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ノイズ・レゾナンス:感情雑音の調律師  作者: 坂元たつま


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ノイズの迷宮と心のディストーション

1. 誘惑の静寂:迷宮の始まり

『トウキョウ・エコー・テクノロジーズ』本社ビルの内部は、最新鋭のセキュリティとは裏腹に、驚くほど静まり返っていた。この**『無機質な静寂』**こそが、コンダクター、神楽泰斗の仕掛けた最初の罠だった。

律の耳には、ビル全体から**『期待』と『誘惑』**というノイズが、微かに、しかし持続的に流れてくるのが聴こえた。

「律さん、このビル…ノイズが変です。僕の変奏でセキュリティは無効化していますが、廊下の配置や照明が、まるで**『無関心』という感情を誘発するように設計されている」響は、自分の『変奏』**の能力でビル内部の設計図を解析しながら、違和感を訴えた。

和音も、視覚でその異様さを捉えていた。「私も感じるわ。この静けさは、私たちを**『個人の目標』へと誘い込んでいる。律くん、あなたの『静寂への渇望』、響くんの『承認欲求』**…」

和音の言う通り、律は、この静寂の中で、再び**『完全な静寂こそが正義だ』という過去の思考に引きずり込まれそうになっていた。彼の『共鳴』**の波形が、微かに揺らぎ始める。

「律くん、ダメよ!」和音は、律の手を強く握り、自身の**『愛情』のノイズを律に送り込んだ。「私たちの目的は、静寂じゃない。『調和』**よ!」

律は、和音の愛のノイズに触れ、我に返った。「ありがとう、和音。このビル自体が、個人の**『心の欠陥』を刺激するノイズの迷宮**だ」

2. コンダクターの襲撃:感情の逆流

三人がエレベーターホールに差し掛かったその時、天井のスピーカーから、**神楽泰斗コンダクターの声が響いた。彼のノイズは、『絶対的な自信』と『傲慢な歓喜』**という、支配者の音色だった。

「ようこそ、ノイズの反逆者たちよ。特に、切断師(和音)。あなたの**『完璧な調和の波形』**は、我々の究極のシステムに必要なエネルギーだ」

その声と共に、エレベーターから漆黒の部隊員が飛び出してきた。しかし、彼らは以前の部隊員とは違った。彼らの体からは、律と和音の**『最も深く隠した過去のノイズ』**が、増幅されて発せられていた。

和音に襲いかかる部隊員からは、彼女の母の**『過剰な期待』と『失敗への絶望』が混ざった、「完璧であれ」**というノイズが響く。

律に襲いかかる部隊員からは、**『静寂への渇望』と『世界の轟音への恐怖』が混ざった、「お前は孤独だ」**というノイズが響く。

「これは…!私たちの心のノイズをコピーし、増幅させている!」和音は、動揺のあまり、刃を出すことができない。自身のトラウマのノイズを前に、彼女の**『切断』**の能力は無効化された。

響もまた、部隊員が放つ**『変奏されたノイズ』に苦しんでいた。彼の『孤独』**のノイズが最大に増幅され、彼を襲う。

3. 三位一体の限界と突破

絶体絶命の状況の中、律は**『共鳴』**を試みた。しかし、部隊員が放つノイズは、律自身の過去のノイズであるため、調律しようとすると、律の精神が崩壊する危険がある。

「律くん、ダメよ!そのノイズは、あなた自身を壊す!」和音が叫んだ。

その時、響が叫んだ。「律さん、僕に任せてください!僕の**『変奏』で、このノイズを『書き換え』**ます!」

響は、律と和音の過去のノイズを捉え、それを**『克服した後の自信』**という、ポジティブな波形に強制的に変奏した。

ズバァァァン!

部隊員たちが放っていたトラウマのノイズが、一瞬で**『感謝』と『勇気』**のノイズに書き換えられる。部隊員たちは、ノイズの矛盾に苦しみ、動きが止まった。

その隙を逃さず、和音は青白い刃を具現化させた。

「ありがとう、響くん!」和音のノイズは、**『感謝』と『愛情』**という強固なものに変わり、部隊員たちを一瞬で無力化した。

律は、響の**『変奏』が、単なるノイズの操作ではない、『心の治療』にすらなり得ることを悟った。彼の才能は、三位一体の連携において、「防御と再生」**の役割を担うことができるのだ。

4. コンダクターの真の目的:感情の排除

三人は、コンダクターがいる最上階のサーバー室を目指し、さらに上階へと進んだ。

サーバー室の扉を前に、律は、扉の奥から聞こえてくる、異常な静寂に気づいた。

「この静寂は…ノイズがないんじゃない。全てのノイズが、一つの巨大な波形に吸収されている!」

響が、扉に触れ、ノイズの波形を解析した。「神楽泰斗…コンダクターのノイズです。彼は、このビル全体のノイズを、自分の精神力で吸収し、制御下に置いている。彼のノイズは、『完全な感情の排除』。彼は、感情のない**『情報体』**になろうとしている」

律は、扉を開けることを躊躇した。この中にいるコンダクターは、既に人間としての感情を捨て去り、**『世界のノイズを統制するシステムの一部』**になっている可能性があった。

その時、和音は、律の手を握り、決意のノイズを放った。

「律くん。私たちは、もう過去のノイズには負けない。あなたの**『共鳴』、私の『切断』、そして響くんの『変奏』。私たちの『愛の音楽隊』**の調和で、彼の偽りの調和を打ち破るわ」

律は頷き、和音と響と共に、サーバー室の重い扉を開けた。

サーバー室の中央には、巨大なサーバー群に囲まれて、神楽泰斗コンダクターが立っていた。彼の周囲は、死のような静寂に包まれていた。彼の体からは、以前の『自信』や『歓喜』といったノイズは消え、『無』、すなわち**『人類からの完全なる離脱』**という、冷たいノイズだけが響いていた。

「よく来たな、ノイズの反逆者たちよ」コンダクターは、感情のない、機械的な声で言った。「あなたたちの**『感情のノイズ』は、私が達成する『原初の静寂』**の最後のピースとなる」

律の耳には、コンダクターのノイズが、**『世界の終わり』**を告げるかのような、静かで恐ろしい旋律に聴こえていた。

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