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3.帰り道(その1)

「あづい、溶ける」


みずきが死にそうな声を出す。

今にも倒れそうなぐらい、ぐったりとして歩いている。


時刻は午後16時。午後の授業が終わり、私たちは下校途中だ。

太陽はまだギラギラと光っていて、弱くなる気配がない。

まだ、6月中旬のはずなのに、既に真夏のような天気。

生ぬるい空気が肌に当たって、凄く心地が悪かった。


「はるか、アイスおごって」


不意に、みずきがはるちゃんに向かって言った。

みずきの顔には汗がにじんでいる。


「・・・」


しかし、はるちゃんは、みずきの方を向かず、文庫本に集中していた。

こういうときのはるちゃんは、何を言っても反応がない。

どんな本よんでるのかなと気になって、表紙にちらっと眼をやる。

むむ、いちご同盟?


「ねぇはるかってば」


「・・・」


「ちぇケチ。どケチ!しみったれ!」


みずきが口を尖らせながらそう言うと

またぐったりとしてしまった。

私は、少し可哀そうになってみずきに声を掛けた。


「あそこのコンビニでアイス買おうよ」


「おごってくれんの?!」


「んー」


私は少し考えるそぶりをしてみせる。

みずきが目をキラキラ輝かせ、羨望のまなざしで私を見ていた。


「どのうなの!ツカサ!」


「へへ、いーやーだーよ」


私の言葉を聞くとみずきの目から光が失われていく、

笑顔だった顔も途端に無表情になった。


「そ、そんななに落ち込まなくても...」


「私には...たった一つの希望だったんだよ!!」


どうやら本気でおごってもらえると思っていたらしい。

みずきが私の腰にへばりついて、涙ながらに訴える。

ちょっとだけ罪悪感。でも、暑苦しい、早く離れてほしい。


「あ、そだ」


ずっと文庫本に目を向けていたはるちゃんが声を上げた。


「ん、どしたの?」


私はイソギンチャクを振りほどいて、はるちゃんに声をかけた。


「うちスイカあるんだ、食べに来ない?」


「へースイカかー。私まだ今年食べてないや」


「ばあちゃんとお父さん、お母さん。家族揃って同時に買ってきてさ...合計3玉」


「ずいぶん多いね」


「でしょ、食べきれなくて困ってるんだ」


はるちゃんの家は妹を含めて5人家族。

流石に5人で3玉を食べきるのは難しいかもしれない。


「うおおおおおお!!!」


どこからか雄たけびが聞こえた。

声のした方を向くと、道端の木陰で休んでいたみずきが

サイヤ人のポーズで立っていた。


「ふっかーつ!!スイカ祭りじゃあああ!!」


大声でみずきが叫んだ。周囲に居た通行人がこちらをちらちらと見て

苦笑いしてる。凄く恥ずかしい。ぺジータ王子こいつを抹殺して下さい。


「はるかの家早くいこ!スイカなくなっちゃうよ」


「食べ物のこととなるとこいつは...」


「まあまあ、でも私もスイカ食べたいな」


「よーし、はるかの家に向け出発!!」


暑さから復活したみずきが出発の合図をする。

私たちは、はるちゃんの家に向かって歩き出した。

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