19:……俺に……任せろ。
触れられた指が優しく、せっかく受け止めてもらった涙を溢れさせてしまった。
「……元々……【紫炎の魔女】を追うと……決めていた」
「え……お嫁さんに……?」
「……違う!……そこからちょっと……離れて?」
「あ、はい」
まだ【ノース】を出てから2カ月も経っていない。だから、嫁探しは世界が落ち着いてから……落ち着いてからじゃ無いと、出来ないとグラウは考えていた。。
「……まだ時間はある……少しくらい……寄り道しても……大丈夫」
「ぐすっ……なかなかいいこと言いますね……【聖女】の役目は寄り道っと……」
「あ……いや……大事……でも……」
「……ありがとうございますグラウ様」
ニコッと笑顔になり、礼を言うイサネ。
「……重たく考えすぎてました!ここでグラウ様をひとりにするのも心配ですしね!」
「イサネ」
「え、あ、へ?!」
「……それは……俺も同じ……だから……離れない――離さない」
自然と体が動いていたグラウは、イサネを引き寄せ……抱きしめていた。
「……そういうのは……お嫁さんに言うんですよ……?」
「……うん」
「わかってな――……心配してくれてるんですよ……ね?」
「……うん」
「……仕方ないですね」
グラウの背中に手を回したいイサネ。体格が違いすぎて届かなくて……なんだか少し不格好。でも、お互いの鼓動と体温は伝わって……少しだけ……ほんの少しだけ――。
「よし!食べちゃいましょう!その後はお昼寝で充電!いいですか?」
「……ん」
べりっと勢い良くグラウの腕を剥がし、再び食べ始めるイサネ。
行き場のなくなった腕に戸惑いながら渋々に……グラウもイスに座りなおし、まだまだ山のように残っている軽食をおいしそうに笑顔で食べるイサネを見ながら、一緒に食べる。
変わっていく世界……本当なら、急いで【ウェスト】に行くべきなのだろう。
だが、イサネはまだグラウの従者でいられるこの時間を大切にしたい……まだ一緒にいたいと……その想いが勝って……この数日間だけは、甘えて過ごすことに決めた。
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【ヴィヴァの町】に滞在して10日――。
「……食べ尽くした……気がする」
「そうですねぇ……旅の資金もそろそろ心もとなくなってきました……食べ過ぎですね」
色々とやらなければならないことはあったはずなのだが、まずは食べること。それを優先した結果、食っちゃ寝生活を送っていたふたり。町をぶらつきながら、財布の中身を確認したイサネがぽつり。
「ぅ……さすがにグラウ様を働かせるわけにはいかない……明日出発しましょう」
「……別に……働ける」
「いやまぁ……この町なら仕事に困ることはなさそうですけどそういう問題じゃなく立場的なことをですね?」
「立場……ん……なら……【ウェスト】にいけば……問題無い」
なにがあるのかは言わず……残りの資金で黙々と携帯食と新しい服などを購入し、宿に戻り、明日に備えて早めに眠った。
明朝……初日の朝から世話になっている屋台の店主に挨拶をし、手土産をもらって【ヴィヴァの町】を出て【ウェスト】に入る。
「ん~!やっぱりこのトルティーヤうまうま……っと……地図でも確認しましたけど【ウェスト】はほんとひろいんですね」
「……王都まで歩くなら……数週間……」
「いくつか町に寄りながらって感じですね?その途中でグラウ様の言ってたグラウ様が問題なくお金を稼げるところがあるんですっけ?」
薄くなった財布を揉みながらイサネが問うとグラウは頷き、珍しくガッツポーズをした。
「……俺に……任せろ」
「わ……珍しく鼻息すごいですね……?」
「イサネと……美味しいものを……食べるため……だ」
「ぷふっ!なんですかその理由!」
テンション高めのグラウを見て笑いながら、少し弾んで寄り添って、イサネはグラウの隣を歩いていく。




