第一夜 しとどの晴天
※長いのはこの一話だけ。
幽霊【ゆうれい】
…死霊、なかでも未練あって現世に留まる霊のことを指すことが多い。
未練に縛られ本懐を遂げんと自己を主張する霊、天変地異などの超常的な災いを引き起こす霊、予言などの使命を果たすと消えるメッセンジャーの役割をする霊、子孫を守護する祖霊など、多くが土地や血筋などの繋がりから、現世の生者へ干渉する。
不思議と世界各地に類似した逸話が存在し、おそらく最も古くかたちが出来た『妖怪』と解釈する。
不思議な話をしたいと思います。
この街には、よく雨が降ります。
まだ「ゲリラ豪雨」だとかいう単語が出来るずっと前からですね、どこからかモクモクと黒い雲が湧いてきまして、そンで、あっちゅうまにバケツをひっくり返したような雨が降るんです。
いちばん多いのは、夜も更けた丑三つ時。
これだけなら、ただの土地柄って感じでしゃろ? 違うんです。
ここらって、ほら、盆地やないですか。こう……ぐるう~っと山があって、ぽっかり穴が開いている。お椀みたいに。
……この雨はね、この街にしか降らないんです。丑三つ時になると、街の上にだけ、すっぽり被さるみたいに、どこからか雲が湧いてくるんですよ。
あ、待って待って。まだあるんですから。
この街の子供はね、必ず「クモジ」にあうんです。
クモジって何かって? ……子供のおばけですよ。
そいつは夜にしか現れません。「クモジ」が言うには……ああ、そいつ喋るんですよ。いや、ぼくも、クモジと話したのは一度っきりですけどね。ははは。
……でも、ちゃんと本人に聞いたんですよ?
曰く……「クモジ」は、普段は人間なんだそうで。夜にだけ、おばけになるんです。え? その時のお話を聞きたい? ……しっかたないなぁ。ま、酒の席でのことですし、こういう話ってのは往々にして「お約束」があるってことを堪忍してください。でなけりゃ、ぼくがクモジに怒られちまう。やつがどこで聞いているか、分かったもんじゃあないですからね。
……実を言うと、ぼくが出会ったクモジは、同級生なんです。いや……同級生がクモジだったのか。
中学です。そう。
ぼくは、そこの……ほら、川沿いに、跨道橋、っていうんですか。あれが河川を斜めに突っ切るみたいに跨ってる……そう、そこです。そこにですね、新しい住宅街、できたでしょう。しばらくスーパーがあったけど、二〇年くらい前まで、中学校があったんですよ。吸収合併されたんですがね。ぼくはそこの最後の卒業生なんです。
そいつは、ちゃんと人間の名前を名乗っとりましたよ。ナンだったかな……ナナシ、とか、そういう名前だった。
名前は忘れてしまいましたけど、ちびで色白で、でっかい目をしていてね。人気者でしたね。ほら、クラスに一人はいる、やたらと声の大きいやつ。いつもピョンピョン跳ねるみたいに駆け回って、女の子とも仲が良かったっけなあ。
そう……「クウちゃん」と呼ばれてました。
クウちゃんはクラスのお調子者で、末っ子気質。何かといえば「クウちゃーん」なんて、教室のあっちこっちに呼ばれて行って、チヤホヤされちゃって。みんなより頭一つ小さいモンだから、可愛かったですよ。でも意外と鋭いことも言ったりして、一目置かれていたところもあると思います。
ある時……部活が無かったから、テスト週間だったのかな。
学友とクウちゃんを交えて、夕方まで居残りしていたんですよ。
お喋りしていたらねえ、キンコーンって、四時の鐘が鳴ってね。そうすると、今しがたまで会話していた声が一つ足りないことに気付くんです。
学校が終わると、四時には学校から消えてるんです。そう、パッタリと。日が暮れるころには、お喋りしていたはずなのに消えている。放課後、仲のいい誰かと帰ったり、遊んだりしているってわけでもない。
ぼくは不思議に思うより先に、腹が立ちましてね。だって、薄情じゃあありませんか。一言も無く、先に帰るなんて。
友達には、「きにすんな」って言われましたよ。
……仲のいい連中はみんな慣れたもんで、「ああ、あいつ帰ったんだな」とまあ、こんな感じなんです。
ぼくには、モヤモヤしたもんが残りましてね。
ぼく、陸上部で100メートルの走者だったんですけど、陸上部の短距離走者のメンバーって、校門の手前にあるグラウンドの一角で、ライン引いて練習するんです。練習しながら校門がよく見えるんですよ。
校門は、裏門と、グラウンド側のこの表門と、二つあるんですが、裏門って呼ばれてるほうは、車や業者の搬入口に使われとってね。登校の時は開くんですが、下校時は閉められとるんですわ。
だから、帰るとなると必ずこの表門を……ぼくの前を通るはずなんですね。
ぼく、クウちゃんが帰っとるところを見たことが無かった。こうなると、意地でも帰る姿を見てやろうと思いました。
陸上部の男なんて、着替えはそこらの校舎の陰ですわ。心なし急いで、パーッと階段を下りて、着替えて、グラウンドに出るころには、まだ他の生徒は教室で駄弁っとります。ぼくはこれでもスポーツ少年やったんで、誰より早くグラウンドに出とった。友達にも頼んで、クウちゃんを教室に引き留めてもらったりしてね。
そうして注意して一週間……二週間……見てみましたけれど、やっぱりクウちゃんが帰っとるところは見かけないんです。
おかしいでしょう?
