第十六話 千手
――――どう向き合う?
黒く
黒く
ただ黒く
闇と、見まごうほどの「何か」
人の形をしているが、確かにそれは闇だった。
とらえどころのない、闇だった。
ただの、黒き、混沌だった
そして、
その混沌に
自我が芽生える
疑問が芽生える
そして、
その疑問を解こうと思考が芽生える。
闇の
混沌の
始めの、疑問はこうだった。
「死とは何だ」
そう、問うた。
何度も自分に問いかけた。
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
死とは何だ
ぶつぶつ、ぶつぶつ、ぶつぶつ
次の疑問はこうだった。
「生とは何だ」
そう、問うた。
何度も自分に問いかけた。
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
生とは何だ
そんな疑問を繰り返す。
ぶつぶつ ぶつぶつと繰り返す
いくら考えても答えのでない、疑問をひたすら思考する。
わからない
わからない
わからない
わからない
理解ない
そして、
闇は気づく。
自分が追っていた物の存在を。
きつね、だ。
「きつねきつねきつねきつねきつねきつね」
闇は、そうつぶやきながら、みずからの手を見つめる
黒き手のひら
いつの頃かその闇は、
思い込みで、自分を律しようとしていた。
この手は父の手
おとうさんの手
たのもしい手
なんでもできるおおきなて
この顔は母の顔
おかあさんの顔
削り取られ骨となったお母さん顔
やさしい、おかあさんのかお
だから
いつもおかあさんがみてくれている
あんしんできる
みまもってくれる
だから、
ぼくは、不安にならない。
これからきつねをころすことも
おかあさんといっしょなら
こわくない
さあ、はじめよう
闇に、
欲望が、芽生えた。
闇は、この世を思い通りにしたいと、そう思った。
きつねを、殺したいと、そう思った。
てよ
て
て
て
て
おとうさんのてよ
僕に、力をかして。
その、手のひらを、狐へ向ける
てよ
僕の無数の想いとなり
きつねをとらえろ
僕の、おもいをかなえよ。
その瞬間、夜季の体から無数の手が生える
背中から
肩から
十
百
そんな数は、ゆうに超える
千
千の手のひら
無数の、黒き手のひらが、夜季の背から肩から、幾数の腕とともに、生える。
自分の思い通りにするために
きつねを殺すために
それは、まごう事なき自我だった。
揺るぎようのない欲望だった
完全なる思考だった。
そして、きつねは思考する。
きつねの存在と、みずからの存在の答えを出そうとする。
答えの出ぬ問いに、無理に答えを出そうとする。
自分の見解で、この世の答えを出そうとする。
きみは生まれ生きているだけで罪だ
きみは罪と向き合うことが必要だ
僕は
君に、罪を与える事を許された存在。
さあ、
いくよ
きつね
きみは、自分と、
闇は、自分と
どう、向き合う?