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ノイズ・レゾナンス:感情雑音の調律師  作者: 坂元たつま


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静寂の父と、選ばれし調律

1. 聖域の静寂:マエストロとの邂逅

長い通路の先、重厚な扉が開くと、そこには想像を絶する空間が広がっていた。ホールの中心には、宇宙を模したような巨大なホログラムが回転し、その中央に一人の男が静かに座っていた。

彼から発せられるノイズは、もはや「音」ですらなかった。それは**『無窮の静寂』**。聴く者の思考を停止させ、魂を深淵へと引きずり込むような、圧倒的な真空の旋律。

「よく来たね、律。そして私の最高傑作を支える協力者たちよ」

男が立ち上がり、振り返った。その顔を見た瞬間、律の全身に激痛のような衝撃が走った。記憶の断片が繋がる。幼い頃、自分を「救った」あの白衣の男。

「マエストロ……。あんたが、俺の耳を……」

「そうだ。私は君の両親の友人であり、君の主治医だった。君の耳は、世界の苦しみを受け止めすぎて壊れかけていた。だから私は、君に**『調律』**というギフトを与え、ノイズを制御する力を授けたのだよ」

マエストロのノイズは、**『偽りの慈愛』**に満ちていた。和音は震える手で刃を構え、響は必死にこの異常な周波数を解析しようとするが、マエストロの存在そのものがノイズの法則を超越していた。

2. 究極の誘惑:原初の静寂への招待

マエストロはゆっくりと律に歩み寄る。

「律、外の世界を見てごらん。憎しみ、悲しみ、嫉妬……。ノイズは絶えず人々を傷つけ、世界を歪めている。だが、今ここで私が**『原初の調和』**を起動すれば、人類は全生命が誕生する前の、あの完璧な静寂に戻ることができる。争いも、痛みもない。君がずっと欲していた、あの静寂だ」

ホールの巨大な装置が駆動し始める。律の耳には、世界中のノイズが凝縮され、それが一瞬で消え去る瞬間の**『快楽の予感』**が流れ込んできた。

「律くん、聞いちゃダメ!」和音の叫びが響く。「それは調和じゃない、死と同じよ!」

しかし、律の心の一部は、確かにその静寂を求めていた。彼の**『静寂への渇望』**が、マエストロのノイズと共鳴し、律の視界が白く染まっていく。

3. 三位一体の絆:愛が紡ぐノイズ

「……確かに、静寂は心地いいかもしれない」

律が低く呟いた。マエストロの口元に勝利の笑みが浮かぶ。しかし、律は和音と響の手を、今まで以上に強く握りしめた。

「でも、その静寂には、和音の弾くピアノの音も、響が必死に繋ごうとしている誰かの声も、何一つ入っていない。音が消えた世界で生きることは、誰とも繋がらないことと同じだ!」

律は、自分の中に残る**『静寂への渇望』を否定せず、あえてそれを『愛の共鳴』**の中に溶かし込んだ。

「響、変奏だ!俺の渇望を、**『生への執着』**に変えろ!和音、マエストロの静寂を、俺たちの感情で切り裂くんだ!」

響が絶叫と共に能力を全開にする。律の孤独な静寂は、数千、数万の感情が渦巻く**『生のエネルギー』**へと書き換えられた。和音の刃は、青白く、そして太陽のように輝き、マエストロの真空のフィールドを真っ二つに切り裂いた。

4. 決戦の幕開け:神話への挑戦

「……悲しいことだ、律。君なら理解してくれると思っていたのだが」

マエストロのノイズが、瞬時に**『絶対的な拒絶』**へと変貌した。ホールの空気が凍りつき、床が振動し始める。

「ならば、力ずくで調律してあげよう。世界を、正しい無音へ導くために」

マエストロが指揮棒を振り上げると、ホールの装置から漆黒の雷鳴のようなノイズが放たれた。それは人類の全歴史における**『絶望』**を凝縮したような波動だった。

「行くぞ、二人とも!これが俺たちの、最後のセッションだ!」

律、和音、響。三人のノイズが重なり合い、巨大な光の旋律となって、マエストロの絶望へとぶつかっていく。

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