でも、本人に聞くのは憚れて……そうこうしとるうちに、三年生の秋になりました。
その年で、もう学校が無くなるゆうんは決まっとったんで、「最後に何かしようか」いうことになりました。なんせ最後の三年生ですから、華々しく学び舎の最後を飾ってやりたい。
そこで「学校の歴史」をテーマに、発表会をしよう、となりました。
ぼくらのクラスは、歴代の卒業生の写真を使って、「卒業アルバム」を作ったんです。集合写真の顔だけ切り取ってね、大きな方眼紙に貼って、学校の廊下の壁に長い長い「歴代の生徒たち」の顔が並びます。アルバムとは名ばかりですね。
保管されとった古いネガを使って、新しく写真屋さんにお願いして、山のような顔写真が段ボールいっぱい、上がってきました。
これを分類して並べる、張る……それだけでも、たいへんなことでしてね。
作業中、ぼくは「アレッ」となりました。
オンナジ名前があるんです。
例えば……第12期生と、第32期生に、同じ名前があるんです。ついでに37期生にも。……ぼくら第48期生にも。
クウちゃんの名前が、リストにいくつも載っているんです。紙魚虫の虫食いみたいに、ぽツ、ぽツ、ぽツ……って。
……最初はね、偶然やないかとも思ったんです。たまたま、この地域に多い名前なのかもしらん、ってね。でも、リストと写真を並べて息が止まりました。
オンナジ顔ですよ。
男だったり、女だったり……でも、判子を押したようにオンナジ顔。色が白くて、ぐりぐり大きな目をしてて、口をニイッと大きく開いて笑っている……見慣れたクウちゃんの顔です。
どうやら気づいているのは、このぼくだけらしかった。そうなると、指摘もできなくって。
誰ンも言えなくって、ナンだかんだ卒業の日になりました。全校生徒、100人あまりの卒業式は、つつがなく終わって次の日です。
出来るやつだけ学校に来て、掃除をすることになっとりました。
べたべた張り付けた方眼紙を剥がして、椅子や机を体育館に運び出して、最後に黒板に落書きをして……。九時過ぎから集まって、昼過ぎを境にポツリ、ポツリと、帰るやつが出て来たんですけれど、ぼくはどうしても、クウちゃんの顔がちらついて離れなくって。けっきょく夕方までいたんです。
カーテンの取り外された窓から、黄色い西日が教室に差して、桃色の鱗雲が、薄く浮かんでいました。西の空は、もう紺色。
キンコーンとチャイムが鳴ったんです。最後に気を利かせて、先生が鳴らしてくれたんですね。
ふわっと、窓の外に、白いものが見えました。蜘蛛の糸を束ねたような、か細くって、きらきらした何か。
……こう言うと、美しい光景でしょう? でもぼくは、総毛だって立ち上がりました。……ゴロン、ゴロン、ゴロン……外で太鼓のような音がします。雷でした。何かが『来た』……ぼくはそう思ったんです。
背後から声がしました。ナンて言ったのか、聞き取れませんでした。
扉はぴっちり閉めてありました。開いていたのは、窓だけです。ちょっと目を離していた間に、東の空からどす黒い雲が湧いてきていました。
振り返ったそこに、白い着物が見えました。
ぼくはそこで、『雲児』に逢ったのです。
……え? 話はそこで終わりかって。
ええ、これで終わりです。何を話したか? それは言えませんよ。約束ですからね。
言ったでしょう? この街の子供は、一度は雲児に逢うって。
雲児に逢った子供は、必ず大人になれるんだそうで。
だからとても縁起の良いものなんですよ。でもそン代わり、こいつと話したことは秘密なんです。話せるのは、約束が果たされて大人になってから、雲児に逢ったことがあるやつにだけ……。
ぼくはね、きみに話しかけてみてピーンときた。
あなたも雲児に逢ったことがあると見た。違いますか?
え? 違う?
