呼吸しなくても脈打ってる
呼吸しなくても脈打ってる
僕の妹は、つい先日、脳死判定を受けた。
医者も珍しいと言っていたが、目を開けたまま、まるで生きているかのような姿だった。
「ねえ、お兄ちゃん。」
「ん?なんだい?」
「死んだら、どこに行くんだろうね」
「そりゃ、天国だろ?」
「でも、天国ってあるのかな?」
そんなの知らないよ。でも、そういうことにしといた方が夢があるじゃないか。
そう思ったけど、何も言わなかった。
両親は、妹があんなになってから2人とも出ていった。
あんな風な日常は、どこに落としてきたんだろう。
暖かい家族という幻影を、走馬灯のように思い出す。
僕は、気づくと、空を飛んでいた。
風を切り、ビルの谷間を低く飛んでいた。
その瞬間、体が叩きつけられたような痛みに襲われた。
ふと、横に紫陽花の花が咲いていた。
妹が好きだった花だ。今度妹に会ったら、持って行ってやろう。
そして、笑顔で話をしよう。
「こっち」の事なんかもう、どうでもいいのだから。
ちょっと、くらいものを書いてみたかったので。