ググれカス!
俺は、薄暗い自分の部屋の中で、そこだけが明るく光るノートパソコンのモニターを憂鬱な気分で見つめていた。
見ているのは大手質問サイトの画面であった。
俺は、自分がそのサイトに投稿した質問に、回答が付いるのを見て、あまり期待しないでおこうと思いつつも、正直少しドキドキしながら慌ててリンクをクリックするのであった。
すると——
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(質問)
”異世界で生き残るにはどうしたら良いのでしょう?”
「ひょんなことから異世界に紛れ込んでしまった男です。ご多分にもれず、私も、異世界なんて、もしそんなところがあったら、そこで自分がチートできるのだと夢想してたクチですが、実際にそこに行ってみると、力も才覚も平凡な自分では生きていくこともままなりません。もし皆さんがこういう境遇におかれたらどうするでしょうか? 特に経験者の意見を聞きたいと思ってます。よろしくお願いします」
(答)
「はあ、異世界? 厨二乙! 本気で言ってんの? フィクションと現実も区別がつかなくなったお方と存じますが、もし本当にあなたがそうだとしても、回答者の手にはあまる質問では無いでしょうか(w)。
まあ、なんと言いますか……じゃあ、ググれカス!」
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「はあ……」
なんとも、予想通りの、——この回答を読んで俺は長い嘆息をしてしまうのだった。
異世界知らずのこの回答者の浅慮さに、俺は深く絶望するのであった。
だって、
「そんなのとっくにしているよ……」
俺は、憂鬱な気分のまま、大手検索サイトに異世界に来て、何度目かわからない”異世界で生き残るには”と打ち込むのだった。
そして、役に立つわけもない検索結果を眺めつつ、
「なんでこんなことに……」
俺は、目をつむり体を椅子の背もたれに力なく寄りかかりながら、数週間前に自分の身の上に起きた事を思い出すのだった。
俺はあの日、異世界にやって来てしまったのだった……