あれ。違ったかあ。
……え? なんです。そりゃあ面白そう。
じゃあ次は、あなたの話を聞くとしましょうか。
◐
……いやあ、たいした話じゃあないんすよ。ほんとに。
今思ったら、不思議だなあってもんで。
これ、実はつい先週のことなんです。オチもつかない進行形のハナシ。
おれ、ほら、見てのとおりな感じなんです。昔から、わりとヤンチャしてさあ。今も、まあ、いちおう働いてはいますけど。……はあ、いや、何の自慢にもなりません。給料安いですし。
おれ休みが不定期なんで、週に一日、休日の前日だけ、日を跨いで朝までハメを外して遊ぶ日って決めてるんです。だいたいが平日ですね。その日は木曜でした。
駅前の……エーッと。丸いポストがあるところ、知ってます? ……いや、本当にあるんですって。ポストのくせに丸いやつがあるんです。近くに行ったら、騙されたと思って寄ってみてください。タバコ屋の角に、本当にあるんで。
……ほら、ここらってけっこう開発が進みましたけど、まだ駅前少し外れると、歓楽街からいきなり田んぼになったりするじゃあないですか。
おれの言ってる丸ポストのらへんも、踏切を境にしてそんな感じなんすよ。住宅街があって、家との間に畑やビニールハウスがある。その踏切渡って、すぐのところに、用水路みたいなコンクリートでがちがちに固められた川と、石の橋が架かってるんです。おれの家、その橋がベランダから見下ろせるアパートなんですよ。
その日は昼前に仕事が終わったんで、飯食って、布団でも干すか~って、ベランダに出たんです。
そしたら橋が見えるじゃないですか。そこに女が立ってたんですよ。
夏ですよ。炎天下の昼。道歩くと、アスファルトの上にユラユラ蜃気楼できるくらい、暑いときですよ。
真っ白の天使の輪ができてる艶々の黒い髪を見下ろしてさぁ、おれ、帽子も被んないでよく立ってられんなあって。
しばらく見てたら、その女、フッと顔を上げたんです。欄干に肘ついて、おれのほう見上げてね、ニコッと笑ったんですよ。
……可愛かったなあ。ふわっと白いワンピースの裾がなびいてさ。照り返しで、肌が真っ白。そこに真っ黒いおっきな瞳があって。
そんでおれ、冷蔵庫に入ってたスポーツドリンク持って、下に降りてったんですよ。
……ま、ちょっとした下心っすわ。
これで近くで見たらブスだったらヤだなって、頭の隅っこでは考えてたんすけど、「いや、きっと可愛いぞ! 」って期待しちゃう方が大きくて。
待ち合わせっぽかったんで、いなくなっていたらヤダなって、駆け足っすわ。
……行くとね、確かにそこに人影があるんです。
欄干に肘ついて、真っ黒い後ろ姿が一人だけ。
近づくとそれ、男なんすよね。
……拍子抜けですよ。
おれ、男ってわかったとたんテンションめっちゃ下がっちゃって、「暑いなかで何してんだろ」って。
帰ろうって戻ろうとしたとき、ちょっと気づいたんです。
その男、このクソ暑い中で真っ黒い服着てるんですよ。手首通り過ぎて、親指の付け根までスッポリの長い袖の、黒のセーター。
いや、恰好はおかしかったけど、身綺麗で、お化けっぽい汚れた感じはしなかったです。季節が夏じゃ無けりゃあ。
なんか変な奴がいるなあって、おれ、ちょっとだけジッと見ちゃったんですね。
そしたらそいつ、振り向きやがった。……振り向いた顔、どんなだったと思います?
……真っ白でさぁ、墨で引いた黒い目と、赤い唇でした。
能面、っていうんですかね。オカメみたいな面。
材料は木か何かなんでしょうけど、濡れた石みたいな感じで、今にも水が滴りそうな……なんか、ぬるっと照るような質感で。
その能面がさぁ、ニヤッて、笑ったんですよ。
びっくりして固まっていたら、「ふふふ……」って今度は女の声がして。
……そんまんま、橋渡ってどっかに行きました。
おれ、しばらく呆然としてたんですけど、だんだんマジで暑くなってきて……いや、暑いのを思い出したんですね。
そんで、気づいたんです。
おれ、身長が壱六五センチあるんですけど、男にしちゃあ低いでしょ? あの橋の欄干に、女みたいに肘つこうとすると、できないんすよ。首のあたりに、欄干が来るから。
……あの女、どんだけ大きかったんでしょう?
