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14:別の女性を追っています……。

【サウス】の都から離れ、小さな林に逃げ込み暖を取った。

 土地勘が無いグラウたちが潜むこの場所が安全である保障はないのだが、あえて危険を承知で濡れた衣服を早急に乾かすべく火を起こした。


「怪我してしまうくらいなら上着来ていた方が良かったですね……」

「結局……買えずじまい……恥ずかしい……」

「(完全獣化すればすっぽんぽんなの忘れてる……?どこからくるんだこの恥じらいわ……)」


 と、警戒しているにも関わらず危機感をそこまで持っていない様子だった。

 そんなふたりに近づく足音……さすがのグラウも気配に気づき、警戒の姿勢をとり身構え、息を吹き返して間もなく、少し顔色の悪いイサネを守るように前に出る。

 足音はひとつ……。


「やはりあの血の匂いはお前だったなグラウ」

「ヴァルロス王……?」


 2mはあるだろう貫禄のある大男が草むらから顔を出す。首から下げた2本の牙の飾りが勇ましい戦士の風格を際立たせていた。


「なぜ……おひとりで……?」

「都に残した者たちがいまだ騒ぎ立ててうるさくてかなわなくてな……あぁなに、お前に無礼をはたらいたことをワシがしかったせいなんだがな?ワハハハハハ!!!」


 豪快に笑う【サウス】の王ヴァルロス……断りを入れることなく座り、グラウたちと焚火を囲う。


「夜は冷える……水から上がったばかりなら尚更だろう……我が国の民が早とちりをしたようですまなかった……詫びさせてくれ」


 あぐらをかいたまま地面に着くだろう勢いで頭を下げるヴァルロス王……声を掛けられるまで頭を上げようとしなかった。


「あの……こちらも説明が足りなかったところがあります……苦労をおかけして申し訳ありません」

「……俺のせいだ……頭を上げてくださいヴァルロス王」


 ニカッと笑顔で「相変わらずのようだな」とグラウを見て笑った。

 そして、ひとりできた理由がもうひとつ……


「【サウス】の民は穏やかそうに見えて喧嘩っぱやくてな……下手に【イスト】があーだのこうだの言い出すと話にならん……だからワシが直接話にきたのだ」

「そう……でしたか……」


 一旦は追われることが無いという事がわかり、しばらく焚火を見つめながらヴァルロス王はグラウとの思い出話を語り始めた。


「お前が18くらいだったか?初めて【ノース】の代表として武闘会に現れ、次々と各国の強者を倒していったのは圧巻だったなぁ」

「…………」

「まさかその時に付いた通り名が……【白銀の黒狼シルビオ・シュヴァルツ】ですか?」

「そぉそぉ!漆黒の肌に映える白く美しい長髪……整った筋肉に滲む汗が煌めき乙女たちは釘付けよ!優勝した後の祝賀会で囲まれて困っておったわ」


 またしても大きな声で笑い声をあげるヴァルロス王。しかし、最後のひと言を聞いたイサネの顔が険しくなり、グラウはどこか遠くを見て考えないようにしているのが見て取れた。


「若い盛りだったのにお前は誰ひとりとしてなびかず興味がなかった……それは今も変わらずか?」

「今……今は――」

「そうなんですね?!今回の旅の目的はそんなグラウ様にしびれを切らした王妃様の命令でお嫁さん探しなんです!」


 機嫌が戻り、自分たちの旅の目的を伝えた。そして……なにかを察するヴァルロス王、イサネを招き寄せて小さな声で耳打ちをしながら話しをする。


「そなた……グラウの従者なのか?ひとりで?」

「あ、はい……普段から身の回りのお世話全般すべて任されてまして、今回の旅も何人か付ける予定でしたけど私だけでいいってグラウ様が」

「ほうほう……グラウがなぁ……なるほどなるほど……」


 続けてグラウも招き寄せ、こちらもコソコソと小声で囁くように話す。


「なぁグラウ、いい子は見つかったか?ん??」


 含み笑いをしながらヴァルロス王はグラウに問うが……


「……今は……まだ……別の女性を追っています……」

「うん……色々おかしいがまず別の女性という言い方はあまり良くないから彼女の前では言うな?……嫁探しをしているのではないのか?」

「【聖女】……【紫炎の魔女(リラ・ウィッチ)】……」

「り……ラ……?ぐっ………?!」


 グラウが口にした名を聞いたヴァルロス王の様子がおかしくなり、頭を抱え苦しみだした。

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