第二十二話 conception de la humanie
「おかしな事を言う、言っただろう? 私が死を願うことは、お前らが生を願うことに等しいと」
死と生は等価値だ。
いや、そもそも
比較にすらならない
生と死の価値観すら、お前達人の思いが決めたことに他ならないからだ
何故死を願うこととが間違いで
生を望むことが正しいのか。
神に対し、人の価値観を押しつけるほど傲慢なものはない。
「私はただ楽しみ、楽しみながら死にたいだけなのだよ」
「これは、お前達が楽しみながら仕合わせに生きたいという考えとどうちがうのだ?」
なぁ
「夜季よ、どう思う」
霊元が、夜季に問うた。
「お前もまた、今では神か、それ以上の力を持っている、今のお前なら世界を手に入れるなど造作もないことだろう」
それでも
「どうだ? その姿で、心が満ちぬままに永遠に生きたいか?」
まるで、答えはもう分かりきっているかのように、霊元が言った。
その言葉を聞き・・・・・・仮面の奥底の目が見開いた。
「・・・・・・ぼくハ、みたされないノか」
満たされる? と、笑いを含みながら霊元が言う。
「そもそも器も無しに、何を満たすというのだ」
かかかかかかかかかかかかかか
乾いた嗤い声が辺りをつつむ。
「満たされるかよ、器も無しに」
器も無いのであれば満たすも何も無い。
お前のやっていることは、
幻覚の器の中に、現実の水を入れ満たそうと思っている様なものだ。
そんなもの、海の水を全て注いだところで、満たすことなど不可能だ。
そもそも注ぐ器が無いのだからな。
「満たされぬ苦しみに耐えながら生きる、これほどの苦しみがあるかよ」
そう言って、再び霊元は嗤った。
乾いた、嗤い。
自らで死を選べない事を、自嘲するような嗤いだった。
ざり、と華梁が霊元に向かう。
「霊元」
華梁が問う。
「では、なぜ自ら憂に手を下さないんだ?」
「何?」
「お前は荒涼神を生み出したいんだろう?」
「さよう」
「本当に、荒涼神を生みだし、死にたいのであれば、おまえ自身が憂に手を出す方がよほど、確実だ」
――なぜ、そうしなかったんだ?
華梁が言葉を続ける。
荒涼神は、神が世界や人に干渉することで生まれる。
世の不条理を「理」が正そうとするためだ。
だから、
神が自らの「万能」な力を使おうとすればするほど「理」は「万能」を排除しようと「荒涼神」を生みだそうとする。
しかし、霊元は、
あくまで間接的に……自らが手を出さずに、世界に、憂に干渉してきた。
本当に霊元の目的が「荒涼神を生みだし、自らを消滅させること」だとすれば……
その行動は、矛盾している。
「なぜ、そんなことをしたんだ」
華梁がそう問うと、霊元はほんの少しだけ言葉を詰まらせ、ため息まじりに
「わかりきったことだ」
そう、言った。