そう……それでね、まだあるんです。ゾオッとしたこと。
……おれ、あれから夢を見たんですよ。
おれは、あの橋を上から見てて、橋にあの女が立ってる。それだけの夢。
あの時と違うのは、時間が昼じゃあなくって、夜だってことです。グワッグワッグワッて……ほら、田んぼが近いから、蛙が鳴いてるのや、部屋が蒸し暑いのまで、リアルで。
……橋の脇に、街灯があるんです。それがスポットライトみたいに女を照らしてるから、よく見えた。
女は、欄干に肘をついて、おれに背中を向けています。艶々した黒髪に、街灯の青白い光で輪が出来てる。
いつのまにか、おれが見下ろしているのは、深夜の住宅街じゃあ無くなっています。そこは緑の草が茂っている川沿いの田舎道で、あの橋がかかっている川も、魚がいそうな小川です。橋の向こうに鬱蒼と黒い木の影があって、山影らしきものも見えました。
風がね、えらく冷えてるんです。……いや、ただ寒いだけじゃあなくって、澄んでるっていうんですかね。
おれは恋人にするように、女に向かって手を振っています。オーイ、オーイって。
女は振り向かないで、ジッと川を眺めています。
おれはだんだん不安になって、怒鳴るみたいに叫ぶんです……「まだ行くな」とか、「おれもすぐに行く」とか、思ってもないことを。
まるでおれの体を、着ぐるみみたいに誰かが着ているような感覚でした。おれは、もう怖くって……だって、あんな女のところなんて、行きたくないんですから。
汗だくになって、のどがヒリヒリしてくるころ、女は、ゆっくりと振り向きました。
……それがまた、やたらと可愛いんですよ。
夢の中のおれは、あの女にゾッコンなんです。
おれは、ぴたっと黙って、ジイッと女を見ます。女の名前を呼ばなきゃあいけない……そう直感して、おれの体は口を開くんですが、なんにも出てこない。
そりゃそうですよね。だっておれは、女の名前なんて知らないんですから。
おれは困ってしまって、つい尋ねました。
「あんた、なんていうの」
すると女は、「さあ」って、首をかしげるんです。
「さあ……なんやったかなぁ? 忘れてしまいました。マツカゼとでも、マゴジロウとでも、お好きなように呼んでくださいまし……」
その声は、蛙や虫の音の後ろから割り込んで、ハッキリとおれの耳に届きました。一言一言を吐くたびにかかる息と、そのにおいまで感じました。
おれが覚えてるのは、ここまでです。そのあとはモヤモヤしていて、どうにも情景が曖昧で。
……でも、おれはけっきょく、夢の中で女の名前を呼んだンでしょう。
だってあの女、ときどきあの橋の脇で、おれの部屋のほうを見てるんですよ。
まるで、待っているみたいに。だからなるべく、ベランダから顔は出さないようにしてるんスよね。
……それにしても変な名前だなあ。夢の中のおれは、何の疑問も持たなかったんですかね。
マツカゼに、マゴジロウですよ? ジロウって、男につける名前ですよね?
◐
おうおう、兄ちゃんたち邪魔するよ。面白い話をしているねえ。
オイちゃんには分かるよぉ。ウンウン……え? 何がって?
その、マゴジローっていう女の正体さぁ。
孫次郎ってのは、能面の名前さぁ。孫次郎ってのは面を打った作者のことでね、そいつが嫁を偲んで打ったから、孫次郎っていうのさ。別名がオモカゲっていうんだから、ちょっと物語を感じるだろう?
女の面っていうと、いくつもあるんだがね。孫次郎は、その中でもとくに美女に使うやつでさ。花のオトメって感じじゃあなくってね、色っぽいオトナのオネイサン、って年頃の面さね。
それでよう、こいつを使う能面の演目の一つにだね、松風というものがあるんだよ。
……そ、松風。松風だねえ。
これがねぇ、姉妹の女幽霊の話なのさ。姉が松風、妹が村雨という。舞台になるのは夏の終わり、秋にかかった寂しい海辺……海女の姉妹の悲しい恋のお話なのよぉ。
やあ、粋なお化けじゃあないか。
いなくなった妻を偲んだ面。
いなくなった男を恋しがる女幽霊……。
いやあ、オイちゃんもそのお化けに会ってみたかったなあ。素敵な出会いをしたねえ。
……え? ちっともステキなんかじゃあ無いって?
そんなこと言うと、もったいないよ。世の中にはねえ、怪談らしきものにチットも出会いのない人だっているんだから。
オイちゃんはねえ~、いわゆるレイ感ってやつでねえ。そのかわりか昔っから勘だけは良くって、変な夢を見るんだよ。
最初の夢は、よおく覚えているもんだなあ。
夏の昼間だよ。おいらは五歳だった。これでも近畿の、おおきな御宅の坊ちゃんだったんだよ? おれは縁側に座布団敷いてさあ、ウトウトしてたんだ。
そしたら、どんな夢を見たと思う?
