13:……そうか。
水中都市に潜り2日目……薄暗い洞穴にグラウとイサネはいた。
「……どうしてまた牢に入れられたかよく考えてください」
「…………すまない」
今度はグラウも一緒に牢の中……うっかり発言のおかげで聞く耳を持ってくれる者はおらず、新天地で指揮をとっている王に都にとどまっている兵士が水鏡で連絡を取った際もグラウのことが正しく伝わらなかったせいで仲良く閉じ込められている。
「はぁ……怒ってても仕方ないですね。やっぱりなんでも顔パスってわけにはいかないんだなぁ……」
「【サウス】は……訪問経験が無い……王との面識は……武闘会の時に数回……【ウェスト】で……話をした程度なんだ……」
「だとしても観客として同行したものもいるはずですよね?今ここにはその人たちすらいないってこと?……【イスト】の動向を知っているみたいだったのに民間人しかいないなんてことはあり得ないとおもうんですが……」
ミースは【イスト】という言葉に大きく反応してグラウたちを捕らえた。たまたまミースが一般人ではなかった……という理由で終わらすには少し違和感があった。
「……【紫炎の魔女】がすでに手を出している?」
「可能性は……ある……だが……ミースから魔女の気配は感じなかった」
「うーーん?……ん……どういう……ひゅっ……!」
考察をしている最中、イサネの様子がおかしくなった。言葉に詰まる……言葉にできない……息が続かない。
「イサネ……?」
「あ……れ?おかし………3日……ゴボッ!!」
薬の効果がある状態で水中で呼吸をする時、空気が大きく口や鼻から漏れることはなかった。そしてミースから告げられていた薬の効果期間は3日……まだ時間はあったはずだった。
「グ……グラ……さ……ゴブッ!ゴボッォッ………っ……」
「イサネ!!」
体に収まっていたすべての空気が抜けたように、沢山の空気の泡が洞穴の天井の隙間を抜けて水面へ上り……ぐったりと体の力が抜けきったイサネが水中に浮いている。
「……っ!!おい!!開けろ!!」
「なにを急に大きな声で……ここを開けるわけにはいかない……ふぁぁ……大人しくしてろ」
中の状況をチラ見しただけで、牢番はやる気なくあくびをした。
「……そうか」
ドンッ!!!…………ドンッ!!!
「は?!おい!!や、やめ……ひっ!!」
イサネを右腕で抱き、左肩で石の格子に体当たりをして牢を破ろうとするグラウ。その形相とものすごい力で格子に体を打ち付けてる様に怯え、牢番は逃げ出した。残念ながら……鍵を落としていくという定番の流れは無く……。
ドッ……バキッ……ビキッ――!!
数回の体当たりでヒビが入りもろくなった格子を掴み破壊し、慌てて水面に浮上していく。砕き方も荒く、がむしゃらに上を目指したせいもあり、鋭く剥き出しになった石の先端で肩と背中にかけて傷をつくったままグラウは地上を目指す。
「……イサネ!」
砂浜に寝かせ、声をかけるが返事はない……顔は青白く呼吸も、鼓動も聞こえない。
「……っ」
グラウは迷いなくイサネの鼻をつまみ、大きく息を吸い込み……唇を重ね息を吹き込む。
力を加減して心臓付近を数回押し、息を拭きいれる……数回い繰り返し、もう一度……と、息を吸い込んだ時、
「ゴブッ……ォグッ!!」
水を吐き出し、呼吸をし始めてくれた。
「げっほ!ゴホゴホ!!……はっ……はっ……ぁ……グ……ラウ……様……」
「イサネ!!」
「は……い……ケホッ!……めい……わく……かけちゃい……ましたね」
「そんなこと……気にするな……イサネ……もう……大丈夫……?」
水で濡れた額を手の甲で……苦しさで流れた涙の痕を親指で拭い、戻ってきたイサネの体温を感じ安心するグラウ。心底安堵した……少し泣きそうになっているような……切ない笑顔をイサネに向けている。
「いい年してなんて顔してるんですか……ぁ……まったく……こんな怪我まで……ダメですよ……貴方は王子……なんですから……」
「………イサ――」
「治させてください……ダメって言ってもやりますけどね……?」
グラウの肩から白い砂浜に落ちる赤い滴に気付いたイサネは、グラウの濡れた頬に両手を添え………温かい光で包み込み傷を癒していった。




