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学科魔法士の迷宮冒険記(最終版)  作者: 九語 夢彦
5章 迷宮
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5章ー14:メイアの魔法機械と、マイコの初対面

「スピー……はっ! 地震ですか!」

 舞子がドカンドゴンという全身で体感した震動によって眠りから覚めると、訓練場の椅子の上にいた。

 耳に違和感があったので触れると、耳栓がしてある。耳栓を抜くと、勇子とメイアの声が届いた。

「お、目が覚めたみたいやん?」

「気分はどう? かれこれ1時間ほど寝てたけど……あ、耳栓は返してね?」

 勇子とメイアが歩み寄り、問いかける。舞子はメイアに耳栓を返しつつ、答えた。

「あ、はい、どうも。身体は全然元気です、魔力も結構回復してます。……ってあれ、私の特訓は?」

「とうに終了しとるで? 最後眠りに落ちる寸前にメイアに触れとったからね」

「手加減はしたけど、まあ上出来でしょ」

 メイア達の発言を聞き、舞子は表情を緩めた。

「そ、そうですか。良かった。また模擬戦の時みたいに半端に終わってしまったのかと思いました。それで……お2人は私が起きるまで待っていてくれたんですか?」

「んー待ってたいうか、舞子が眠っとる間にウチらも自分の修練しとってん」

「気持ち良さそうにしてたから、疲れを取る意味で少し寝かせてあげたのよ。叩き起こされるのは、舞子も嫌でしょ? 1時間程度で起きるって思ってたから、それまで自分達の修練をしようと思ってね? 時間の有効活用をしてたわけ」

「へえ、お2人で修練ですか……見てみたかったです」

「見るほどのモンやあらへんて。2対4で魔法機械を相手にしとっただけやからね」

「魔法機械ですか?」

「ええ。私の作った魔法機械、見るのは初めてよね? 紹介するわ」

 メイアが指差す方を見ると、4体のエマボットがあった。

「メイアが作った魔法機械〈シロン〉シリーズや」

「全員集合、舞子に挨拶して」

 エマボット達がサーっと走り寄って来て、平面映像を投影し、日本語の発声で挨拶した。

『〈シロン〉1号、攻撃特化型であります』

『同じく〈シロン〉2号、防御特化型であります』

『同じく〈シロン〉3号、汎用型であります』

『同じく〈シロン〉4号、特殊型であります』

 魔法機械達が一斉に1本の多目的腕部を上げ、敬礼にも似た動作を行った。

「は、はい……どうも、こんにちわ」

 戸惑う舞子へ、メイアが説明する。

「この子達は、市販のエマボットに私が一から異相空間処理を施し、魔法を封入して、魔法機械にしたエマボットよ。砲塔や小型誘導弾(マイクロミサイル)を装備したエマボットが1号。一際ずんぐりむっくりして、分厚い装甲を持つのが2号。1号より武装が限定されつつも、所々が2号に似て分厚いのが3号。そして、1号によく似てるけど、小型誘導弾の装備が多いのが4号ね」

「1号や3号、4号が積んどる火器類は、普通の科学兵器やけど、この子らは付与魔法を封入された魔法機械やから、魔法力場を全身に纏っとる。結界魔法の魔法防壁を体当たりでぶち破って、魔法防御の内側から科学兵器を叩き込める点で、魔獣相手にも結構使えんねん」

「相手が魔法力場を纏ってる場合でも、至近距離から徹甲弾や誘導弾を当てれば多少は損害を与えられるし、粘着網や煙幕弾を発射して足留めもできる。私の自信作よ?」

「実戦経験も結構積ませとるから個々の連携も上手い。戦闘訓練の相手にもちょうどええっちゅうんで、さっきまで2対4で戦ってたとこや。メイアの力作だけあってきつかったわ。火器の使用を制限してんのに、互角やったもんね?」