そこは知らない家なのさ。狭苦しいアパートみたいな八畳一間で、台所がすぐそこって部屋。縁側なんて無いし、黒いランドセルがほっぽってあって、窓の外ではプピ~ッて豆腐屋のラッパ。
テレビでさ、お笑い芸人の出井ちゃんって知らないかい? そいつがバイクで跳ねられたっていう、ニュース番組を見てんのさ。そのテレビを背景に、髪が三十センチはボウボウ伸びたうちの母ちゃんがさ、ご飯よそいながら言うんだね。
「明日は長靴履いてってね。靴下はスキー用の置いとくよ」
夢の中のオイちゃんはね、茶碗をもらいながら、頭の半分で思うのさ。
「ああ、なるほどなあ。……これは夢だぞ。いいか、俺。これは夢だからな……」
そこで、パッと目が覚めた。
フホホ。意味が分からんって顔してる。
オイちゃんも、長いことワカランかった。でもねえ、八つのときに親父がいなくなってさあ、縁側のある家から八畳一間のアパートに引っ越しちゃった。
あの洒脱だった母ちゃんが、散髪も行く余裕も無くなっちゃって、長い髪をボッたく束ねる様になってた。
その年の冬、二月なのにやけに雪が降ってさぁ、十年ぶりの降雪よ。夕飯どきに、お笑い芸人がバイクでスリップしたっていうニュースが流れて、母ちゃんが言うのさ。
「明日は長靴履いてってね。靴下はスキー用の置いとくよ」って。
その瞬間を、なんて言ったらいいのかしらねぇ。
脳みそが二つあるみたい、っていったらいいのかねぇ……。
過去のおいらが、今のおいらの目ん玉を覗き見てんのさ。それで、頭が二つ、同じ景色を見て、てんでばらばらに考えてる。
予知夢なんて知らない頭と、おいらはこれを見たことがあるぞ! っていう頭がある。
おいらは思う。
「ああ、なるほどなあ」それで覗き見ている自分に向かって、こう考える。「……これは夢だぞ。いいか、俺。これは夢だからな……」
……分かるかい?
おっ、信じてないね?
ソンじゃあヒトツ、予言したげるよぉ。
……あの茶髪のアルバイトのお姉ちゃん。あのお姉ちゃんが、入口の戸の前を通り過ぎる。そうすると、二人組のカップルがやってくる。男は金髪で、髑髏が蛇咥えてるピアスしてるだろうね。女はピンクとオレンジの花柄のタンクトップに、黒いジャケットだ。髪は黒髪で、前髪がカッコよく斜めになってる。ハデだけど釣り目の美人さんだね。泣きぼくろがあるはずだよぉ。
男が言うよ。「ボックス開いてますかぁ」
店員さんがこう返す。「本日のラストオーダーは終わってしまいました」
さあ、いつかな? でも、今日だと思うんだよね。夢では、オイちゃんの正面に兄ちゃんたちが、今の、そう! オンナジその顔して座っていたからさあ。
……おや、言った先からだ。
どうだい? 本当だったろう。
……いやいや、警戒せんでくれよ。
いやあ~、オイちゃんの知り合いの知り合いがだねえ、どうやらその女幽霊を探してンのさぁ。実を言うと、それで話しかけたのさ。
ホントウだって。神に誓うよ。閻魔様に舌抜かれたっていい。
……フウン。信じない。
じゃあさあ、騙されたと思って、この番号に電話だけかけとくれよ。電話一本で事が解決するんなら、安いもんじゃない。
電話の相手は、ヲツゴ、という親父だよ。でも、まず出ないだろうから、留守電に入れときゃあいい。
「モシモシ、うちに、オモカゲがいるんですが……」ってさ。
住所? いらないよ。あんたの電話番号も、言わなくっていい。ぶっそうなご時世だ。言いたくないだろう? 電話も公衆電話でいいからさ。
「オモカゲがうちに出ます」これだけでいい。
いやあ、そうは言っても、あんたは掛けるだろうねぇ。だって、夢で見たからね。今夜にでも掛けるさあ。
なんでって?
だって兄ちゃん、話しちゃったじゃない。
怪談はねえ、呼ぶと寄ってくるんだよぉ。おっと、これは予言じゃあないからね。そういうもんだって知っているだけ。
じゃあ、伝えたからね。
また会いまショ。ンフフ……これは予言だからね。
◐
あれ! この前の! 偶然じゃないっすか。
ああ……あの話……。実はあれから、あの橋の前のアパートは引っ越しまして。
……はあ。いや、スッキリ片付いたんですよ、あの件は。
あっ、あの胡散臭いオヤジの電話ですか?
