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ノイズ・レゾナンス:感情雑音の調律師  作者: 坂元たつま


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調律された絶叫とプロデューサーの計画

1. 包囲網:プロデューサーの冷徹な采配

律の耳に響く**『キーン』という耳鳴りのような音。それは、ノイズの轟音を遮断し続けた彼の聴覚神経が、突然の刺激によって覚醒し始めた証拠だった。だが、その微かな音の向こう側で、律は強大なノイズの壁**を聴き取った。

練習室のドアが、轟音と共に吹き飛ばされた。

入ってきたのは、タクトが報告していた**『プロデューサー』と呼ばれる女性だった。彼女のノイズは、『完璧な無関心』と『絶対的な支配』**という、およそ人間とは思えない冷酷なものだった。その背後には、ノイズを一切発しない、漆黒の戦闘服に身を包んだ複数のディストーション部隊員が控えている。

「白瀬和音。あなたには、我々の計画に必要な**『最高の調和の波形』**がある。大人しく捕獲されてもらう」

プロデューサーは、和音の顔を見つめ、静かに、しかし有無を言わさない声で言った。彼女のノイズは、律の聴覚が覚醒したばかりの耳に、氷のような激痛を与えた。

和音は、律の前に立ち、彼を守るように青白い刃を出現させた。

「来ないで!律くんには指一本触れさせない!」

和音のノイズは、**『恐怖』と『怒り』**が混ざり合い、激しく波打っていた。しかし、そのノイズの中心には、**律への『深い愛』**という、揺るぎない芯があった。

律は、激しい耳鳴りに耐えながら、和音の背中に触れた。

「和音…君のノイズは、以前よりも強い。俺が、君の音を調律する」

律は、聴覚を完全に回復していないながらも、プロデューサーのノイズを聴き取ろうと集中した。プロデューサーからは、感情のノイズが全く聞こえない。タクトと同じ、**『ゼロ』のノイズだ。だが、律は知っていた。それは、『自己への無関心』**という、最も危険なノイズであると。

2. 反撃の共鳴:聴覚なき調律師の進化

プロデューサーは、部隊員に指示を出した。

「調律師は生きたまま確保。切断師は、抵抗するなら力ずくで捕獲せよ」

部隊員たちが律と和音に襲いかかる。彼らは、ノイズを発生させない特殊な装備を身につけており、和音の**『切断』**の刃が通用しない。

「律くん、彼らからはノイズが聞こえないわ!切断できない!」和音は焦った。

律は、聴覚が曖昧なまま、和音の背中越しに状況を察した。

(タクトと同じだ。自分自身のノイズをゼロにしている。だが…!)

律は、和音の耳元で、かすれた声で指示した。

「和音!奴らには**『振動』がある!俺の聴力はまだ不完全だ。君の『視覚』と『切断』で、奴らの『肉体』**を狙え!」

和音は、律の言葉の意味を瞬時に理解した。ノイズがないなら、人間を攻撃する。

和音は、青白い刃を強化し、部隊員たちの腕や脚を狙って切り裂いた。ノイズを無効化する装備も、肉体そのものには無力だ。部隊員たちは痛みで動きが鈍る。

その隙に、律はプロデューサーのノイズに意識を集中させた。律の聴覚はまだ完全ではないが、彼には、プロデューサーの**『無関心のノイズ』の奥に、『世界に対する強烈な絶望』**という、深い溝のようなノイズが隠されているのが微かに聴こえた。

(この女は、世界そのものに絶望している。だから、世界を支配しようとしているんだ。)

律は、和音の**『愛』のノイズを軸に、自身の**『静寂への渇望』という過去のノイズを融合させ、『救済』の波形を作り出した。そして、その波形を、プロデューサーの**『絶望』のノイズ**へと送り込んだ。

律の共鳴は、プロデューサーのノイズに直接ぶつかった。プロデューサーの顔が、初めて苦痛に歪んだ。

「な…何を…!私のノイズは、誰にも触れさせないはず…!」

プロデューサーの**『ゼロ』のノイズ**に、一瞬、激しい不協和音が走った。律の共鳴は、彼女の完璧な防御を貫いたのだ。

3. プロデューサーの真意:世界を舞台にした調律

しかし、プロデューサーはすぐに体勢を立て直し、律に向かって手をかざした。

「小賢しい。だが、お前の共鳴は、まだ未熟だ」

プロデューサーの手から、漆黒のノイズの塊が律に向かって放たれた。それは、律が今まで聴いたノイズとは全く異なる、**『個人の感情を完全に無視した、世界の歪みをそのまま抽出した』**ような、絶対的な絶望のノイズだった。

