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12:……美しいな。

 目に見える範囲ではすべてが確認できないほどの大きな入り江。

 中心のあたりだろうか、白い大きな建物があり、半分だけが水の中に沈んでいる。周りには岩礁……乾ききり、水の中できれいで色づいていたであろうサンゴ礁も白くカラカラになっていた。


「……本来ならここも水の中だったんでしょうね」


 崖の上から見下ろす【サウス】の都……元々こういう場所であるというのであれば、白と青の色が映え美しい都として素晴らしいのかもしれない。……本来ならグラウたちが立っている崖のギリギリまで水は満ち、水中都市として水と共に生きる獣人たちが暮らしている。


「とりあえず服を買わなきゃですね」

「……はずかしい」


 大回りをして崖を降り、砂浜にたどり着き……気付く。


「どうやって……?」

「…………」


 ザザァン……ザザァン……

 波の音をただただ聞きながら、白い建物をただただぼーっと見つめるしかないグラウとイサネ。


「あら?どちら様?」


 突然背後から声をかけられ驚き、振り向いたそこにいたのは水色の髪が日の光で虹色に輝く美女。


「あ……その……はっ!ほら!グラウ様!」

「俺……?……娘……都へ行くには……どうしたらいい?」


 お嫁さん候補だ!とイサネは感じ取り、グラウと会話をさせコミュニケーションを取らせようとするがグラウはいつもの調子……。


「都に……ですか?どうしてもというのであればご案内できますが……」

「ぜひ!貴女に!」

「は、はぁ……ではまずこちらに」


 砂浜を歩いて数分……見たことのない大きな巻貝に扉が付けられている家に通される。

 中は天窓から注ぐ太陽の明かりだけで薄暗いが、中心に置かれたツボをしっかりと照らし、そのツボからは怪しげな湯気が上がっていた。


「ここは……?」

「今までは水の中にあった薬屋です。あなた方、水中で呼吸できないでしょう?この薬をまず飲んでもらわないと案内もなにもできないわ」

「…………くっさ」


 鼻が利くあまり、失言をかますグラウ。否定はしないようだったが、美女の笑顔が引きつっていた。


「鼻つまんで飲んでください!」

「…………っぐ!」


 小さなショットグラスに汲まれたのは、茶色をした表面の油膜が虹色に揺らめくドロドロの液体。意を決して飲み干し、一瞬だけめまいを感じたが、口の中に残る違和感だけ残し、体の変化は感じなかった。


「これで水の中でも呼吸ができます、効果は3日ですので忘れないでくださいね」


 再び美女の後をついて行く。次に進んでいくのは……水の中だ。


「くぁ……あ……あれ?息ができる……不思議……」

「……水の……感じ方が……違う」

「地上と同じようにしていただいて大丈夫ですから……さ、こちらが【サウス】の都です」


 水中に入り、広がっていた光景は圧巻だった。


「あの建物……王城ってやつだったんですね」

「……美しいな」

「ふふ!その言葉はとても光栄です……ただ……今はその美しさも半減……」


 美女ミースは変わり始めた【サウス】の事を話しながら都の中を案内して周ってくれた。

 引き潮と満ち潮というものがあり、通常ならそれを繰り返していたのだが……数カ月前から引き潮だけを繰り返すようになり、徐々に水かさが減っていっているという。さらに追い打ちをかけるように【イスト】から流れ込んでくる汚染水が上流で溜まって入り江に流れ込む清浄な水の量が減り……気温の上昇も著しく蒸発も加速している……とのことだ。


「今都に残っている住人は僅かです……入り江の向こう側の深い水底に新たな都を……と王は今動いています」

「……」

「まだ【イスト】が攻め込んでくるという情報は来てないみたいですね……こんな時に――」


 イサネの独り言が聞こえてしまい、ミースは険しい表情をする。


「それは本当ですか……?」

「……俺たちは……【イスト】から……きた……」

「ばっ……!その言い方は……!」


 ミースは睨み、水中に浮かび高い声で鳴いた。

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