「まだまだ私の後衛としての援護が未熟だからでしょうね? 同じ2対4でも、命彦と空太や勇子と空太だったら、火器の使用を可能にしてもこの子達に勝ってるわけだし、精進あるのみだわ」

「ほえー……凄いんですね、その子達も皆さんも」

 悔しそうに言うメイアに、舞子はやや気圧されたようで、気の抜けた返事を返した。

 メイアを見て苦笑しつつ、勇子が言う。

「とりあえず舞子も起きたし、飯にせえへん2人とも? ウチ、動きっ放しで腹減りや」

「そうね。時間も11時だし、ちょっと早いけど喫茶席でお昼ご飯にしましょうか? あ、でも土埃や汗を落とす必要があるわね。魔法で洗い落としましょうか、それとも洗浄(シャワー)室に寄る?」

「腹具合が限界やし、魔法で頼むわ」

「あ、私もお願いしていいですか?」

「勿論よ。じゃあ、パパッと済ませましょうか」

 メイアはそう言うと、舞子と勇子に近寄り、魔力を放出して呪文を紡いだ。

「其の水流の天威を活力とし、痛痒(つうよう)を静めよ。(あら)え《水流の(きよ)め》」

 魔力で水の精霊を引き出し、取り込み、脳内で魔法の想像図を構築する。

 自分達の身体についた土埃や汗を、水が洗い落す様子を思い描き、メイアが魔法を展開した。

 精霊治癒魔法《水流の清め》。水の精霊達を魔力に取り込んで使役し、本来は全身や傷口を洗浄して、火傷を癒す魔法である。

 《○○の清め》と呼称される状態系の治癒魔法は、魔法展開速度と効力射程、効力範囲を重視して、治癒の効力を魔法的状態異常の除去・回復のみに絞った、低位の治癒魔法であった。

 魔法的状態異常には幾つか種類があり、よく見られるのが石化や凍傷、火傷に睡魔、麻痺や幻痛、毒であった。

 この他にも魅了や混乱、沈黙や盲目といった魔法的状態異常があるが、総じて言えることは、魔獣達との戦闘時においてこうした状態異常が魔法士側へ発生すると、魔法士側の死傷率が激増する点である。

 魔法的状態異常は、戦闘時でも平時でも可及的速やかに除去・回復させる必要があり、魔法的状態異常にかかった魔法士がどこにいようとも、状態異常だけはすぐに回復させられるよう、効力を絞ってまで魔法展開速度を速め、効力射程を伸ばして、効力範囲もある程度広げられるという、状態系の治癒魔法が作られたのである。

 《水流の清め》で具現化された治癒力場は、火傷を癒す力を持ち、水の精霊の力の性質から、洗濯機にも似た洗浄効果を持っていた。

 治癒力場は魔法現象であるため、水に包まれている感触があるのに呼吸ができ、しかも、洗浄後は治癒力場から出るだけで、汚れも湿気も落ちているため、手軽に爽快感が味わえて衛生状態も清潔に保てる。

