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取らぬ竜の鱗算用

掲示板回を投下しております。

興味のある方は、そちらからどうぞ。

サンドワーム・ネスト を討伐しました。

焦熱砂漠 が攻略されました。破濤海岸 へ進行可能となります。


N(長く)K(苦しい)T(戦いだった)……」

「言いたくなる気持ちは、分からなくもないけどね」


 独りごちたオズの背上で、来夢月が呆れ半分にツッコミを入れてくる。

 サンドワーム・ネストはその名の通りサンドワームの巣穴で、多数のサンドワームがひしめき合っているミミズ嫌いにとっては地獄のような場所だった。

 が、大して広くも無い場所に、ただでさえ大型のモンスターであるサンドワームが詰まっているので、同士討ちは避けられない。サンドワームも巣へと入り込んだ異物の排除を最優先にしているらしく、多少の巻き添えは気にせず攻撃をしてくるので、オズ達は回避に専念しているだけで勝手に自滅していく。

 一応、サンドポイズンという毒持ちのリーダーっぽいのも居たのだが、コイツの毒は同族にも効くため、フレンドリーファイアによる被害が更に加速する。終わってみれば、大半の敵は同士討ちで死んでいるという、何ともアレな状況だった。

 ビートルボンバーといいコイツらといい、虫モンスターは味方に被害を出すのがお約束なのだろうか。


「比べるのもアレだが、地獄カゲロウよりはコッチの方が数段楽に思えるな」

「あっちはギミックの種が分かってないから、もしかしたらそれ次第じゃアリジゴクの方が楽になるのかも知れないけど。

最初のゴーレムと同じで、メインルートじゃない方に行きにくいよう誘導してるのかもね」


 サンドポイズンの死体を処理しながら、来夢月と意見交換を行う。

 大半のサンドワームは同士討ちで死んだのでドロップアイテムへと姿を変えているのだが、サンドポイズンは【狩猟】アビリティで死体を残すため、オズの手でトドメを刺している。内臓を食ってアビリティを取得するのが目的だが、如何せんサンドポイズンはデカいミミズのようなモンスターであるため内臓らしい内臓が見当たらず、仕方が無いので《消化吸収》で満腹度を消費しつつ肉を全部食う羽目になっていた。

 ボス戦がそれなりに盛り上がったのであれば、テンションのままに一気食いも出来るのだが、今回のような不完全燃焼の後だとひたすら罰ゲーム感が強い。今はまだ話して気を紛らわせられるだけマシだが、一人で来ていたら今日の狩りはここで終わっていたかも知れない。

 そんな事を考えている内にインフォメーションが入り、【毒の血】というアビリティを覚えた。毒と麻痺の状態異常に罹りにくくなるアビリティだが、名前からするともう一段階「竜」の字が入るアビリティがある筈で、つまりは罰ゲーム続行である。何ともモチベーションの下がる話だ。


「ボスと再戦するなら、付き合うよ。まあ、キミなら一人でも大丈夫そうだけど、回復手段は多くても困らないだろう?」

「ありがたい話だが、良いのか?」


 事情を聞いた来夢月から、意外な申し出があった。

 本来、来夢月はこの先のフィールドの情報が欲しいのと、情報屋として一番先にクラスチェンジしてドヤ顔したいと言うことで同行していたので、ボスとの再戦に旨味は無い。来夢月の【聴覚察知】と魔法は対多数戦闘では役立つので、申し出自体はありがたいのだが。


「この先に進むにも、キミと居た方が安全だろうしね。それに、もしかしたらキミのクラスチェンジには、アビリティがあった方が有利かも知れない」

「どういうこった?」

「丁度昨日、ウチのカミさんのパーティが破濤海岸に辿り着いてね。でまあ、そこでレベル30になったんでクラスチェンジの試練を受けたんだけど、その内容が見事にバラバラだったらしいんだ」


 ゼアから聞いた人魚のクラスチェンジの試練はスクリューシャークとの一騎討ちだったので、てっきり他の種族もそうだと思っていたのだが。来夢翠のパーティメンバーが受けた試練は内容がバラバラで、中には全く戦闘が無い物もあったらしい。


「【歌唱】持ちのユメメェさんが居ただろう? 彼女が受けたのは、一定時間の間、一定クオリティで歌い続けるっていう試練だったらしいよ。

【歌唱】はそれだけでMPとスタミナ消費するけど、途中でポーション飲んだらその時点で不合格になってかなりキツかったってさ」

「そりゃまた難儀な……」

「幸か不幸か、試練自体はメニューから選ぶだけで何度でも再挑戦可能だから、リトライを重ねて本日めでたくクラスチェンジを果たしたそうだよ」


 現時点で報告されている試練の内容にあまりに統一性が無いため、試練の内容はかなり複雑な条件分岐をしている可能性がある。竜裔が「竜」の付くアビリティを覚えるというのはいかにも伏線臭いので、クラスチェンジの際には覚えていた方が有利かも知れないというのが、来夢月の推測だった。

 生産職が戦闘試験を受けても何の益も無いし、恐らくはそう言った部分に対応しているのだろう。よく言えば個人の資質に合った試練が用意されていると言う訳だが、逆に言えば対策が立てにくいという事でもある。

 攻略組にも竜裔が全く居無い訳では無いが数は少ないし、クラスチェンジしたプレイヤーが全員情報を落としている訳では無い。また、試練を考慮した結果、あえて裏切りの荒野狙いで地獄カゲロウに挑み続けているパーティも居るらしい。そんな訳で、竜裔のクラスチェンジに関する情報はあまりないらしい。


