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対 ストームライダーズ戦

 翼を広げ、水中を飛ぶように泳ぐ。

 【水流操作】で細かく軌道を調整しながらビッグタートルの横をギリギリすり抜けるように交差し、ヒレに一撃を与えた。

 追い立ててくる雑魚共を《サンダーウォール》で処理しつつ、ビッグタートルと最大速度ですれ違いながらカウンターを決めていく。

 前ビレに集中攻撃を受けたビッグタートルの動きが鈍ったところで、甲羅に取り付いて頭をたこ殴りにすれば、程なくしてビッグタートルは沈み、次いで周りの雑魚を片付けて戦闘は終了した。

 【水流操作】を用いた軌道戦闘は、安定はするがMP消費が激しい。オズも本職ほどではなくとも最大MPはそれなりにあるのだが、それでも今の一戦でMPが5割程まで減っている。

 街で買った丸薬型のMP回復アイテムを飲めば、MPが8割弱まで回復した。悪くない回復量ではあるが、値段を考えると気軽にバカスカ使える物でもない。

 ボスエリアまでの戦闘数を考えると、仮にモンスター素材がそれなりの値段で捌けたとしても、トントンか下手をすれば赤字になる。やはり、今すぐの攻略は現実的ではないと確認出来たので、大人しく岸に上がった。

 破濤海岸は相変わらず風が強いが、クラスチェンジしたオズの体躯と蹴爪なら特に問題にはならない。道中のモンスターをなぎ倒しつつ、そのまま進んでいく。

 1時間ほど行ったところで、ボスエリア前のポータルが見えてきた。

 水中戦のハンデを除いて考えても、やはり海の中よりは明らかにモンスターが弱い。このゲームは順路以外の道を行こうとすると途端に難易度が上がる事を考えても、恐らく破濤海岸をクリアするのが運営のオススメルートなのだろう。

 回復アイテムの残りを確認し、ボスエリアへと足を踏み入れる。



 ボスエリアに足を踏み入れた途端、雨粒が全身を打った。

 ボスエリアに入る前は、風こそ強かったものの雨は降っていなかったが、ボスエリアではそれが嘘のようなザアザア降りである。恐らくは、ボスエリア特有の気象なのだろう。

 地面は破濤海岸と同じくゴツゴツした岩なのだが、オズの踵――恐竜脚のくの字に折れ曲がっている部分――まで浸かる位の海水が入ってきており、そのままだとかなり歩きにくい。海水と泥水の違いはあれど、丁度沼地のボスエリアと似たような状況だ。

 ボスは、オズが入ってきたのと丁度反対側、ボスエリアの最奥に鎮座している。雨で視界が悪いので少々判別しにくいが、トドの様な生物に騎乗した人型のナニカだった。

 とりあえず近付かないと攻撃出来ないので、水を描き分けながら歩み寄ると、いくらも行かない内にボスの方が動いた。人型が、杖のような物を高く掲げる。

 攻撃に備えて身構えるのとほぼ同時、空から轟音と共に雷が落ちてきた。ゲームなので、落雷の速度はかなり速かったがそれでも回避可能な範囲に収まっている。ギリギリで避けたと思ったのだが、水面を伝わる電流に当たり、少なくないダメージを受けた。


「ガァッ!?」


 思わず声が漏れると共に、麻痺の状態異常に罹る。【雷魔法】で覚えるスキルは相手を麻痺させる副次的効果を持つ物が多いが、それがボス側にも反映されているらしい。慌てて、《キュア》で回復した。

 どうやら、トドの上に乗っている人型は魔法使いタイプの様だ。一方的にやられるのは癪なので、アイテムバッグから銛を取り出して投げつける。が、銛は透明な盾に阻まれて地面に落ちた。


