第二話 再び進み始めた時間
滝壺にたどり着いた。
香泉寺の近くにある、大きめの滝壺。僕はここでよく食事のための魚をとる。
盛大に落ちる水が、しぶきをあげている。
岩下に手をやり、昼間仕掛けた魚取り用の罠を見てみるが、魚はかかっていないようだった。
「・・・しょうがない、素手で捕まえるか。」
一人で生活している時は良くやっていたことだ。性質が獣なのか、取ろうとおもえば魚でも山
の獣でも簡単にとれる。
――そうか。
良く考えれば・・・この能力のおかげであまり空腹にはならずにすんだのだ。
もしかすると、今日まで生きられたのも、この能力があったからなのかもしれない。
ゆっくりと、自分の顔をなでてみた。
すこしだけ口元に笑みがこぼれる。
――不幸というのも、考え方次第で変わるものなのだな。
そう思うと少しだけ気持ちが楽になった。
半刻ほど魚を捕ると、明日の朝食に使うのには十分な量になった。
――あとは、山菜でも採っていくか。
見れば、日は大きく西に傾いている。
もうじき帰らなければ帰り道が困難になるだろう。
――もう少しくらいなら大丈夫か・・・。
そう思い、僕は顔をあげた。
――谷に生えた楓の下に、
見覚えのあるものがいることに気がついた。
それは、ひどく楽しそうな眼で僕の方を眺めている。
直感する。
――僕の、幸せな時間は、
―――今、終わったのだと。
今、何て物はない。
そう、思っていたのに・・・
そう
時は簡単におわりを告げるのだ。
楓の葉が舞う木漏れ日のしたに
皮肉なほどに、同じ姿で
浅黄色の衣の子が、立っていた。