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29:少しでも……!

 螺旋階段を上り少し狭くなっている扉から出るとそこは監視塔へ上がる途中のまた螺旋階段。


「目を回したかグラウ?」

「いいえ……ここからどちらへ?」


 城の中庭が見える窓を指差し、演説ができるほどの大きなバルコニーを指差す。距離はそれほどないように見えるがここは監視塔……この高さから行くには難しいのではとグラウは不安そうな顔をする。


「昔はよくこれで……遊んでいたものだうんうん……素早く風を切って下りる感覚がたまらなくてな」


 てっぺんまで上り、床に置いてある布袋の中からハンガー上の鉄の棒を取り出してレパード王はニコニコしている。


「……さすがに一緒に行くとロープは切れるかもしれん」

「本当に……これで……?」


 屋根の先端からバルコニーまで伸びるロープ……リンクス王子の婚礼に合わせ、カラフルな飾りの旗がいくつもつけられている。そこを……滑って下りるとレパード王は言った。高い場所が苦手というわけではないグラウだが……足を滑らしたらさすがに無事では済まない高さに息をのむ。


「よし!余がバルコニーに着いたらすぐに来るのだぞ!そーーれーーぇーー」


 元気いっぱいのレパード王に若干引きつつも、バルコニーから手を振るレパード王に続いて滑り出す……グンッとロープが怪しくたわんだ瞬間……ブチっと一番聞きたくなかった音を出して監視塔側のロープが切れた。


「しまった……グラウは筋肉の塊であった……体重が余とは……グラウ!!!」

「……くっ!……少しでも……!」


 落下していく中……器用に回転をかけて鉄の棒にロープを絡ませて一時的にターザンのようになりながら勢いをつけて飛んでいくグラウ。ただ落下していくだけよりも受け身を取りやすくしたのだ。地面に着地する直前に手を離し、一回転しながら両手と両足を獣化させ、爪をつかって勢いを抑え、壁際まで砂埃を上げて移動し……レパード王の視界から消える。


「なんと……こういう時は器用にこなすというのになぜ普段は鈍くボケ散らかしているんだ……」


 聞こえていないことをいいことに辛辣なことを言っていたレパード王は手すりから中庭を覗き、着地したグラウの無事を確認した。


「流石の身体能力よグラウ……そのまま前の扉から中へ……とはいかぬか……」


 子供であればそこまで警戒されることも無かったかもしれない、脱獄したことがバレていなければ兵が集まることも無かっただろう。ぞろぞろとグラウのを囲んでいく兵たち。


「脱獄は……さすがに許されませんよグラウ様!」

「警戒しろ!まだ【聖女】様に浄化をしてもらっていない!!」

「動くな!!」


 城を訪問した時と同様に槍を突き立てられる。だが……前回のように簡単に捕まる事はない。


「槍を収めよ!!!」


 バルコニーからレパード王の声が響き渡る。流石の兵たちもビクッと体を震わせ視線をグラウからバルコニーへ移し……そこに立つ王を呆然と見ている。


「優秀な我が国の守り人たちよ……余の友人を投獄すると申すか?」


 レパード王の威厳のある鋭い眼光は兵が動くことを許さなかった。

 完全に獣化したことを知っている兵たちには驚きもあっただろう……姿を取り戻した王の姿を目に映したことで瞳に宿っていた紫炎が消えていた。


「し、失礼いたしました!!(……俺は何を……していたんだ?)」

「どうぞこちらへ!!」

「申し訳ありませんグラウ様!!お進みください!!」


 ハッとしてという言葉がまさに見合うだろう……規律の取れた動きに変わった兵たちは扉までの道を開け、両サイドの兵たちを含めすべての兵が敬礼をして扉までグラウを送り出した。無事に辿り着き、大きな両扉を開け、中に入ろうとした。


「ごきげんようイケメンさん?」


 バルコニーから急いで下りてきたレパード王が後ろに見えた……焦った顔をしていた。

 目の前の女性はにっこりとほほ笑み、グラウの顔を見上げながら……ゆっくりと瞳を開けた。

 声をかけられ視線を下へ移すしたグラウの目に映ったのは……縛られ横たわるイサネ。


「イサ――」


 グラウにはイサネしか見えていない……はずだった。

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