「《ホースシールド》はズルくない!?」


 【乗騎】さえ持っていればプレイヤーも覚えられるスキルなので何らズルくはないのだが、それでも言わずにはいられなかった。

 雷攻撃や《ホースシールド》から察するに、ボス側もプレイヤーの覚えるスキルと似たような物を使える様だ。となれば、ボスの推定戦力はかなり高くなる。

 【乗騎】には《騎手回復》があるので乗っている人型のMPは時間と共に回復する可能性があるし、上の人型も下手をすれば回復魔法でトドを回復出来る可能性がある。

 とりあえず、トドをどうにかしないとこのままではジリ貧だ。遠距離戦は分が悪いので、【水流操作】まで使って水を掻き分け、トドへと駆け寄る。

 すると、今度はトドが動いた。今まで高く上げていた頭を下げ、地面に寝そべるような体勢でヒレを動かして滑るように――逃げる。


「オイィィィ!?」


 思わず叫んだ。

 トドは、そんなオズなど知ったこっちゃないとばかりに、水の上を滑るように逃げていく。人型が、また杖を掲げた。

 雷撃。ギリギリ避ける。でも誘導雷に当たる。今度は、麻痺は免れた。


「そう言うタイプかよ、畜生め」


 毒づくが、それで状況が好転するわけでもなく。

 トドの機動力と、人型の火力を活かした遠距離からのチクチク戦法は、ボスのステータスでそれをやられるとプレイヤー側はかなり辛い。こちらの遠距離攻撃はトドのシールドに阻まれるし、そもそもボスとの火力勝負自体が分が悪い。

 駄目元でボーラーを投げつけてみるが、やはりシールドに阻まれて地面に落ちた。

 状況はかなりヤバイ。

 ずんぐりした見た目とは裏腹に、水上を滑るトドの動きはかなり速い。《四足歩行》まで使って追う事に専念すれば追いつけなくはないかも知れないが、そうすると落雷に対処出来なくなる。

 誘導雷でさえ結構なダメージだから、直撃を受ければ只では済むまい。流石に一撃で即死はしないだろうが、麻痺を受ければ結局トドには離されるので、あまり意味が無い。

 追いかけっこはスタミナを無駄に消費するだけだと判断して、足を止める。トドも、オズから一定距離を取ったところで止まった。

 攻撃に対処出来るよう身構えながら、何か状況を出来る方法がないかメニューを確認する。投擲武器はそこそこ持ち込んでいるが、どれも威力は銛と大差無い。魔法使いでないオズは、魔法の射程距離がそんなに長くないので、トドを足止めするにも近付く必要があり、結局鬼ごっこになる。《竜の吐息》は使えるが、使ってしまえばMPとスタミナが枯渇して動けなくなるので、最後の手段だ。

 悩んでいると、また雷が落ちてくる。回避。誘導雷。麻痺。治療。

 MPが減ってきたので、丸薬を飲んで回復する。やはり鬼ごっこしか無いかと諦めかけた所で、ふとあるアイテムが目に入った。

 ボス戦用に持ち込んだアイテムではないし、乱暴に扱えば壊れる可能性もあるが、この際それは仕方あるまい。負けるよりは遥かにマシだと、アイテムバッグに手を突っ込んだ。

 取り出したビッグタートルの死体を抱え上げ、トド目掛けて思い切りぶん投げる。なにせ、甲羅だけでオズより大きい巨亀だ。流石にあの巨大質量はシールドでは受け止められないと判断したか、トドは滑って回避した。

 トドの行く手を阻むように、バッグから取り出したナマコとイソギンチャクを手当たり次第に投げる。シールドで防げば若干だが速度が落ち、回避すれば軌道が変わって無駄な距離を進むことになる。オズがトドの行く手を阻むように投擲を行っているのもあり、トドは思うように距離を稼げない。その間に、亀を拾って再び投げつけた。

 今度は避けられないと判断したか、トドは顔を上げ自分の身体をぶつけるようにして亀を迎撃する。見ようによっては水族館でボール芸をするアシカのような動きで、亀の甲羅をはね除けて見せた。もっとも、トドの方も少なくないダメージを負ったようだったが。

 銛を投げて上の人型を牽制しつつ、落ちているナマコやイソギンチャクを投げてトドを追い立てていく。雷撃は、とりあえず直撃だけ避けて後は回復で凌ぐ。

 何度かの攻防の後、ナマコやイソギンチャクの死体とボスエリアの境界とで、トドを追い詰める檻を作る事に成功した。トドがどういう理屈で水の上を滑っているのか知らないが、死体を乗り越えるには一手間必要なようだ。

 死体に乗り上げて速度を落としたトド目掛け、オズが走る。人型が雷を落としてくるが、タイミングを合わせて銛を投げてやれば、雷は銛に当たって大きく逸れ、トドに直撃した。フレンドリーファイアを食らったトドが、悲痛な叫びを上げる。