……ウーン。じつはねえ。けっきょく掛けたんですよ。掛けてからは、スッポーンと解決しちゃいましたね。まったく、拍子抜けしたくらいです。
いや、実はホントウに、その日のうちに、あの女が夢に出てきちゃって。それで枕元のケータイでピピッと。
夢でさあ、「あたしの名前呼んでェ~」って、繰り返し繰り返し、耳の後ろあたりで声がしてさ。あんまり怖いもんだから、いい年して半泣きですよ。
あ、いや、でも、住所とか名前とか、そういうのは怖かったんで、「オモカゲはうちにいます! 」ってだけ。だから解決したのは、あの後すぐだったんです。
……そしたらさあ、ドンドンって玄関を叩く音で目が覚めて。
まだ真っ暗なんすよ。時計を見たら、二時十七分。近所迷惑じゃないっすか。隣の家は怖いおばちゃんだし、慌てて扉を開けたら、子供がいるんすよ。
おれが「あんた誰」って言ったら、そのがきんちょが、えらく訛った言葉で、
「ヲツゴんところの、ナナシマいいますけえど。オモカゲはおりますか」って。……いやほんと、こんな感じです。
あの……どうかしました? ま、いいや。
夢の中でかけた電話でも、繋がるもんですねえ。そうそう。電話かけたまでが夢だったんです。
うち、ワンルームしかないんで、玄関から全部見えるんすけど。
そのナナシマってガキ、ぐるっと部屋ン中を見渡して、まっすぐ押入れ開けて何か叫んで……いや、おれには、訛りがきつくってよく分からなかったんですけれど、親が子供を呼ぶみたいに「帰るよ」とか、そういうことを言ったんじゃないかな。
おれは、声にびっくりして黙ってんです。だからその子が、部屋の中に勝手に上がり込んでも、なんも言えなくって、まっすぐ押入れを開けましてね。そこ、クローゼットにしてるんですよ。ついさっき、寝入る前にも開けた場所です。
そこからさ、あのマツゴローとかいう面を取り出されちゃあ、ぽかんとしますよね。
そいつはそのまんま、面を片手にぶら下げて「お邪魔しましたあ~」って笑顔で帰っていきました。
気づいたら朝! あれから女もあの夢も見ていません。
でもほら、なんか見ず知らずの輩に家を知られてるかもっていうのが怖くって、引っ越すことにしたんすよ。
それで、押入れもとうぜん空けるじゃあないっすか。
そしたらこれが……。
ああっ! 引かないでくださいよ! おれも処分に困ってるんです! だって、あの電話番号のメモ、失くしちゃったし……。お兄さんも、覚えてないですよね。
ねえお兄さん。これ、燃えるゴミに出しちゃっていいもんすかね……?
◐
オンヤア……お兄さんがた。いつぞやの……あれから景気はどうだい?
ウン……ウン?
おいらを探していただって? ほうほう……なるほどねえ。
話は分かった。
フム、そりゃあ難儀だぁ。しかしだね……わたしも毎度、慈善で助けるわけにゃいかないんだよねえ。
お、怒りなさんな!どうどう……エッ、わたしがグルなんじゃあないかって。
……そりゃあ、この世間は狭いけれどもサ、そんなわきゃあ無いじゃない。
なんだって、あんたらを騙すのさ。電話代だって、こっちは得していないんだから。
わたしがお願いしたのはだね、君たちにわたしの噺を聞いてほしいってことなのさ。
題名は……そうだな。孕み人魚と惡の華。
どうだい。ロマンチックなタイトルだろう。ふぁんたじっくな物語さ。エ? 禍々しいって?
ジャア、ヨミノソトとでも、副題をつけようか。夜に水で『夜水よみのそと』。いいだろう? 文学っぽい。綺麗な題だ。このグランギニョール的な残酷劇にふさわしい。
ウン、そう、噺を聞いてもらえるだけでいい……聞いたあとで、ナンヤラホイと言掛りをつけたりはしないよ。肴のつもりで、一晩付き合ってくれたら良いのさ。
……好し好し。じゃあ、オイちゃんからの肴だよ。
◐
そこの空は、いつでも赤い色をしていた。
もうずっとここにいるけれども、それが果たして夕日なのか、それとも暁なのか、知らなかった。
川の方を向いたなら右の手に、あの石ばかりが丘になっている方を向けば、左手になるのが必然であり、今日きょうびまで疑問に思ったことはない。
わたしは自分以外の人間には興味がなかったし、他のやつらもそうだと思うけれど、さて、今日の客はちょっとおかしいやつだった。
向こうに見える一本きりの大きな木に向かい、白い長い影が、ずうっと向こうまで続いている。あの列は、わたしが知る限り途切れたことがない。近くで見ると分かるのだけれど、あれらはすべて白い着物を着た人間たちである。彼らは川を渡りに来ているのだ。わたしはいつも通り、白い影どもを見送りつつ、船尾を押して水面に滑らせていた。
『そいつ』は、ちょうどわたしが船を水に乗せ、フゥと背筋を伸ばした時に声をかけてきた。黒髪の下に、白い顔が見える。ずいぶんと若いこと以外は、他のやつらと何ら変わりは無い。