 まさに迷宮内で泊まり込んで活動するには打って付けの、洗濯兼お風呂用の精霊魔法であった。

 薄青色の球状の治癒力場がメイアの頭上に具現化され、メイア達3人をゆっくりと包み込む。

 すると、力場内で極小の気泡が発生して流動し、防具型魔法具の表面や髪、皮膚についていた土埃が浮き上がって行く。恐らく汗も浮き上がっているのだろう。

 十数秒後、サッパリした顔の3人が治癒力場から歩み出た。


 メイアが手を下げると薄青色の治癒力場が訓練場の地面へと沈み込み、消えて行く。

 それを見つつ、勇子と舞子が口を開いた。

「ういーサッパリサッパリ」

「ありがとうございます、メイアさん」

「いいのよ。さあ1号から4号、整列して接合してちょうだい」

『了解』

 メイアの命令で横一列に整列し、上半球の多目的腕部同士を絡めて固定し合う魔法機械達。

 その魔法機械達を見て、メイアは自分の〈余次元の鞄〉から小袋に入った特殊型魔法具、〈出納の親子結晶〉を取り出した。といっても、取り出したのは親結晶だけである。

 不思議に思った舞子が、メイアに問うた。

「メイアさん、子結晶がありませんが?」

「子結晶は亜空間に移動させる範囲を決めるモノでね、実は〈シロン〉達に内蔵してるのよ」

 そう言ってメイアが〈出納の親子結晶〉の、手に持った親結晶へ魔力を送ると、親結晶内部の亜空間へ魔法機械達が吸い込まれ、その場から消えた。

 小袋へ親結晶を仕舞うメイア。小袋には親結晶が全部で4本入っていた。

 それを見て、勇子が舞子へ語る。

「あの親結晶1本につき、4体の〈シロン〉が入っとるんや。つまりメイアは計16体の小型魔法機械を扱える。あれ全部外に出したら、メイアの戦闘力はウチや空太を超えるで? 1人ではまず勝てへんわ。命彦でも互角がええとこやろ? 伊達に一緒に迷宮へ潜っとるわけやあらへん」

 楽しそうに笑って言う勇子の発言を聞き、別の意味で舞子は目を剥いた。

「ま、待ってください! 魔法機械を全て使った状態のメイアさんが戦力的に凄いのは十分に分かりますが、命彦さんはそのメイアさんと互角ってどういうことですか? ミサヤさんと一緒に戦えば、ということですよね?」

「いいえ、ミサヤ抜きでよ? 使う魔法の相性の差ね。勇子も空太も数で畳みかけたら、逃げ切れずに押し込まれて力尽きるんだけど、命彦は()()するからスルッと包囲網から逃げるのよねえ」

「あれホンマに卑怯やわ、さすが〔忍者〕って感じやけど。ウチもあの()()()()()()のためだけに、〔忍者〕学科を修了しよかって、真剣に考えるぐらいやもん」

「その気持ち、よく分かるわ」

 そう言って笑い合い、勇子とメイアは訓練場の出入り口へと歩いて行く。

「ぶ、分身って……あ、待ってくださいよ2人とも!」

 舞子は訳も分からず、とりあえず2人の後を追った。


 訓練場から移動して、依頼所【魔法喫茶ミスミ】の1階喫茶席に座った舞子達3人は、喫茶席の上に漂う平面映像を見て、渋い表情をした。

「昨夜の午後11時45分の緊急報道やね? どこもかしこもこの話題で持ち切りやわ。あ、ウチ、焼きそば特盛2人前を頼も」

 机の卓上端末を操作し、昼食を頼む勇子。

 その勇子へ、同じく卓上端末で昼食を選んでいるメイアが言う。

「それはそうでしょ? この地方の守護者が別の地方へ行ってるのよ? 都市自衛軍や都市警察の魔法士部隊も、相当数が派遣されてる。一般の魔法士も、実力者のほとんどが関東や九州に行っちゃって、今の三葉市の防衛戦力は平時の半分とまで言われてるわ。この街の住人だったら心配するのが普通よ」

「その割にはメイアも、暢気にウチらとさっきまで特訓しとったやんか?」

「私が心配しようがしまいが事態は勝手に動くでしょ? だったらあれこれ心配してあたふたするより、自分が今できることをする方が建設的だからね? あ、私は日替わり定食にしよっと。舞子はどう思う?」