律は、そのノイズの塊を聴き、全身を硬直させた。**『キーン』という耳鳴りが、『ギャァァァン!』**という破裂音へと変わり、彼の聴覚神経を破壊しようとする。

「律くん!」和音は、律の前に飛び出し、プロデューサーのノイズの塊を自身の青白い刃で受け止めようとした。

だが、プロデューサーは冷酷に言い放った。「無駄だ、切断師。そのノイズは、**『個人の感情』から生まれたものではない。世界の、『構造的な欠陥』**から生まれたものだ。お前の刃は、個人の感情のノイズしか切断できない」

和音の刃は、漆黒のノイズの塊をわずかに削っただけで、弾き返された。和音は吹き飛ばされ、壁に激突する。

律は、プロデューサーのノイズから、**『世界に対する根源的な諦め』と『人類への見限り』を聴き取った。プロデューサーは、世界は既に手遅れだと考え、自分自身の『調律』**によって、新しい世界を創造しようとしているのだ。

「お前たちがやっているのは、**『砂上の調律』だ。個人のノイズを消し去っても、世界が歪んでいれば、新たなノイズは無限に湧き出す。私は、世界そのものを『調律』する。『マエストロ』の計画、『原初の静寂』**を再現するために」

プロデューサーの言葉は、ディストーションの真の目的の一端を律に示した。

4. 誓いの共鳴:律と和音の新たな音

律は、立ち上がった。聴覚は激痛に苛まれているが、もう迷いはなかった。

「お前たちの計画は、ただの**『傲慢な独裁』だ。世界は、一つ一つのノイズが混ざり合って、初めて『音楽』**になるんだ!」

律は、プロデューサーの**『絶望』のノイズに、自分の『愛』と『希望』**のノイズを叩きつけた。彼の共鳴は、世界に対する絶望を打ち消そうとする。

プロデューサーは、その反発力に驚きながらも、新たなノイズの塊を放とうとした。

しかし、その瞬間、律の隣に、和音が再び立った。

和音のノイズは、激しい怒りと、律への深い愛が混ざり合い、以前よりも遥かに**『純粋で強力な波形』**を作り出していた。彼女は、律の手を握り、共にプロデューサーに向き合った。

「私の過去のノイズは、**『完璧であることへの執着』だった。でも、律くんが、私の不完全さも愛してくれた。だから、私の刃は、もう『過去を切り裂く』**だけじゃない」

和音は、青白い刃を、漆黒のノイズの塊に打ち込んだ。

キュィィィィィン!!

和音の刃は、プロデューサーのノイズの塊を、中心から両断した。それは、単なる**『切断』ではない。ノイズの根源である『世界の歪み』**そのものを、和音の**『愛』**のノイズが切り裂いたのだ。

プロデューサーは、自身のノイズが切断されたことに、初めて**『恐怖』**のノイズを放った。

「馬鹿な…!世界の歪みを切断する力など…!」

律は、和音の切断によって生じた**『世界の歪みの断片』を聴き取り、その一つ一つを丁寧に『調律』した。律の耳鳴りは、『絶望』から『安堵』**の波形へと変わり、律の聴力は、より鮮明に世界を捉え始めた。

プロデューサーは、自身の計画が狂わされたことに激怒し、増援部隊を呼び寄せた。律と和音は、プロデューサーの強力なノイズの圧力に抗いながら、なんとか練習室を脱出した。

律と和音は、手を取り合い、夜の街を駆けていく。

律の耳には、和音の**『愛』と『覚悟』**が混ざり合った、力強いピアノの旋律が、鮮明に聴こえていた。そして、和音のノーズは、自分を信じる強さという新たな音を奏で始めていた。

「律くん…もう、私から離れないで」

「ああ、和音。君のノイズは、もう俺から離れられない」

二人の**『愛の共鳴』**は、世界の歪みを調律する、新たな旅の始まりだった。

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