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11:このまま……?

 早朝の朝焼け――小高い丘から見渡した【イスト】の空と大地は赤く染まり、夕焼けの空はこれよりも濃いのだろうかと胸を痛めながら【サウス】へ――。


 **********


「そういえばなんですけど……【イスト】に入る時も今も……正しく国境を越えてないですよね?」

「…………」

「引きこもりなのに意外と顔のしれてるグラウ様のおかげでどうにかなってる気はしてますけど大丈夫なんですか?」


 広い野原が広がる平坦な道を進みながらふとした疑問を口にするイサネ。

 どうしても参加しなければならない国同士が関わる行事に出ていたグラウ。現地に赴く際は転移魔法で移動していた為……本人の中に国境の概念が無かった。知っているようで世間を知らないといったところ。


「国境なにそれ美味しいの?な顔しないでください……まぁもう2国勝手にまたいでるんで気にしないようにします……これから先も【白銀の黒狼シルビオ・シュヴァルツ】の顔パスでどうにか通しましょう」


 通り名をイサネに言われ、体がビクッと反応するグラウ。


「その名は……呼ぶな」

「え?かっこいいと思いますけど【白銀の黒狼シルビオ・シュヴァルツ】」

「イサネ……ちゃんと……俺の名を……よんで?」

「っ!…………そういうこと……あんまり従者にいうものじゃないですよ?……グラウ様」


 何故ダメなのか……なんていうのはグラウはわかっていない。イサネは平常心を取り戻そうとグラウから少し離れ先を歩く……ほんの少しだけ熱くなった頬の火照りを冷ますように。と、思っていたが……日が高くなるにつれて気温が上がっていき、体に熱がどんどんと籠っていく。


「あっづううぃ!ってことは……ここは夏ってことね……服をどうにか……あと水も……動けなくなる……」

「っ……ふっ……――――」

「グラウ様、もし暑いようでしたら上着を脱い…………えぇえぇぇ?!グラウ様!?」


 道の真ん中でうつぶせになってすでに倒れていたグラウ。


「北の狼には辛すぎたってこと……?!ってそれどころじゃない!とりあえず……あそこ!」


 少し先に数本並んだ樹木があり、日陰が出来ているようだった。グラウの体を背中に……ひょいっと簡単に背負うイサネ。背中から感じるグラウの息遣いが荒く速い。


「……力こそパワーって女神さまに言っておいて良かったな……役に立ってる……んしょっと……さて……」


 仰向けにグラウを日陰に寝かせ、とりあえず上着を脱がすイサネ。


「ほんと引きこもり王子とは思えない筋肉…………私は見慣れてるとはいえお嫁さんになる人はきっと……きっと……――??…………なに考えてるんだろ私……そうだ!水を……水を探さなきゃ……」


 ポーチに入れていた小さいハンカチで一旦グラウの体の汗を拭きとれるだけ拭き、耳を澄ませて水の音が近くにないか探すイサネ。獣化が進んでいるおかげと前向きにとらえていいのかわからないが、近くの岩の下の方から川の流れる音がハッキリとわかる程聞こえてきた。主人を置いていくのは少しためらったが命に関わる……それにまだ、都までは遠く距離がある。グラウが所持している腰のカバンの中から皮で出来た空の水筒を持ち出し、急いで水筒を満タンにして戻る。


「グラウ様……ゆっくり飲んでください……」


 吹き抜ける風も熱を持っていたが、日陰ではある程度軽減されているようで、少しグラウの呼吸が落ち着いてきていた。ゆっくりと冷たい水をグラウの口に注ぎ……ゆっくりと飲み込んでくれた。


「イサネ……?」

「はぁー良かったです……【サウス】にはいって数十分で倒れないでください……まったく……」

「……あつい」

「……上着は脱がさせていただきました……上裸でいきます?」


 究極の選択ではある。

 一国の王子が恥を捨て上裸で人里に降りるか、数十分刻みで倒れてイサネに迷惑をかけるか……少し悩んだが後者を選択して返事をした。


「イサネ…………迷惑をかけ――」

「大丈夫ですよ!とりあえずもう一度水を汲んできます!そうしたら急いで都に行って……この土地にあった服を買いましょう!」

「このまま……?」

「問題ないですって。逆に見せつけた方がお嫁さん寄ってくるんじゃないですか?」


 なんで聞いたのか?という疑問と、そんな体目当てで寄ってくるような嫁は嫌だなと思いつつ……なぜか少し……機嫌が悪そうなイサネの背中を追って街を目指す。

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