第零話
人々の安寧と繁栄を密かに見守る存在がいる。
それが、天界の天使達。
争いが起こると、それを止め。災害が起これば、それを鎮め。天使は、天界は、人間の味方であり、また憧れでもあった。
現世でいい行いをすれば、来世は天使となり、神に仕えることができる。そんな言い伝えが、人間界では受け継がれてきた。
…そんな天界を、人間界を、恨む存在がいる。
それが、地獄の悪魔達。
争いを起こしても、それを止められ、災害を起こしても、それを鎮められ。
悪魔は、地獄は、人間の敵であり、また嫌悪される存在であった。
現世で悪い行いをすれば、地獄に落とされ、人々を恐怖に陥れる悪魔となってしまう。そんな言い伝えも、受け継がれてきた。
悪魔は、人間界を脅かし。天使は、それを阻止する。
天使にとって、人間は護るべき存在であり、悪魔は打ち払うべき存在であった。
人間にとって、天使は味方であり、悪魔は忌むべき存在であった。
悪魔にとって、人間は邪魔であり、天使は消し去るべき存在であった。
…そんな、天使と悪魔…両極となる二者が、惹かれあってはどうなるのか。
人間界に忌み子が誕生したのは、天の悪戯か、悪の陰謀か…。
ーーー
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
…俺の胸に、泣いてすがる母。
体中を切り裂かれ、血に塗れ、地に伏せる父。
「脅されたんだろう?…悪魔め、邪血を産み落としやがった…!」
…邪血?…それって、俺のことか?
「何で、黙ってたんだよ」
天使と悪魔のハーフなんて─
…どうやって生きていけばいいんだよ。