SideStoryⅡ:バイパー、新しい恋
【フューサ】の町は相変わらず。
熱き戦いを繰り広げる屈強な男たち、それを特別室で観覧する金持ちと……中間の観覧席では一般層の獣人たちが会場を盛り上げていた。
「やはりテーィ・ガーが今年の総合首位か」
「【ホワイトゾーン】の面々の働きは悪かったな……ここの競技に興味がなくなっているような……」
「王都が荒れてると聞く……息のかかっているあそこはもうダメなのかもしれないな」
「あら?そんなことないんじゃない?ビーゾンっていう新人さんなんて結構魅力的だとおもうけど?」
【レッドゾーン】の受付でバイパーは試合が終わり流れるように会場を出ていく客の会話を耳を澄まして聞いていた。
「(いい事を聞いた……新しくきたってことは最新の王都の情報が取れるかも……うまく聞き出してイサネさんたちにおいつけば……!)」
日雇いの仕事をしながらイサネのことを諦めていないバイパーはなにか少しでもイサネに関わることが出てきたら即行動を起こしていた。
5日前には「おねぇちゃん!イイネ!」と騒いでいた酔っ払いに「イサネさんのこと?!」と聞き間違えで絡んで喧嘩になり、3日前にはイサネの事を考えすぎて荷馬車ごと川に落下し荷運びの仕事をクビになったり。恋煩いとはこんなにつらいのかと……ため息ばかりの日々を送るバイパー。
真っ直ぐ素直であるのだろうが、空回りしているのに早く気付くべきなのだが……その足はすでに【ホワイトゾーン】の建物の裏口へと向かっていた。
「(今は競技中のはず……はいるなら今!)」
蛇の獣人の一族は表立った仕事をしない。彼もその血を継いで闇の中で生きてきていた。ただ素直すぎる性格のせいもあって汚れ仕事は成功したことはない。良くて侵入して情報を得るだけ。
今回はお得意の情報を得ること……裏口のカギを難なく開け、音を立てずに潜み進んでいく。遠くから歓声が聞こえる……闘技会場は一番の盛り上がりを見せているようだった。今のうち……と言わんばかりに急いで目的の部屋を探した。
「(あった!ここだ!……終わった後なら疲れてるだろうから……中で隠れて待ってっと……)」
ビーゾンと札が掛けられら控室を見つけたバイパーはスルスルと中へ入り、衣装ダンスの中で相手を待った。
しばらくして足音が近づく……バタンっ!と音がし、部屋を歩き回っている。
そっと衣装ダンスの扉を数センチ開け、バイパーは確認した。
ぱぁっと……赤く妖艶な薔薇の花が視界を埋め尽くす感覚が彼を襲った。
バンッ!!!
「美しい人!!」
「あらびっくり……レディの部屋に忍び込むなんてダメよ?」
バイパーの悪い癖が発動……隠れていた意味もなく……ビーゾンの前に姿を見せた。
「なんて素敵なブラウンの髪なんだ……赤い瞳も美しい……まるで大輪のバラのよう……」
「うふふ……おませな子……一応お礼を言うわね?でも……ここにきちゃだぁめ……」
水の入ったグラスを持ちながら、ビーゾンはひざまずくバイパーの口に人差し指をピトっとつける。
「素敵な手……僕に噛まれてしまっても構わない……?」
ゆっくりと口を開き、鋭く長い2本の牙がキラリと光り……少し生ぬるい蛇特有の先端が割れたしたがチロリと人差し指に触れ。ビーゾンは一瞬ドキっと反応してしまう。
「私が欲しいっていうのかしら?」
「……無理強いはしません……けれど……自分を磨き上げ輝くあなたに僕は心を奪われた…………信じてください」
「かわいいこ……」
男社会で強さだけを求められ生きてきたビーゾン……鍛えたのは筋肉と戦いのセンス。
けれどバイパーの見方は違っていた。
女性らしく……そんな風に生きる時が来ればいいなと心の隅で思いわずかながら女性としての自分磨きを周りに気付かれずにやってきた……ビーゾンが本当に見てほしかったのは――。
「……ここでは色々と良くないの……ん……はい……じゃあ……またね?」
ビーゾンは近くの紙になにかを書いてバイパーに渡して送り出した。
「……イサネさんごめんなさい……僕は新しい恋を見つけました……!」
ウキウキで【ホワイトゾーン】の施設を後にしたバイパー。
【ウェスト】の王都で大変な目にあっているイサネは……なぜかフラれた。