 人型が杖を振ると、今度はオズの周りの水面が槍のように隆起して襲いかかってくる。翼を広げて防いだ。翼はボロボロになったしダメージも負ったが、手足が無事なら相手を殴るのに不都合は無い。

 そうこうしている内に、トドへと肉薄する。近付いて改めて見ると、トドもビッグタートルと同じ程度にはデカイ。つまり、オズが乗るにも支障がないと言う事だ。

 ワザと蹴爪を立てるようにして、トドの肉をえぐりながら背中へと駆け上がる。人型が何かしようとするが、それより先に思い切り殴りかかる。が、トドのシールドに阻まれた。

 シールドを迂回するように飛んできた風の刃で、オズの鱗が削れる。だがそれも、落雷や水の槍に比べたら大したダメージでない。

 構わず2度3度と殴りつければ、シールドにヒビが入る。コレはマズいとみたか人型が逃げようとしたところを、尻尾で思い切り殴りつけてやった。浮き足立っていたのが悪かったか、人型はトドの背中から落ちて水音を立てる。

 それを見逃すオズではない。自身もトドの背中から飛び降り、そのまま人型を踏みつけるように着水する。魔法使い系の人型はフィジカルはそこまででもないのか、オズの蹴爪に腹をえぐられてのたうち回る。そのまま頭を掴んで捻ってやれば、ゴキリという音を最後に動かなくなった。

 念のため、首を捻じ切ってから死体を投げ捨てる。

 トドの方に向き直ろうとしたところで、背中に衝撃を受けた。思い切り吹き飛ばされ、水の上を転がる。

 見れば、怒りに燃えるトドがこちらに突っ込んでくる所だった。大きく横に飛んで、間一髪で避ける。トドはスピードを落とさず弧を描くように軌道を変え、再び突っ込んできた。

 先程までは逃げの一手だったが、主が殺されればそうも言ってられないのだろう。まったく、最初からそうしてくれれば、先に下の方を相手にしたのに。

 主の仇を討たんとトドが吼える。


「ゴアァァァ!!」

「来いやァ!」


 オズも吼えた。



ストームライダーズ を討伐しました。

破濤海岸 が攻略されました。船の墓場 へ進行可能となります。


 インフォメーションが表示される頃には、オズもボロボロだった。

 手持ちの回復アイテムは使い切り、それでも足りなかったので落ちているナマコには所々噛み千切った跡が付いている。

 考えるまでもなく、あの巨体であの速度で動く生き物が、弱い訳無いのだ。そう考えると、最初に逃げ回っていたのは運営の温情だったのかも知れない。まあ、それを差し引いてもやはりクソ戦法ではあるが。

 少し考えたあと、結局ナマコの死体は諦める事にした。食材として卸す以上、囓りさしを売るのも気が引ける。ビッグタートルも確認したが、何度も投げつけたせいかコチラも甲羅に大きなヒビが入っている。今までは甲羅をどうにかする手段がなかったが、コレなら中身を取り出す事が出来るかも知れないと考え、こちらはアイテムバッグに詰め込んだ。

 トドの死体をひっくり返して、腹を割く。騎手と乗騎の関係を考えれば、人型の方がメインボスな気もしなくはないが、戦って楽しかったのがトドの方だったので、とりあえずはこちらの内臓でアビリティが貰えないか確認する事にした。

 ゲッコーの検証により、アビリティを得るのには心臓を食えば良いことが分かっている。心臓を取り出し、血腥いそれを咀嚼し嚥下した。

 メニューを確認すると、【乗騎】が【騎竜】に変化していた。例の如く、レベルは1に下がっている。


「えぇ……」


 思わず声を上げる。まあ、確かに《ホースシールド》を使って大活躍していたので、ある意味納得のアビリティではあるのだが。どうせならもう少し違ったのが欲しかったと思うのは、贅沢だろうか。

 人型を先に食っておけば違ったのかと思わないでもないが、流石に1エリアのボスで2つもアビリティが手に入るとも思えないので、恐らく結果は変わるまい。

 まあ、文句を言ってもどうにもならない。とりあえずトドと人型の死体もバッグに入れて、ボスエリアを後にした。

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[良い点] 面白かったです。 [気になる点] 完璧なドラゴンライダー(下)になるまで もうすこし?
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