と、華梁が僕の背中を押した。