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秘密の恋の甘い味 ~ケーキ×乙女ゲーム×スイーツ男子~  作者: チャーコ


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21/36

21 好感度上昇

 八月が終わり、九月になった。九月になると、ハロウィンの支度が始まる。ヨリコさんがダンボール箱を抱えてきた。


「ハロウィンの品物が送られてきたよ、カオルちゃん」

「そこの引き出しにしまってください」


 さて、ハロウィン戦略はどうしようか。お馴染みの選択肢が現れた。


『1 黒岩エイジに昨年のハロウィンについて問う

 2 上杉タクヤにハロウィンの売り上げが上がる発想を尋ねる

 3 中峰コウキにレモン店のハロウィン展開について質問する

 4 萩尾トオルにハロウィンの関心度を伺う』


 私は──当然2のタクヤくんを選択した。好感度が僅かでも上がる可能性があるし、彼の発想力は悪くない。『母の日』は事実大成功だった。


 遅番で来たタクヤくんに早速発想を尋ねてみる。


「今度のハロウィンの売り上げが上がる発想ってあるかな?」

「えーと……」


 彼はお店全体を見回し、冷蔵ケースの上も見た。


「もうハロウィン商品はきているんですよね? 昨年は商品が足りなくなったのでレモン店から分けてもらいました。今から他店に分けてもらえるよう掛け合うべきでしょうね」


 年々ハロウィンの認知度は上がっている。品切れを起こすのは避けたい。


「わかった。他のお店から分けてもらうよ」

「それと……お店全体をお化けや魔女の雑貨で飾りつけるのがいいかと思います。ポップはまた俺が作ってきますから」


 そこまで話したとき、ふと以前にベトナム料理店でユラちゃんとタクヤくんと一緒になったことを思い出した。


「レモン店から商品を分けてもらうって聞いたけど……前に百貨店の料理屋さんで一緒になったよね? なんでユラちゃんと来ていたの?」

「それは……」


 彼は一瞬口ごもり、観念したように話し始めた。


「あの前の日、浅岡店長がお店で百貨店のことを調べていましたよね。なんで男物のシャツのことを調べているのか不思議に思って行ったんです。柿江は勝手に俺と来ただけで……」

「なんだ……」


 私は話を聞いて脱力した。ユラちゃんは勝手にくっついてきただけなのか。私は女なのに男物のシャツを調べていたら、何か騙されているのかと思うのかもしれない。とりあえず今は、ハロウィンの話をしている最中である。


「とにかく、ハロウィンのお話ありがとう。雑貨屋さんに行ってみたりするよ」

「『母の日』とほぼ同じ発想で申し訳ありません」


 そして──タクヤくんの周りをピンクの花びらが舞った。やった! 好感度が上がった!

 私は張り切ってバナナ店の生稲カズエ店長やパイナップル店の宇野シロウ店長に商品を分けてもらえるよう頼んだ。わざとレモン店の中峰コウキ店長は避けた。また何か「貸し」にされるのは嫌である。

 雑貨屋さんでお化けや魔女のハロウィングッズを買う。ハロウィンシールも売っていたので、それも買い求めた。

 九月終わり頃からハロウィンの飾りつけを始めた。ヨリコさんと飾りつけをしているのは楽しい。


「タクヤくんの好感度が上がったんだって!?」


 ヨリコさんが嬉しそうに訊いてくる。


「そうなんですよ。確かめてもらえませんか?」


 ヨリコさんは右手を肩まで上げた。男性の顔と数値が映しだされる。


『黒岩エイジ 好感度0

 上杉タクヤ 好感度55

 中峰コウキ 好感度45

 萩尾トオル 好感度0』


 タクヤくんの★マークが消えた! ヨリコさんと喜び合う。


「これでハロウィンが成功すれば、好感度は急上昇だね!」

「はい! 頑張ります!」


 ゲーム内でのタクヤくんのくっきりした二重の黒い瞳──現実世界の杉浦拓也くんの瞳と重なった。私は頭を振って、お化け商品にシールを貼った。


 ♦ ♦ ♦


 現実世界での【パティスリーフカミ】でもハロウィンの支度の真っ盛りである。かぼちゃのクッキーやチョコレート、飴などが飛ぶように売れていく。


「忙しいね、拓也くん」

「そうですね、浅岡さん」


 珍しく二人で休憩だった。部屋に二人だけにしては、距離が近くないだろうか。

 少し冷えてきたので暖房をつけようかとしたら、拓也くんに止められた。


「こっち来てください、浅岡さん」

「え? 何?」


 拓也くんに引き寄せられ、腕の中におさまってしまう。確かに温かいが……顔が熱くてたまらない。


「なんでこんなことするの……?」

「わかりませんか? 相変わらず頭悪いですね」


 口は悪いが、拓也くんの腕の温もりは落ち着く。彼は片手を離し、近くのメモに何かを書いた。私に手渡してくる。


屋烏之愛おくうのあい


「意味は調べなくてもいいですよ」


 つんとそっぽを向いた拓也くんの頬は少し紅色に染まっている。私は疑問に思っていたことを尋ねた。


「拓也くんは、どうして四文字熟語をよく知っているの?」

「俺は資格を取るのが好きなんです。漢検準一級とか」

「ふーん……漢検準一級って難しそう。拓也くんの他の趣味は?」


 彼は考える素振りを見せてから、そっと耳元で囁いた


「ヴァイオリンを弾くのも趣味です。下手なので内緒にしてくださいね」

「ええ~。それは聴きたいなあ。今度私がリクエストしていい?」

「まあ、俺が弾ける曲なら……」


 漢字やヴァイオリンの話をしながら、誰も来ない休憩室で私たちは二人きり寄り添っていた。


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