「あはは、私は自分のことで手一杯ですから、周りのことを見る余裕はあんまり……。私も日替わり定食にしますね?」

 端末で昼食の注文を済ませた3人。勇子が舞子へ問うた。

「さて、ウチらではどうしようもあらへん日本の国内情勢の話は置いといてや、お昼食べたらどうするん舞子?」

「あ、それ私も聞こうと思ってたのよ」

「えーと、さっき休ませてもらいましたし、お昼食べたら元気一杯ですから、できれば昨日と同じく迷宮へ行きたいんですが……」

「ええやん、その言葉を待っとったで」

「んー私達はいいんだけど……無理しちゃ駄目よ、舞子?」

「ご心配ありがとうございます、メイアさん。でも平気です、無理してませんから」

「そう。だったらご飯食べた後、依頼を受けてまた迷宮へ行きましょう」

「はい、芋の試練を終わらせます!」

「そうと決まれば、命彦らへ連絡やね」

「はい」

 舞子がポマコンを取り出し、命彦と空太へ連絡した。


 舞子が命彦へ連絡した頃。

 命彦は自室での二度寝から起こされて、母の魅絃が作った早めの昼食を食べ終わり、春の陽気を感じて居間の皮椅子(ソファー)でうつらうつらとしていた。

 満腹感に浸り、幸せそうに舟をこぐ命彦。

 命彦の横に座って、自分が作った魔法具の仕様書をポマコンで確認していた命絃が、こっくりこっくりと首を揺らす命彦の様子に気付き、そっと抱き寄せ、膝枕する。

「むぅ、姉さん?」

「いいから、寝てて」

「ふぁーい……」

 自分のポマコンを皮椅子傍の机へ置き、姉の膝枕で寝始める命彦。

 台所で魅絃の皿洗いを手伝っていた人間形態のミサヤが、居間へ戻ると、ポマコンを操作する命絃の膝枕で、命彦は熟睡していた。

 羨ましそうに命絃を一瞥し、精霊儀式魔法《子犬化の儀》で子犬形態に化けたミサヤは、命彦の腹の上に乗り、丸まる。すると、無意識にミサヤを腕で抱える命彦。それを、今度は命絃が羨ましそうに見ていた。

 魅絃が魔法具の制作のために工房のある別館へ行き、母屋の居間には心地良い静寂(しじま)が満ちていた。

 しかし、その静寂の一時を、命彦のポマコンがブブブッと震動し、叩き壊す。

 苛立った表情の命絃が、命彦のポマコンをすぐさま手に取り、端末画面を確認すると、電子郵便(メール)が届いていた。

「『舞子です』って主題が付いてるけど……誰よ、この舞子って子は?」

『新しくマヒコの小隊に入った魔法士の少女です。昨日の夕食時に少し話したでしょ? こういう少女ですよ』

 意志探査魔法《思念の声》に、自分の記憶を乗せて命絃に伝えるミサヤ。

 ミサヤの記憶から舞子について知った命絃は表情を消し、冷めた声で言葉を紡ぐ。

「また、命彦に群がる()()が増えたわけね?」

『どう思うかはマイトの勝手です。私はただ見たまま、聞いたままを伝えるだけですから。で、どうしますか?』

「本日も迷宮に行きたいので、お付き合いくださいませんか? と本文で聞かれて、私がどう答えるか分かるでしょ?」

『ええ。気を付ける所があるとすれば、マヒコが自分で返答したように偽装する必要がある点ですね?』

「分かってるわ」

 命絃とミサヤは手を組み、命彦のポマコンの返事を勝手に送って、ポマコンの電源を切ると、気が済んだとばかりに静寂を取り戻した。

 命彦は、この間も暢気にすやすやと寝ていた。 

 

