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一幅の絵

作者: neverdan

脳内に、一幅の絵がある。

それは色あせた淡い映像。だけどなぜか俺の脳から消えない。





小学一年生の時。女の子の転校生がいた。

父親の仕事の事情で、数ヶ月に一度引っ越し、転校しているらしい。

彼女の名を、N子としよう。

N子は背が高く、すらりとした細身で、顔は目がきれいで、可愛らしかった。

ちょっと気が強い彼女。俺は彼女をからかってげんこつをもらった記憶がある。




そして今から、脳内の映像について説明しよう。

それは、二学期の終わりだったと思う。

学期の終わりはロッカーにおいてある絵の具だの、習字道具だの、机の中のお道具箱だの、座布団だのを持ち帰る。


数日かけて荷物を持ち帰ればいいものを、俺はなぜか最終日まで荷物を持ち帰らず溜め込んでしまった。だから終業式の帰りは膨大な荷物になってしまった。

帰りは地域ごとの登校班での集団下校。

俺は膨大な荷物が入った紙袋を引きずりながら帰ろうとした。しかしあまりに荷物を詰め込んだので、紙袋が破けてしまった。

俺は困ってその場に立ち尽くした。


しばらく立ち尽くした後、声がかかってきた。

「ねぇ」

俺は声の方へ振り向いた。N子だった。

「荷物多くて大変なんでしょ?あたし、車で帰るんだ。もしよかったら乗せてってあげようか?」

俺は驚いた。N子が真剣な目で俺を見ている。いつもからかっていたN子が、いつになく真剣だ。

しかし、俺は断った。やっぱりなんか気恥ずかしかったからだと思う。

その後、どうやって帰ったか覚えてない。たぶん自分の親を呼んだんだと思う。



冒頭で述べた一幅の絵とは、N子が俺に「送ってってあげようか?」って言った瞬間の、俺とN子の向かい合った姿だ。

その瞬間の絵が、今でも俺の記憶から消えない。




いつも俺がからかっていたN子が、「乗せてってあげようか?」と真剣な顔で言ったこと。


N子は俺のことをどう思っていたのだろう?


N子は数ヶ月で転校していってしまった。


今となっては、全てが過去の思い出でしかない。


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