第二十話 問い
「――それで、さらに苦しむのか?」
華梁は――そう、言った。
「今よりも、今よりも、今よりも――
そうやって今より他に求めて」
「その手は、お前の欲の数だけ増えてゆく」
「今を満足しないまま」
「かまわなイ」
夜季が、闇が、混沌が、
そう断じて言う。
「今の
今の苦しみよりもマシならば――
僕は、それでよいのだ」
「ならば、今とはなんだ?」
華梁が問いかける。
「いま?」
夜季の体が、腕が、じわりとざわめく。
じり、と華梁が夜季の方へ歩を進めた。
「求め続けている、それがお前の今、だ」
「渇仰している、それがお前の今、だ」
「それが死ぬまで続く」
「命が尽きて、朽ち果てるまで続く」
「全てが無くなって、ひとりぽっちになるまで、そのままだ」
「問うぞ、夜季」
「今のお前は、本当に満ち足りているか?」
「お前は、永遠にそのままなのだぞ」
「例えこの世を食らおうと」
「例えこの空を食らおうと」
「例えこの宇宙をくらおうと」
「例えこの世の全てがお前の手の内に入ろうと、今に満足しなければ、満ち足りている事を知らなければ・・・・・・その渇仰する気持ちは無くならないのだぞ?」
―――「嘘ダ」
「嘘なものか」
「今、とは永遠だ」
「永遠に今が続いているだけだ」
「永遠とは、「今」の連続なんだよ、夜季――」
「その今に満足出来なければ」
お前の渇仰は永遠に――乾くことはない。
「それでも良いのか、夜季?」
「嘘だ」
「嘘だ、嘘だ、嘘だ」
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
嘘だ
うそ――だ
「うそ―――ダ―――ぁああああああああぁああああああ!!!!!!!」
悲鳴のように咆哮する。
「ならバ」
「ならバ人は」
私は
僕は―――
「何故、生きているのダ?」
ぐらり、と影が揺らいだ。
頼りなく、闇夜に溶け込むように弱々しく、女々しく
冷たい地面に倒れ込みそうになる。
そのとき
「どうした、夜季?」
闇夜に、困惑した霊元の声がひびいた。
「なぜ苦しむ? 夜季よ――」
「なぜ悲しむ? 夜季よ――」
優しく、いとおしく、包み込むように
霊元が影に向かって、語りかけている。
「おまえは、そのままでいいんだよ」
「皆、そのようなものはわからぬ」
「心から満足出来ぬまま、人の命を終えるのだよ」
「ならバ、
ならバ――― なぜ人は生きているノだ――?」
悲鳴のように――夜季の声が闇夜に響く。
「意味など有るわけがないだろう?」
「生まれたから、生きる」
「それだけなのだよ、夜季」
霊元が――、強く、そう言いはなった。
「私は、その答えを知るために八百年生きた――」
「人からは神とも崇められたこともあった――」
それでも――
「分からなかったのだ」
生きる意味も
生きる意義も
生きる目的も
「私には――、何一つ分からなかったのだ」




