第七話 方千の正体
大切なのは――それに気づくことだ。頭で理解しようとすればそれは逆に逃げてゆく。己の中で本当にそれを納得することが出来たのならば、どんな呪にでも負けないだろうよ。」
そう言って、
ぽんと、僕の頭に手を乗せた。
「お前は、自分を苦しめすぎている。霊元はそれにつけ込んだのだろうよ」
そして、ゆっくりと優しく僕の頭をなでた。
「……霊元はおそらく、お前と同じようにあの子供の恨みを利用しているのだろう。」
「なぜ、……あいつはそんなことをしているんだ?」
「……わたしにはわからぬ。私に読めるのは人の心だけだ。それも、長寿の経験のたまもの。同じように生きている奴の心は、もう読めぬ。」
――暇つぶしか、
――それとも、
――周りを巻き込んだただの自害行為なのか。
方千は独り言のようにそうつぶやいた。
「……いったい、あんた達は何者なんだ?」
方千は、霊元の事を知りすぎている、知り合い同士である事は間違いは無いだろう。
しかし――
方千も、霊元も――普通ではあり得ないほどの力を持っている。それこそ、人では無いかのような。
まるで、
……化け物と言われた、僕と同じような。
「ん? 教えて欲しいかの?」
「……そこまで言っておいて、聞かずにおくのは気持ちが悪いだろう」
僕がそう言うと、方千は「それもそうだの」と言ってにやりと嗤った。
「俺と霊元は突き詰めれば同じものだ…そうだのう一言で言えば――
――神様だよ。
方千は、事も無げにそう言った。
「――は?」
「だから、お前達が神と呼んでいる物だ。これでも千二百年は生きておる。」
神――様?
千二百年?
方千が?
「――もっとも、我々は、人の「神様」という思いから生まれた、只の虚像にしか過ぎないがの。人が神という考えを作り出しだし、それを拝む事によって思いが強まり、俺達はこの世に生まれ出てしまったのだ。故に、人無くして、我々はあり得ない。たった今も、お前というものが「方千」と言う存在を認めているからこそ、この世にあり続ける事が出来るのだ。もしもお前が、「方千」という存在を知らなければ、……俺はここにいることすら出来ない」
俺も、その疵痕をつけた子供と同じようなものなのだよ。――と方千は自嘲しているかのようにそう言った。