表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フローティア  作者: ゆらぎからす
幕間6.ねのくに
93/150

幕間6 ねのくに ①

 幕間6 ねのくに ①




 今年は、あの山陰大災害から五年になります。

 この五年間は、私達にとって、この日本を立て直す復興の五年。

 そして、震災の中で起きた高速炉事故を利用して、日本を貶めようとする国内外の勢力――

 そういう人達との戦いの五年間でもありました。



 事故直後、東北から九州まで「毎時1.5~2.0マイクロシーベルト」が記録されて。

 これではもう日本に人間は住めない。

 この国はもう死の土地だ。

 山陰は――いや全国が、チェルノブイリと同じになってしまった。

 諸外国も、国際委員会なんかも、そういう学者の言葉をうのみにして。

 私達への批判が最優先だったマスメディアなんかも、ずっとそんな事を言って来たんです。

 全国民で国外避難すべきだ。

 全世界に救援を要請し、日本はもう捨てて逃げましょうって。

 この日本がですよ、たかが2マイクロシーベルトかそこらの微量の放射能で。

 とんでもない話ですよね。



 広島や長崎でも、ビキニ環礁でも、昔からいた訳ですよ。

 自分の身体の不調を何でもかんでも原爆や水爆実験のせいにしたがる人が。

 スリーマイル島や、あのチェルノブイリでも未だに、自分の持病や経済困窮を、はっきりとした証拠も示さず原発事故のせいにして騒ぐ人は出て来ています

 まあ、賠償金は誰だってほしいんですよ。

 原爆や水爆や原発事故のせいにすれば、アメリカが悪い、政府に責任があると言う事に出来ますからね。

 そういう人を更に、反核運動や反原発運動が利用して来た。

 そんな負の積み重ねが日本にはありました。

 それが山陰での高速炉の暴走事故からの、捏造による日本叩き、日本差別とでも言うべきデマの連鎖に結び付いたのです。

 ですが、私達は負けませんでした。

 メディアにも国際委員会にも、各国政府にもぶれない徹底した抗議を繰り返し、彼らの虚構を少しずつ退けて行きました。

 そして、先日ついに、国連総会で、日本は生活可能な土地である事が認められました。



 ビキニ環礁にだって、もう普通に住民が暮らしてるんです。

 スリーマイル島にだって、チェルノブイリにだって。

 周辺の都市には住民が戻っている。

 あちらはもうアメリカやロシアの政治的事情がありますからね……本当はもうとっくに生活可能なのに。

 そんな、『毎時マイクロ単位の微量な放射線が、私達の生命や健康を脅かす』なんて言うのは、結局は虚構だったんですよ。

 日本に日本人として生まれ育った、冷静さを持った国民の皆さんなら、そこは常識で理解して頂けると思います。

 とにかく私達の落ち度を探しているメディア。

 日米同盟を破壊したい反米思想の反核運動、反原発運動。

 そういった人達の作り上げた虚構だったんです。



 え? ええ。輸入規制――緩和に向けて、各国の検討が始まっています。

 ええと、(・・・・)どことどこの(・・・・・・)国だったか(・・・・・)……とにかく、日本の復興に風評被害への勝利は欠かせません。

 私達は、冷静さを失わず日本に、自分の住んでいる所に残って、この国の復興のために頑張って来た国民の皆様を、精一杯支えて参りました。

 特に山陰地方に残られた皆様においては、特に。

 野党や、震災さえも政権批判の道具にしたがっている人達が、『避難者救済の縮小』がどうとかなんて持ち出して来ました。

 そういう言いがかりにも負けたりせずに、一番大事なものを(・・・・・・・・)優先して来ました。

 一度避難された方においても、私達はその帰還を最大限支えて来ました。



 これからもこの国で生きていける様に。

 日本を『死の国』などと決め付けていた古い安全基準も、私達に合わせて(・・・・・・・)大幅に見直され(・・・・・・・)ました。

 それにより、国民の皆様はこれからもこの国で、安全に生活出来る事が保障されます。

 復興に向けてより尽力頂ける様になります。

 日本に生まれてよかった、日本人に生まれてよかった。

 そう胸を張って言える未来を、私は国民の皆さんと一緒に作って行きたいのです。



 某月某日、首相官邸にて談話

 内閣総理大臣 岸末(きしすえ)信継(のぶつぐ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