ひなたのバイト
「てんちょー、今日21時からラストまで入れるんで、お願いしま~す♪」
そんな軽いノリでひなたから出勤の連絡が来る。
即座にHPと情報サイトに出勤情報を一括発信――それから10分もしないうちに、電話は鳴りっぱなし、ネット予約の確認も立て続けに入ってくる。
ただし、うちの“ひなた様”はネット予約不可。
そう書いてあっても読まない人は多く、
「なんで予約できねーんだよ!」
「サイト見づらいんだけど!」
と、あちこちに不満を書き散らす客もいたりする。
でも、ルールを分かってる“常連の客”は行動が早い。
すぐに電話で確保して、ひなたの枠はあっという間にSOLD OUT。
――所要時間、30分未満。
彼女の人気は見た目だけじゃない。
愛想の良さ、距離感の近さ、甘えるような話し方に、ちょっとした毒っ気も混ざっていて、絶妙にクセになる。
それでいて、いざプレイに入れば**ALL OK(※噂)**のオールラウンダー。
本番は禁止。もちろん禁止。お店としては絶対NG。
…が、彼女の場合、「絶対してない」とも言い切れない。
そのへんの“あやふやさ”もまた、伝説の一部なのかもしれない。
ただ、店としてひとつだけ困ることがある。
彼女はシフトを出さない。まったく、出さない。
月末になっても「来月の予定は?」と聞けば、
「ん~気分次第」
と、笑顔でかわされる始末。
お金が欲しいという感じでもなく、完全に“ひまつぶし”で働いているのか?それも良くわからなかった。
だがその人気と実力は凄い物があった。
どの掲示板でも名前が出るし、SNSでは「失敗が絶対無い嬢」とまで書かれている。
業界歴も実は長いらしいが、実年齢は34歳。だけどプロフィール上は26歳、そしてその若さを疑う者はほぼいないし、名前が浸透し始めると辞めてしまっているらしいが今は暇な追っかけにすぐ居場所を突き止められてしまうとこぼしていた。
身長162cm、バスト86のFカップ、ウエスト58、ヒップ86。
数字だけ見ても、まるでプロポーションのお手本。
初めてこの業界に飛び込んだのは20歳の頃だったらしい。
最初の店は客に甘く、要求がどんどんエスカレートしていったり暴力的な客やただで本番要求してくるちんけな客も多く取らされてしかも講習との名目で定期的にスタッフの性処理までさせられていたときもあってさと彼女は酔うとポツリと語る。
うちは小さな店だが、中身は“詰まって”いる。
単体でAVに出ていた子、他店でランキング上位だった子、
面接で「ごめんね、うちの色とは違うね」と落とされる子も少なくない。
他の店で人気があった嬢はお客を引き連れて来ることが多かったが、この店はそれを余り受け入れたくないのが本音だった。
風俗にのめり込み過ぎる客でのトラブル処理がスタッフの少ないこの店では対応がどうしても・・
疑似恋愛にSEXまで絡んでしまうと勘違いをしだすアホが増え始めるのも風俗店の悩みだ。
ただ
――“街で一番高い料金設定”は、ダテじゃない。
店の規模は控えめでも、在籍する女の子たちの密度と濃度は異常に高い。
「小さくても、味が濃い店」
そんな風に思ってもらえれば、それが狙いどおりだ。
そして、ひなたはその中心。
“来るか来ないかわからない幻の人気嬢”として、
今日も気まぐれに出勤をして、誰かの記憶に残っていき出勤時には
「プラチナ出勤」と表示までされる
ラッキーにもそのプラチナリピートにありつけたお客はさらにのめり込んでいった。