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赤瑪瑙奇譚  作者: しのぶもじずり
第九章 マホロバの星
27/30


時は前日にさかのぼる。


結局、メダカを一匹殺す羽目になったホジロは、春の離宮へと向かった。

カムライに面会を申し入れたが、門番にすげなく扱われる。

「明日のご婚儀を控えて、殿下はお忙しい。今日は無理だな」


ホジロは、仕方なく手紙を書いて渡した。

「火急の用なんだ。これを急いで渡して欲しい。読めば、絶対に会ってくれるはずだから。渡さなかったら、後悔するのは君だよ」

脅し半分に押し付けた。


門番は迷いながらも、「まあ、手紙だけなら」と受け取った。

そのまま門前で待っていると、案の定、すぐに招き入れられる。



「ホジロ、どういうことなんだ」

「同じ毒だ。四人いる。目当てはここ、春の離宮らしい。どういう段取りなのか分からないけど、たぶん明日。今日騒ぎを起こすのは、早すぎるだろ」

早々に騒ぎを起こして、翌日の婚儀を、はじめから中止にするとは考えられない。


「四人か。それなら、あの時と同じ奴らだな」

宿のゴミ箱に在った布には、ほんの少しだが、毒が付いていたのだ。

マホロバに来たカムライと初めて出会った丘の上の別荘で、襲ってきた賊が使ったものと同じ毒だった。


「まともな手段では、奴らの腕なら心配ない。

問題は、やはり毒だな。ホジロ、手伝ってくれ」

「僕、とっても弱いんだけど」

ということで、迎え撃つ準備をする二人だった。




事が起こったのは、城に向かおうとした時だった。

前祝に浮かれる町中から、一群の男たちが豹変して、春の離宮に押し入ってきた。


謀反に備える為、城中に多くの兵士を潜ませてある。

浮かれ騒ぐ城下の混乱を押さえる為にも、かなりの兵を()いていた。

畢竟(ひっきょう)、春の離宮は、思いのほか手薄になっていた。


警備に当たっていた者達が、応戦する。

時ならぬ戦いに、あたり一帯が騒然となった。

たまたま通りかかった腕に覚えのある民もいたが、めでたい祝いの日に武器を持っている者はいない。

加勢しようにも、手が出せずにいた。


入り口の騒動を尻目に、四人の男たちが忍び込んでいた。

人目を避けて、離宮の中を音もなく奥へと進んでいく。


「殿下、大事なご婚儀に血を浴びることになってはいけません。我らに任せて、お部屋で静まるのをお待ちください」

「分かった、頼む」

何処からか、慌てるふうでもない落ち着いた声が聞こえてくる。


四人の刺客は、声を追って、さらに奥へと進んでいった。

庭に面した回廊に行き着き、一つずつ扉の中を確かめていく。


次の部屋から、コトリ、物音がした。

互いに目配せを交わして、部屋になだれ込んだが、空だ。

しかし、奥の扉が閉め残されたかのように、わずかに隙間を見せていた。

三人が部屋の中に入り、残る一人が振り返って辺りを確かめた。

近くに人は居ないと思い、後に続いて部屋に足を踏み入れた時、ズトン、物が落ちる大きな音と共に、頑丈そうな格子戸が入り口を塞いだ。


急いで奥の扉に取り付こうとしたが、やはり格子戸が行く手を阻んでいた。

四人の侵入者は、閉じ込められたのだ。


二人が格子に取り付いて動かそうとしたが、びくともしない。

かなり離れた太い一本の庭木の陰から、人影が現れた。


「仕掛けを用意して待っていたぞ」

カムライの声が、余裕たっぷりに響いた。

すかさず手裏剣が飛んだが、木に隠れてかわす。


「無駄だ。おとなしくしていろ。これだけ離れていれば、かわすのはたやすい」

「くそっ!」

飛距離が長くなれば、見切るのが容易だ。


前面にいた二人が、悔しそうに、格子をつかんで揺すろうとしている。

と、その二人の隙間から二本の筒が覗き、小さな吹き矢が飛び出た。


見えないところからの不意の攻撃。

しかも、かわすには、吹き矢は小さすぎた。


人影が、ぴたりと動きを止めた。



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