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5話 エルフのお誘い①

「うっ……」


 うめき声とともに、朧の意識は覚醒していく。


(ここは、教室?)


 霞む視界には飛び込んできたのは、見慣れた風景。

 いつもの教室だった。


(なんで教室なんかに、それになんだかいい匂いが……)


「あら目覚めたのね」


「えっ……?」


 ぼーとしていると、少し高めの弾む様な声が聞こえる。

 声の方を見て、朧は間の抜けた声を漏らす。


 そこには1人の女の子——美少女が立っていた。


 長い金の髪をポニーテールで纏め、ちょっとツリ目の緑の瞳で朧を見下ろす。服装は革の様な袖無しのジャケットにホットパンツ、肘まである籠手にハイブーツを着こなし、更にその腰には一振りの刀の様な物が——


 まるでファンタジー世界の住人。それだけでも呆けてしまうのには十分であったが、朧の目は少女のある一点に止まっていた。


「耳が……」


 そう、耳である。

 少女の耳は長く少しとがっていたのだ。


(これじゃまるで……)


「ああ、あなたの世界じゃ“エルフ”はいないんだっけ?」


「——!!」


 心の中で思い至った存在の名が飛び出し、朧は目を剥く。

 だが、朧のそんな様子などお構いなしに少女は続ける。


「その様子ならケガは、もう大丈夫そうね? 一応、《回復魔法》をかけたから当然だけど、感謝してよね?」


「ケガ……そうだ!!」


 ケガの一言で、朧は思い出す。


 天使、異界、侵魔などの存在を。

 クラスメイトに裏切られ、死にかけた事を。

 自分が目覚めた《銃聖ノ加護》という能力の事を。


 そして——


「な、なぁアンタ。御星……女の子を見なかったか? 黒髪の大人しそうな、オレちゃんの妹なんだけど!!」


 ——突如として消えてしまった、自分の妹の事を。


「ちょっと、落ち着いてってば!」


「うば!?」


 掴みかからん勢いで迫る朧に、少女は彼にかけてあげていた布——自分の外套を頭に被せその勢いを奪う。


 いきなり視界が遮られた事に混乱しそうになるが、それもつかの間。


(あ、いい匂い……)


 押し付けられた外套からふわりとする甘い匂いに、くらり……結果的に落ち着きを取り戻す。と同時、起きた時に感じた匂いは、少女の体臭だったのかと思い当たり、急に、言うならば“ムラっと”……。


「ちょ、なに、人の服の匂い嗅いでるのよ、この変態!!」


 ズドン!!


「おぐぅッ!?」


 少女のナイススメルに、思わず鼻をヒクつかせていたのがバレ、外套越しに鞘に入ったままの刀が朧の鳩尾に叩き込まれたのだ。



「落ち着いたかしら?」


「はい」


 ——次、変な事したら“股間”よ?


 と、脅されれば嫌でも落ち着くと言うものだ。

 タマがヒュンっ、とする思いを抑えながら朧は従順に頷くのみ。


「色々、聞きたいことはあるだろうけど、まずは自己紹介よ」


 そう言って、大きめな胸を張り、自慢げな表情を作るエルフの少女。

 彼女の口から紡がれる言葉に朧はまたもや間抜けな声を出すことになる。


「私は“アリサ”。エルフで、“勇者”よ! ねぇ、あなた、私と一緒に“魔王”を倒さない?」


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