金策も必要だったりする
ゾフィーの寝床を整えたところで、折角だからこの面子で狩りに行こうという話になり、連れ立って灰人の道へとやって来た。
10人では1パーティには収まらない為、5人ずつのパーティを組み、2パーティを組み合わせてレイドを作る。内訳としては、普段からパーティを組んでいるキリカマー、カブータス、ラインハルト、来夢眠兎、ゾフィーが第1パーティ。それ以外が第2パーティとなる。
ミドルオークは常にこちらよりも多数で襲ってくるため、こちらがレイドを組んでいるとあちらも7~8匹のパーティを2つ組み合わせて15~6匹で襲ってくる。経験値としては結構美味しいが、エンカウント率も高めなのでそこそこ鬱陶しい。
今も、ゾフィーが新たな敵を感知した。
「またオーク来た。1匹だけ早いのが混じってるから、多分ライダー。あと、カラスと狼が混じってるからテイマーも居ると思う」
「キリカマー、どうする?」
「ライダーはこちらで受け持つ。テイマーがどっちに混じってるか分からないけど、そこは臨機応変で」
「んじゃ、そう言う事で」
手短にキリカマーと分担を決め、戦闘態勢を整える。
流石にこの面子でパーティ間連携などは出来ないので、基本的には各パーティで相手の1パーティを抑えて戦うことになる。オズ側は少々戦力が歪だが、まあそこは仕方が無い。
単独で突出してきたオークライダーをカブータスが受け止める形で、戦闘が開始される。キリカマー達のパーティは、それぞれがクラスチェンジしたためか戦闘が大分安定していた。
身体が大きくなり甲殻も分厚くなったカブータスは、ライダーの突進を受け止めても多少後ずさる程度で済んでいる。ラインハルトは【飛行】のスタミナ効率が改善され、戦闘中ずっと飛んでられるようになっていた。攻撃力は高くないが、それでもスタミナの心配なしに最初から最後までヒットアンドアウェイを仕掛けられるので、総合的な与ダメージは上がっている。
来夢眠兎はテイムした狼に騎乗しており、安定して魔法を使えるようになっていた。敵に狙われても狼の機動力でカブータスがカバー出来る範囲に逃げ込めるため、生存力が上がっている。ゾフィーは、精霊のガブリエルが【雷魔法】を使って敵に攻撃出来るので、瞬間火力が上がっている。【雷魔法】には低確率で敵を麻痺させるスキルが多いため、ゾフィーの【捕縛技】と併用することで敵から攻撃のチャンスを奪う。
キリカマーの指示出しも大分板についてきていて、あっという間にライダーのHPは削れていく。
あちらは問題無さそうだと判断したところで、オズも戦闘を開始した。
脇をすり抜けようとしたシーフの膝を尾槌で叩き割り、倒れたところで首を踏みつけてへし折る。噛みついてきた狼を掴んでカラスにぶつけてやり、隙を突くように放たれた矢を羽で払い落とした。墜落した狼とカラスには来夢夫妻の魔法が飛んだので、その間に前に出てオーク達の行く手を塞ぐ。
こちらを牽制してくる槍持ちの槍を、ワザと翼膜を貫かせて強引に絡め取る。槍を取られまいと踏ん張ったところで、がら空きの喉に爪を突き立ててやった。盾持ち2匹がこちらを取り囲むように迫ってくるが、頭を攻撃してガードを上げさせたところで、足元に尾撃を当てて転ばせる。大剣持ちが斬りかかってきたので、ボディスラムの形で片方の盾持ちの上に落としてやった。そのままジャンプして思い切り踏んづければ、足元から2匹分の悲鳴が上がる。落ちた大剣を掴み、もう片方の盾持ちに投げてぶっ刺しておいた。
倒れたオークへのトドメをジョージ夫妻に任せ、オズは後衛へと突進する。テイムモンスターを失ったテイマーが行く手を塞ぐが、適当に引っ掴んでアーチャー目掛けてぶん投げれば、丁度攻撃態勢に入っていたアーチャーはこれを避けることが出来ずに諸共倒れ込んだ。飛んできた炎の矢を躱し、マジシャンの首をへし折る。改めてアーチャーとテイマーにトドメを刺せば、ひとまずオズ側の担当分は終わりだ。
見れば、キリカマー達も担当分を倒し終えて引き上げてくるところだった。戦闘終了のインフォメーションが流れたところで、声を掛ける。
「よう、大分動きが様になってたな」
「とは言え、そっちがほぼオズ一人でやってる事を、こっちは5人掛かりだけど」
「つーても、火力だけで言えば来夢夫妻が居る分だけこっちが有利だし、そこまで戦力差は無いだろ」
キリカマーはどうにも自信を持ちきれて居ないようだが、オズが見る限り第1と第2でパーティ間にそこまで戦力の差は無い。
来夢夫妻はゲーム歴が長いだけ有ってプレイヤースキルが結構高く、また魔法種族故に火力も高いので、後衛への牽制や倒れた相手へのトドメなどは安心して任せられる。ジョージ夫妻はクラスチェンジ前なのもあってミドルオークと正面切って戦う事は出来ないが、それでも死にかけのオークにトドメを刺すくらいは任せられる。
