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8:……そうなんだ。

外観同様、内装もギラついている王妃ミケの宮殿の謁見の間。赤地に金色の装飾が目に痛い……こちらもギラついた装いの王妃ミケが謁見の間でかしづくグラウとイサネに向かって放った言葉……声は低く軽蔑の目を向けている。


「久しいのうグラウ王子……前会うた時はまだ小さき子供であったかの?時の流れとは早いものよのう……してそなたら?なぜそのように汚らしい恰好をしておるのじゃ?」


着替えの入った荷物はクレパスに落ち、途中で助けたウサギたちの地下居住の手伝いを行い、道中草に紛れて偵察をし……残った村や町に立ち寄ったこともあったが容姿の事など後回しに食べ歩いていたグラウとイサネ。

指摘された通り、国のトップに会うには無礼で相応しくないのは確かだった。


「申し訳ありませんミケ王妃……【イスト】の情勢を耳にした我が主グラウ、居ても立ってもいられず……その身一つで国を飛び出し……無礼と存じながら急ぎ参じた次第でございます。」


イサネの礼儀正しく【イスト】に対して友好的である意味を含んだ返答に関心したのか、王妃ミケは特別に話を続ける許しを得た。


「なんと寛大な!ありがたきしあわせにございます!」

「ほほほほほ!よいよい!続けよ!」


作り笑顔で大げさに褒め、王妃ミケの機嫌を取ったところで本題に入る。


「……男たちを村に返していただきたい」

「よく聞こえんかった……もう一度申してみよグラウ?」

「グ、グラウ様っ!ダイレクトすぎますって!!」


ピキっと……王妃ミケの眉間に血管が浮き、音が聞こえたような気がした。なんのために媚びたのかと……イサネは慌ててグラウの顔を見て失言をしないようにと止めたかったのだが……王妃ミケを見つめる鋭く、芯のある視線を送っているのに気付いて口をつむぐ。そして……姿勢を正し、再びかしづき、グラウに習って同じ視線を送りながら、


「争いは何も生みだしません。豊富な資源を人殺しの道具に使うのは正しい判断ではないのでは?」

「召使いの分際でなんと無礼な……!!」

「イサネの言葉は正しい……ミケ王妃の行動は正しいとは言い難い……正当な方法で男たちに仕事を与えたらいいものをなぜ同じ国の民を使って略奪をする?」

「ふぅん……?大きな口を叩くようになったものよのう……グラウ?」


護衛の兵士も不安そうにしている……王妃ミケの額に浮き出る血管の数が増えていく。


「すべての民へ知らせをだし、拒否しよったのだ。王命に逆らうのであれば……後は言わずともよかろう?」

「……すべての民が従うことを拒否した……その理由が……ミケ王妃にはわからないと?」

「まだ口答えするかグラウ……そこまでわらわに歯向かうのであれば――」

「お、おまちください!ミケ王妃!なんの考えもなく申しているわけではありません!」

「……ほう?」


思いのほかグラウも頑固で……譲り合って話し合いをする様子が見えず、このままでは【ノース】にも危険が及ぶ可能性があると察し、イサネは事前に考えていた提案を王妃ミケに進言する。


「……魔タタビというものはご存じでしょうか?」

「魔タタビ……じゃと?」


ピンっと耳が立ち、しなやかに艶めく尻尾も反応する……食いついた!と口角をあげイサネは続ける。


「ミケ王妃もご存じですか?中々手に入らない嗜好品かと……そちらの群生地があるのが【サウス】なのでございます」

「……そうなんだ」

「グラウ様は黙っててください」


猫に効くマタタビと同じく、【アニマ】の世界にあるのが魔タタビである。


「そんなことは知っておるわ。だからなんじゃというのじゃ?」

「採掘場がある町の鉄工場から流れ出る汚染水が【サウス】側にまで届いており……群生地に流れ込み、成長を阻害し、絶えてしまう可能性がございます」

「……それはまことか?」


疑いの目を向けられる……都合よくそうなるわけないと。兵を呼び、地図を持たせ確認をする。流れる川の下流……確かに【サウス】に流れ込んでいることがわかった。


「……交易の制限をかけておったがやけに少ないと思っておった……ふむ……して、それが誠のことだとしてわらわにどうしろというのじゃ?」

「安く輸入して新しい品を作り、売りさばいて儲けましょう!」


ガッツポーズで立ち上がり気合の入った大声で言うイサネ。


「……?」

「……?」


その場の全員、頭に(はてな)を浮かべ……鼻息荒くドヤ顔をするイサネを凝視した。

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