 一方、依頼所【魔法喫茶ミスミ】では、舞子達に空太が合流していた。

 山盛りの焼きそば2皿目をひたすら食べまくる勇子を見て、げっそりした表情の空太へ、日替わり定食を食べ終えていたメイアが口を開く。

「到着早かったわね、空太?」

「ああうん、昼食後に空子のおやつ用の食材を買いに商業地区まで出てたからね? で、命彦は?」

 空太に問われ、メイアと同じく日替わり定食を完食していた舞子が、困惑した顔で言う。

「それが連絡したんですが」

「返事がね……『無理、眠い』だったのよ」

「命彦だったら言いそうだけど、昨日舞子から連絡があるかもって話は聞いてたよね? それでその返事ってのは……」

「命彦らしくあらへん! きっとあのイカレ姉が返事しとんねん! ムシャモシャ」

「食べてから喋ってよ。はあ、じゃあ無理だね、ハイ解散。へぶうっ!」

 焼きそばを食べ終えた勇子に、ぶん殴られて机の卓上端末に突っ伏す空太。

 その空太を見下ろし、口の周りに青のりを付けた勇子が言う。

「アホか、ウチらは依頼を受けとんねんぞ! 依頼内容も依頼主を迷宮に連れて行くことやろが! 契約破ってどうすんねん、ボケ!」

「い、痛いだろうっ!」

 顔を上げた空太に、メイアが畳みかける。

「でも空太、勇子の言うとおりでしょ?」

「まあそれはそうだけど……」

「せやから迎えに行く! 今度こそあのイカレ姉をぶちのめすんや!」

 そう言って席を立つ勇子。空太は即座に反対した。

「はあっ? 毎度毎度そう言ってぶちのめされてるだろ、僕を巻き込んでさ! 僕は嫌だからね、魂斬邸に行くのデュンッ!」

 勇子の発言に拒否を示した瞬間、空太の延髄に手刀が撃ち込まれ、空太が気絶する。

「空太も行くってさ?」

 倒れかけた空太を片手でひっつかみ、米俵のように肩に乗せた勇子が、ノッシノッシと店を出て行った。

 いつの間にか全員分の会計を済ませていたメイアが、呆然とする舞子に言う。

「さあ、舞子も行くわよ。多分面白いモノが見られるから」

「は、はあ」

 訳も分からずメイアに手を引かれ、舞子も依頼所【魔法喫茶ミスミ】を後にした。

 

 路面電車に乗って近場の常設駅を降り、高級住居地区をしばらく歩くと、一軒の邸宅が見える。

 命彦の暮らす家、魂斬邸であった。

「着いてしまった、ああ……」

 路面電車に乗った時点で目を覚まし、逃走を防止するため、勇子にずっと腕を掴まれて連行されていた空太が、怯えるように言う。

 その空太とは反対に、勇子は気力が充実した戦士の表情で口を開いた。

「ビクビクせんでええやろが? こっちは仕事の話で来てんねんから」

 勇子達が玄関門の前に到着すると、魂斬邸のエマボットが応対した。

「よう、門番ご苦労さん。命彦、呼んでくれるか?」

『生体認証……鬼土勇子様と確認。ご用件をうかがいました。しばらくお待ちください。……返答有り。皆様を庭園へ案内せよ、とのことです』

 そのエマボットの言葉を聞いて、勇子がニヤリと笑い、空太が顔色を失った。

「上等や、いつも通りの決戦の場やろ? 行ったるわい」

「嫌だぁあーっ! また馬鹿2人の決闘の巻き添えで死にかけるのはごめんだぁーゲフッ!」

 逃げ出そうと暴れたため、また気絶させられた空太。勇子は空太を担ぎ、重く開いた玄関門を、エマボットに先導されて進んだ。メイアと舞子も後に続く。

 そして、日本庭園の、少し開けた場所まで案内された時、1人の女性が姿を現した。

「懲りずにまた来てるのね、あんた達」

「弟の仕事を邪魔する姉が、どの面下げてウチらに文句言うとんねん! はよ、命彦を出せや!」

 気絶する空太を芝生の上に放って、勇子が怒りの声を上げる。

 しかし、勇子の怒りもどこ吹く風か。命彦とよく似た防具型魔法具を着込む美女は、勇子達を順に見て、最後に舞子を見た。

「歌咲舞子さんだったかしら? ウチの弟を受領者に選んだ慧眼(けいがん)ぶりは、ミサヤから聞いてるわよ?」

 冷たい視線、殺気を宿す眼に射竦められ、舞子がメイアの背後に隠れて怯える。

「こ、こわいですメイアさん。……もしかしてあの人が」

「ええ。命彦のお姉さん、魂斬命絃さんよ」

 舞子が、初めて命彦の姉の命絃と、対面した瞬間だった。

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