対多数の戦闘では『トドメを刺す』という一手を省けるだけでも大分違うので、適した役割さえ割り振れれば第2パーティだって十分強いのだ。全員大人なので、聞き分けが良くて指示出しが楽だというのもある。
そんな事を話していると、来夢夫妻がこちらに歩いてきた。
「その羽、色々言ってた割には結構使いこなしているようだね」
「あー、どうだろう? 他に羽使って戦ってる奴を見た事無いから、どうも使い方が合ってるのか分からん。
アビリティ乗らないから攻撃には使えんし、もう少し頭の良い相手だと積極的に狙われるんじゃないかな」
背中の羽は、現時点では微妙な部位だ。
全開にした際には片翼6m程にもなり、腕よりも更に長い。翼膜も肩甲骨の上から尻尾の付け根辺りまで続いており、ほぼ背中全体を覆うようになっているため当たり判定が非常に大きい。畳めばかなりコンパクトにはなるのだが、それでも存在感はある。
オズが今覚えているアビリティの効果は乗らないので、攻撃には使えない。一応確認したが、習得可能なアビリティの一覧には【羽技】の様な物は見つからなかった。防御には使えるが、翼膜部分は腕と違って鱗に覆われていないので、防御力が低い。腕を使わずに防御出来るのは便利と言えば便利だし、先程のようにわざと翼膜を貫かせたり出来るので、全く使えない訳では無いが。
もう少し頭の良い相手であれば、積極的に羽を狙ってダメージを蓄積させるような戦法をとってくる可能性はある。その時はその時で、対応策を考えれば良い話ではあるのだが。
「モーションサポートは羽ばたくような動きがメインだから、本来は【飛行】の為のパーツだとは思うんだがな。
【飛行】を覚えられるかどうかも分からんから、そっち方面で活躍出来るのかどうかも不明だ」
「一応、いくつかの種族でクラスチェンジの際に【飛行】を覚えたって情報は入ってきてるね。竜裔ではないけど。
後天的に覚えられないか試してるプレイヤーも居るには居るけど、現時点では羽広げて投身自殺しても無駄っぽいって事しか分かってないね」
神話に出てきたニーズヘッグは空を飛んでいたが、神話だけあって何処まで話を盛られているか不明なので、アテには出来ない。そもそも、身体的特徴を見る限りニーズヘッグは竜裔ではなさそうだ。
その辺を解明するためにも、悪魔族の村に行って情報を集めたいと来夢月が希望したので、こうして灰人の道を進んでいる訳だが。
「ワル君、申し訳ないけど、私達はレベル30になったから先に抜けさせて貰うわね」
「ん。お疲れさん。とりあえず現時点でのドロップアイテム見せるから、欲しいの持ってって」
ジョージ夫妻がレベル30になったため、クラスチェンジの試練を受けさせるべく一旦パーティを解散する。
NPCであるデシレが余計な経験値を稼ぎたがらなかったことから考えても、クラスチェンジ前にレベル31に到達すると何かしらのデメリットがあるようだし、これに関しては事前にメンバーの了解を取ってある。ここに居る面子は装備面をジョージ夫妻に依存する割合が大きいので、特に反対意見も出なかった。
ジョージ夫妻が抜けて8人になったので改めてパーティを組み直し、先へと進んだ。
「お、見えてきたな。アレがボス前のポータルだ」
しばらく進むと、ボスエリアの入り口が見えてきた。
出発が少し遅かったのと、道中の敵が多かったため日が傾きかけているが、それでもまだ時間に余裕はある。夕食までに、ボス戦をこなして村を軽く散策する程度の事は出来るだろう。
と言う訳で、一旦パーティを解散する。
「いやぁ、申し訳ないね。なんだか、良い様に使っちゃって」
「構わんよ。俺がいると村に入れないのは事実だし、俺自身も金策は必要だったから、道中全くの無駄足って訳でも無いしな」
来夢月が本当に申し訳なさそうに謝ってくるが、オズとしては事前の取り決め通りなので特に文句は無い。
悪魔族は竜裔と敵対しているので、ボスを倒してもオズは村に入れない。これがオズだけなら問題無いが、パーティメンバーまで一纏めに追い返されるとなると困るので、ボス前にパーティを解散してオズ抜きのパーティを組み直す必要があるのだ。
ややこしいゲーム内設定を抜きにしても、昨日の一件でオズの方も悪魔族に良い印象は無いので、特に村に入りたいとも思わない。キリカマー達が思った以上に戦えるようになっていたので、まあオズが居なくても大丈夫だろうとも思える。ソロで戦えばボスのドロップは独り占めなので、金策としてはその方が有りがたいというのも有る。
「ま、何か面白い話があったら、後で聞かせてくれや」
「ボクとしても、何か面白いネタが転がってて欲しいけどね。まぁ、期待しないで待っててよ」
と言う訳で、他の面子と別れてボスエリアへと入っていったのだった。