独特の海の潮のような香りがぷうんとにおう。血のめぐりを血潮というように、彼らの身体にこの香りが纏わりつくのは、その血を辿れば、わだつみを母とするからなのだろうか。
どうやら、この船に乗りたいらしいが、さてどうしたものか……。こいつは分かっているのだろうか、と怪訝に思った。
川原にぽつねんと一本の大樹が見える。あれは関所のようなものである。番をするオババがおり、わたしは彼女に指示されて、白いやつを対岸まで運ぶのだ。あの木はあんまりにも大きいので、この川原じゅうどこにいたって見える。あれを目印に、必ずオババのところに辿り着けるという寸法である。
わたしは彼女の許可が無いと乗せられない。わたしがそう言うと、そいつはにやりと笑って「いいんだよ」と言って、わたしを急かした。
あんまりにも急かすので、わたしは困ってしまって、駆け足でオババに窺いに参ることにする。
『そいつ』を船の前に置いておくわけにもいかず、(泥棒をして、向こうにただで渡ろうとする不届きものは珍しくないのだ)仲良く川原をざりざり、歩くはめになった。
気が重かった。
わたしは要領が悪いので、時々こうしてオババに分からないことは尋ねに行くのだけれど、そのたびにオババは邪魔なわたしに向かって怒鳴り散らすのである。
しかし勝手なことをすると、それはそれで「なんで聞かなかった」と、拳骨まで食らうので、やはりわたしの立場としては、窺いを立てずにはいられないのだった。
オババは羊飼いのように白いやつらに囲まれ、迷える羊たちに向かって怒鳴り散らしては、川を渡れと水に突き落としていた。
今日も忙しいオババは、鬼のような顔を鬼より怖くしてわたしを睨み、『そいつ』を睨んだ。
「なんだい! 」
ああ、ええっと、その……。わたしはどう説明しようかと僅かの間だけ言いよどみ、睨みを強くしたオババの迫力に押され、あるがままを、なるべく分かりやすく語った。
すると驚いたことに、オババは僅かに目を細め、品定めするように『そいつ』を見てから、私に向かってにっこりと笑ったのだ。
「ようし、分かった。話は聴いているよ。ゼニもいらない。乗せておやり」
わたしはびっくりしてしまって、亀のように首を短くして、「いいんですか」と繰り返し尋ねた。すると短気なオババは、くるりとまた鬼の顔に戻るや「早くいきな! ぐずぐずしてるんじゃあないよ! 」と、わたしの尻を強く叩く。
わたしは尻を抑えつつ、首を傾げ傾げ、船の元まで駆け戻り、もたつく“そいつ”の腕を取って船に乗せてやった。
澄んだ水に膝まで浸かり、船を押し出した。やがて濡れた足を振りながら櫂を手に、船頭に立つ。川は岸のほんの間際まではうっすら透き通っているけれど、この身の身長ほどまで漕ぎ出せばすっかり黒く濁りきって、虫か蛇の群れのように蠢いている。
船頭のくせにと情けなくて誰にも言ったことが無かったけれど……いや、そんなことを明かせる人間がいなかったのだけれど……わたしはその水が、そしてその川底が、怖くてたまらなかった。
当たり前のことだけれど、川底だけを取り出して見ることだなんて出来るわけがない。そこにはどんな生き物がおり、どんなものが沈んでいるのか。こんなに真っ黒いわけをわたしは知らない。
これは試練の川だ。あの白い列の共々が足を踏み入れるこの水が、時に沈んでいくこの川が、けして浮かんでこない者どもを――――亡者を喰っているのだろう何某かの生物が、わたしはいつだって、たまらなく恐ろしい。
その、ひしめく蟲の間に櫂を差し入れる瞬間は、いつもぞくりと肌が泡立つ。川底を強く殴りつけ、わたしはあっという間に川瀬を抜け出した。
ぽつり、そう零すと、奴はウンと頷いた。
「ぼくも思うとりましたんや。ほうか、ここは、そないに長ぅおっても怖いとこにや変わらんにやな」
そう、わたしはこんなにも怖いのだ。もっというのなら、ここにいる人たちにも恐怖を感じる。オババが怖いのはもちろん、うなだれて列に並んでいる白い人間たちも、また恐ろしい。もちろん、こいつも。
「不気味な川やァな。しかもえらく広い」
そいつはぽつり、そう呟いた。
わたしは自分に語りかけているとすぐに察したけれど、聞こえないふりをして櫂を漕いだ。
きしきしとするのは、櫂かそれともわたしの腕か。かつんかつん船底を何かが叩くも、いつものことだと耳をふさぎ、わざと乱暴に流れをかき混ぜた。
「船頭さん、船に乗ってどれくらいになるのン? 」
名指しされてしまっては、無視をする方が気に悪い。岸までは遠く、旅路はまだ長いのだ。
わたしは、さあどれくらいかね。もう忘れたくらい長くかな。というようなことを言った。
