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37:……ん?これは……

 嬉しそうにグラウが自分に巻いてくれた外套(がいとう)に身をゆだね、顔をうずめるイサネ。

 いつも近くで感じていたグラウの匂いを、離れていた期間の分を取り戻すかのようにスーッ!スーッ!とすごい勢いで吸い込んでいた。


「イ、イサネ……その……それは汚れていると思う」

「はぁ~!関係ないですそんなこと!!グラウ様は寂しくなかったんですか?」


 そう言ったイサネは両腕をばっ!と前に差し出してグラウを待った。


「寂しくなかったわけがない……ひとりでいる事が……イサネが隣にいないことが……こんなにも世界の(いろどり)を無くすものだとは思わなかった……」

「私も……キツネさんにはなっていましたけれど……ずっとずっと寒くて寂しかったです……迎えに来てくださってありがとうございます……グラウ様」


 今までの旅の中、相手を気づかう思いで抱き合うことはあった。だが、今のふたりはそれ以上の感情を乗せて深く強く抱き合い、お互いの体温と鼓動を感じながら……ながくながく抱き合っている。


「あれ……グラウ様ちょっと痩せましたか?」

「……急いでいた……それに……」

「それに??」


 グラウの従者としてのイサネの顔が見える。主人の体調体格の変化は見逃さない……なにかあれば……責任は自分にもあるからだ。ムッとしているイサネの顔……その頬に手を添えフニフニと触りながらグラウは答えた。


「イサネに内緒で美味しいものを食べたら……怒るだろう?」

「それはそ……っ……ソウデス……ケド……」

「だから……早く済ませて朝食を食べに行こうイサネ……」


 自分の事をよくわかっているグラウの発言に照れて頬を膨らませているイサネ……その可愛らしい仕草に表情を緩ませながらも、グラウは残された脅威が近づいている事を口にした。


「よ、よぉし!じゃあ……ほんとのほんとに最後……」

「うん?……ん?これは……」

「命を奪わず救う方法ですよ!さ!やったりましょうグラウ様!!」


 グラウの全身が光り輝く……それはあの日一番強く感じた【聖女】の浄化と癒しの神秘の力。

 ガサガサと激しく怪しく揺れる木々……誘われるように木の陰から現れた黒に近い紫炎を纏った獣。


「私本能的に避けてたみたいで姿はちゃんと見れていなかった……のですけど……」

「……まさか同胞とは……尚更俺が後始末をする相手だったか……」


 世界にばら撒かれた暴走した【紫炎の魔女(リラ・ウィッチ)】の力に支配され残っていたのは黒狼。


「大丈夫ですか?」


 命は奪わないとはいえ攻撃をすることには変わりはない。同じ一族のひとりを傷つけることになる事を心配するイサネ。


「気に病むことはない……腕試し大会だと思えばいい事だろう?」

「あ~グラウ様悪い顔になってますよ?ふふふ!」


 ニコッと笑い、完全獣化している相手と同等にとグラウも完全獣化した。その姿は美しい白銀の大狼(おおかみ)

 黒狼がグラウの姿を見て一瞬ひるむ……それでも相手を見据え、低く唸りながら間合いを取り出方を見ている。


「(ほう……)」


 その様子にグラウは感心していた。凶暴になり、紫炎の力に支配されながらも黒狼として生きてきた経験が動きに出ていたからだ。それと同時に……自分の戦闘の知識を分けた相手であることも理解する。

「ならば……」と。

 浄化を前提とはしているものの、黒狼族同士の戦いであること……お互いの力を最大限に発揮し、力を示し合う……誇りをかけた戦い。


「ありゃ……悪い顔じゃなかったな……同族同士の殴り合いって確か年一のイベントでしかないからワクワクしちゃってる顔だ……感動の再会したばっかりなのに私のこと見えてないのでは……グラウ様ってばもぉ~~!」


 イサネはその場から下がり、さっきまで眠っていた木の根元で座って戦いの行く末を見守ることにした。

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