「KNOWSONさんと懇意にしてる生産職には、そこそこ竜裔も居るから。出来れば、キミにはなるべく良い条件で試練を受けてもらって、その情報をフィードバックして貰えるとこっちとしてもありがたいのさ」

「つーと、俺も地獄カゲロウ倒して裏切りの荒野を目指した方が良いか?」

「裏切りの荒野に何かあると分かってるなら、ソレもお願いしたいけどねぇ。現状だと、そこまでキミのプレイングを縛るのも気が引けるよ。

それに、娼館の店長がわざわざ海岸方面を指定したなら、彼女にはキミに裏切りの荒野へ行って欲しくない理由があるのかも知れないし」


 その可能性は、オズも考えなかった訳ではない。NPCの助力を得られるというなら、オズ個人に限って言えば水の精霊より竜裔の方が確度が高い。とは言え、どうも伝え聞く竜裔のイメージはかなり蛮族寄りなので、精霊の方がマシな可能性もあるが。

 何らかの思惑があるにせよ、レベルドレインの店長はオズとしてはなるべく仲良くしたいNPCであるので、わざわざ助言に逆らう理由も無い。今はクラスチェンジを優先したいのもあって、結局はボスと再戦した後に破濤海岸へと向かう事にした。



 破濤海岸はゴツゴツした岩場の海岸だ。その名の通り波が岩に当たってしぶきが飛んでくるのだが、その所為で足元が滑りやすい。

 また、絶えず強風が吹き荒れているため、重心の高いオズは時折バランスを崩しそうになる事もあり、中々厄介なフィールドだった。


「ふむ。水の精霊の聖域があるって話だったけど、流石に入ってすぐにご対面、とは行かないようだね」

「フィールド名からして複数にまたがってることも無さそうだし、ボスの先に聖域とやらがあるか、もしくは海に入れってこったろうな」

「難しい所だね。イメージとしては海の方がそれっぽいけど、そうすると聖域に行けるプレイヤーは限られるし」


 店長の話では、こちらに来れば水の精霊の助力が受けられるという事だったのだが、今の所それらしい姿は見えない。モンスターは襲ってくるが、少なくとも現時点では蟻の時のような異変らしき兆候も見られず、少なくとも最初から精霊ありきでの攻略は出来ない様だ。

 まあ、オズとしてはそれならそれで構わないのだが、情報屋の来夢月としては精霊とのコンタクトに期待していたらしく、少し残念そうだった。

 とは言え、精霊探しばかりもしていられない。


「っと、左からトビウオが来たよ」

「またかよっ、と」


 ミサイルジョーはまんまトビウオのモンスターだが、強風に乗ってなのか普通に空を飛んで襲ってくる。森に居たダンガンカナブンに近いモンスターだが、羽音が風に紛れて聞き分けにくいので、察知が遅れやすい。ウサギの来夢月にとっては、そんな事は無いらしいが。一応、【気配察知】でも感知は出来るのだが、来夢月に索敵を任せた方が早いのでそちらは彼に一任していた。

 代わりと言ってはなんだが、オズはセンボンアネモネなるイソギンチャクのモンスターを受け持っている。直径4mほどのオズでも丸呑み出来そうなサイズのイソギンチャクで、無数の触手で襲ってくる上に魔法が効きにくいという魔法使いの天敵だ。

 触手は数が多い分一本一本は細いため、数が少ない内はまだ引きちぎるのも容易い。ただ、あのサイズと攻撃方法で力が弱いとも考えにくいし、油断して丸呑みされたら洒落にならないため、リーチを活かして遠くから削っていくのが主となる。時間が掛かる分だけ他のモンスターの横槍を受けやすくなる、中々の難敵だった。

 他にもナマコだのスライムだの、やたらとこちらを丸呑みしてきそうな敵が多いのは、担当者の趣味か何かだろうか。

 砂漠のようなフィールドギミックこそ無いが、総じて厄介なフィールド、と言うのが戦ってみた感想だった。


「お、レベル30になったね」

「おめでとさん」


 そうこうしている内に、来夢月のレベルが30に達した。小型種族と大型種族ではレベルアップの必要経験値にかなり差がある上、オズはドレインを受けていることもありレベル29を少し越えた程度である。


「どうする? クラスチェンジしに行くなら、パーティ解散するが」

「良いのかい?」

「ま、居てくれた方がありがたいが、ソロならソロで取得経験値が倍になるしな。

あと、クラスチェンジ前にレベル31になった場合、どんなデメリットがあるのかよく分からんし。あんま無駄に経験値稼がせるのも悪いだろ」


 恒常的にパーティを組んでいるなら経験値を調整してレベルアップのタイミングを合わせることも出来るが、そうでない二人には無理な話だ。


「そう言う事なら、お言葉に甘えようかな」

「今日のドロップで欲しいアイテムがあれば、後で届けるが?」

「装備が必要ならジョージさん達から買うことになるから、そっちに卸しといてくれれば良いよ。

売り上げに関しては、情報量の前払いって形にしといて」

「あいよ」


 クラスチェンジ前のレベルアップによるデメリットには来夢月も興味はあったが、流石に自分を実験台にする気は無かったらしい。結局は、各自のクラスチェンジを優先することになった。

 クラスチェンジを受ける為のコマンドはかなり優先度が高いらしく、パーティを解散した後に来夢月はその場から何処かへ転移して行った。一旦ポータルへ戻る必要が無かったのはありがたい。

 オズもしばらくソロで狩りを続けていたが、運良く死ぬ前にレベル30へと到達したため、そのままクラスチェンジに挑戦することにしたのだった。

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