或
眼を閉じると浮かぶ死んだ魚の目の子供
眼球に反射した光は幾人もの偽善者の心臓を貫いた
温もりのないコンクリートに滴る生暖かい血は
何も知らぬ年寄り達に白いハンカチで乱雑に拭き取られた
何もない六畳の部屋で
小さな布団の上で身体を丸めて
手には小さなナイフを持って
己という虚像に何度も刃を突き立てる
この世に悪があるのなら
自分はきっと正義だ
誰も傷つけず
静かに在るだけの日々を送る
自分はきっと正義だ
この世に正義があるのなら
自分はきっと悪だ
自分を殺し
個性を殺し
人一人も幸せにできぬ
自分はきっと悪だ
岩のように重く
亀のように鈍い滑稽な日々を
ただ送るだけの色のない日々を
顔に偽の笑顔を貼り付けて
今日も踏み出す
いつか来るその日まで
死という名の解放まで