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明日の英気を養う

夜中に暁は自宅まで高遠に送ってもらったところ、先に屋敷に帰った金烏と玉兎が心配そうな面持ちで迎えに出てくれた。


「暁! 大丈夫だったか⁉……って、だいぶ疲れてるな」

「暁、おかえり。疲れているだろう。薬湯をもってこよう」


金烏がバタバタと出迎えると、その後ろから玉兎が静かに歩いてきた。

それを見て暁はほっとすると同時に、すごい倦怠感に襲われる。

とりあえず中へと2人支えられるようにして、部屋に入り部屋着に着替えると玉兎の持ってきた薬湯を飲み、暁は一息ついた。


「はぁ……疲れた」

「まぁ、あれだけ穢れを祓って疲れたら私達も呼べないだろう」


式神を召喚するのにはそれなりの霊力が必要になる。

暁の場合は陰陽師見習いよりはずっと霊力があるが、やはり金烏と玉兎を呼ぶにはそれなりの霊力が必要になる。


暁に付き従って町を歩く程度にはそこまでの霊力は不要だが、攻撃や防御などの戦闘になるとかなりの負担になるのだ。

暁もまだまだ修行不足を痛感しているが、一足飛びに霊力を増やすことは難しい。

今回も女房達の穢れを祓ったため霊力が少なくなり、金烏と玉兎を召喚できなかったのだった。


「心配かけてごめんね。もっと霊力付けるように頑張る」

「大丈夫だ。それより心配してたんだぞ! それで? 俺達を呼べない間にどうなったんだ?」

「あぁ、それなんだけど……」


暁は夜に二条邸で起こった出来事をかいつまんで説明した。

吉平に憑いていた蛇の妖の事

吉平の憑依体質であること

本体を調伏するために高遠も同行すること

それを聞いた金烏と玉兎は渋い顔をした。


「なかなか危険な妖だな」

「その辺の街の妖とは違うんだぞ。お前の実力で調伏できるのか?」

「それは……」

「光義に言って、この件からは手を引いた方がいいんじゃないか?」


確かに金烏と玉兎の言い分も分かるが、敵の力も分からないのに引くのもなんだか癪だ。


「でも、このまま町の小さな怪異を調伏しているだけじゃ、陰陽師として成長できないし。初仕事だから放り投げるのも……それに……」

「それに?」


言葉を区切った暁を促すように玉兎が次の言葉を問うた。

その時暁の脳裏によぎったのは、吉平に首を絞められているときに投げられてきた妖の感情だった。

底知れぬ悲しみ。悔しみ。憎悪。そして……寂しさ。

それを知っているからこそ、自分の手で調伏するべきだと思った。


「陰陽師として妖の想いを知ったからこそ、最後までやるよ」


2人の顔をまっすぐに見つめる暁の真剣な瞳を見て、金烏も玉兎もため息をついた。


「〝暁〟として調伏するのは大変かもしれねーけど、できる限り手伝うぜ」

「そうだな。まずは霊力の回復を促すその薬湯を飲んで寝るといい」

「あ、そうだ。あれ渡せばいいんじゃねー?」

「あれ……か」


”あれ”とは何だろうか。首をかしげる暁に、金烏はニマニマ笑い、玉兎は無言であった。


「詳しい話はあとだ。もう寝ろ!」

「そうだな。じゃあ私達は還る」

「うん、ありがとう。おやすみ」


二人が消えると、暁はため息をついた。

金烏と玉兎を召喚するには霊力が必要だが、屋敷にいる分には二人は自由に動ける。

それは光義の力が大きい。


二人は元は光義の式神で、現在は暁を守護するものになっているが、こういうときにはまだまだ光義の力を借りなければならない。


「はぁ……まだまだ修行が足りないなぁ。不甲斐ない……。でも、今は明日のことを考えなくちゃ」


そう気合を入れて、暁は寝所で布団に潜り込んだ。

疲れているせいだろう。

二条邸で仮眠を取った時とは違い一気に眠気が襲い、暁は深い眠りについた。


今回はちょっとしたおまけエビソードでしたが、次話からまた怪異についての話に戻ります。

それと、ジャンルをファンタジーから文芸(推理)に変えました。

現在の「春は出会いの季節なり」は推理要素が少ないのですが、これ以降の話は推理要素が強くなっていくので、ご了承ください!


ブクマ、★評価ありがとうございます!

日間ランキング11位いただきました!

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