「フウン。ねえ、船頭さん、ちょうっとお話しましょうや。暇なんです。ええでっしゃろ」
わたしは駄目だとは言えません。首を垂れて、わたしは小さく言った。
「ふふふ。意地イ悪いこと言わんでくだしゃあ。これでもぼくはね、うつしよにいるときゃあ、それなりに長いこと色んな経験をさせてもろたんです。ね、いいでしょ? 聴いて下さいよォ」
これじゃあ、意地が悪いのがどっちだかという話だ。
仕方なしに、わたしは櫂を置き、船底に座した。船が穏やかに流れだし、客人はぎょっと身をすくませる。少しだけ胸がすく。ここまで来ればどうせ勝手に流れるだけなのだ。やがて岸に着くのだと、わたしは何でもないように取り繕って、言ったやった。客は問う。
「どんくらいかかる? 」
さあ、だいぶかかるとは思うけれど。
「しやなあ……じゃあ、ちょっとそこらで人に聞いた話。むかしあった本当の話や。取るに足らない不思議な話―――――」
奴は語りはじめる。
「ある日、天女の会合があった。ああ、天女といったって、ぼくらが勝手にそう呼んどるゥだけやあで。空を駆け、天を飛びぬけ、水の底で息ができて、火の中で歌を歌うことができんねや。彼女らは何千年ぶりに顔を合わせて、それぞれの話をした。「そういえば」と、一人が言う。「そろそろあの子たちはどうなったカシラ」とまあ、こんな感じやな。実はそう多くない天女たちのうち、二人がいなくなっていた。彼女らは姉妹で、人間と一緒に暮らしたいがために、罰を受けて追放されたんやった。「アラ、すっかり忘れていたわ。そういえばそうだったわね」そのころ地上には、二人の人間がおった。一緒に育ったけれど、兄弟ではない。二人は一緒に暮らしていたけれど、恋人というわけでもなく、友達でもない。こいつらの名前は、『クモジ』と『カラフネ』という」
奴は指で、船底に字を書いた。
「『くものこども』と書いて『雲児』、『からのふね』と書いて『空船』。
子供でもなければ大人でもなく、男にも女にもならない。半分だけ人間で、半分は別の何か違うものだ。年を取らず、子供のまんま。いつかの昔に、泥の中から出でたもの。この二人は二人だけの秩序をもって、昼と夜とを生きている。
そんな彼らを見下ろして、天女は言った。
「もうそろそろ、いいんじゃあないかしら」……ナンて、ね」
◐
それは何の話?
と、白けておっさんに聞きそうになってやめた。
隣のお兄さんが、隣で前のめりになって聞き入っていることに気が付いたからだ。
このお兄さんと知り合ったのは、つい先週のことだった。カラオケのあるスナックとバーの中間のような店で、隣で上手に一番好きなバンドの曲を歌ってくれたお兄さんに、酒の勢いもあって、おれの方から声をかけたのだった。
ふだんなら絶対に会話しないであろうタイプの人間だ。相手もそうだっただろうと思う。
それでも話が弾んだのは、やはり酒の力と、共通の好きなバンドの話題があったこと。それとあっちの方が、おれに何か感じるものがあったようだった。
目の前のおっさんは、老けた四十か、もしかしたら五十六十いっているかもしれない。肩のゆったりとした黒い上着の下に、深緑色のセーターが見える。丸くて頬に点々と染みの浮かぶ浅黒い頭に、ブドウ色のハットを被っていた。
おっさんは低い声色を作って、前歯が一本抜けている口で、子供のような邪気の無い笑顔を浮かべてツラヅラ話し続けている。
そんな胡散臭いおっさんの話にすっかり心奪われた様子で、連れのお兄さんは、おっさんの歯抜けの間抜け面を凝視しているのだ。
なんとなく気味が悪かった。
すぐ後ろのテーブルでは女子大生らしき集団が彼氏の愚痴を言っていたし、右隣の衝立の向こうでは、二人組のサラリーマンが恥も無く風俗の感想を言っている。酒気の混じった生臭いにおいが、イマイチ冷房の薄い店内に充満していて。
……どうしよう。帰りたいな。
そう思うのに、耳はおっさんの声に傾けられていた。
それに今帰ったって、今ここにあるアレの処分が……。
おれは仕方なく、もぞもぞと深く椅子に座りなおした。
さて。読者に最終話までの問題です。
『黄泉の船頭の正体は誰でしょう? 』
『預言者はなぜ駅前の居酒屋にいたのか? 』
『タイトルの“惡の華”とは、どの人物のことを指しているのか? 』
第三章まで、怒涛の伏線パレードになります。
挿絵、タイトル、登場人物の描写、発言等が、主な伏線です。
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この物語は、固く結ばれた糸玉のように絡まっています。
暗闇で揺れる水面に目を凝らして、沈んだ真実を解きほぐしてください。
タイトル元ネタ/ししど晴天大迷惑(米津玄師)
次回予告『かもしれないのうた』