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魔女の実験~余命を宣告された王子を救いたい  作者: 紫音
再会

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21/22

離愁

もうちょっとだけ続きます。


 オーギュスを伴い王城から帰ってきたアレックス。二人を出迎えたリズとイオリス。オーギュスはというと、イオリスの姿を見るなり、その場に膝を突き頭を垂れた。アレックスもその隣に並び、オーギュスと同様頭を垂れる。


「イオリス様、無事にお目覚めになられて、そのなんと申せばよいのかわかりませんが……それでも私は安堵しております。良かったと、心から」

「ありがとう、オーギュス」


 それから王城でのイオリスの扱いについて状況を説明してくれた。今、イオリスは外出扱いとなっている。近隣でさえ出歩かなかったイオリスではあるが、気分転換と療養を兼ねて外出中という風になっているらしい。


「……これまで外出をしなかったというのに、よくもまぁ通ったもんじゃ」

「有無を言わさずではあったが、多少なりとも事情を知る者たちに協力をしてもらった。ただ……」


 オーギュスはそこで言葉を一度止め、真剣な様子でイオリスにその視線を向ける。


「陛下方には一切の情報をお伝えしておりません」

「ありがとう。その方が助かる」

「……いえ」


 二人の会話にアレックスが複雑そうな表情になる。それをリズが怪訝そうな顔で見つめると、アレックスは視線から逃れるように顔を伏せた。オーギュスがいう陛下というのは、恐らく国王たちのこと。つまり王子であるイオリスにとっては親に当たる人間たちだ。親の存在が希薄だったリズにとっては気にする相手ではないが、傍に親がいる環境で育っていたイオリスがそうすることに違和感を抱く。


「……良いのか、イオリス。ここを出れば二度と会うことはないぞ?」

「構わない。あの人たちとは、もう五年以上顔を合わせていないから」

「そういうものなのか? 王族というのは」

「そんなことはない」


 リズの疑問にオーギュスが否定の言葉で答える。ではどういうことなのか。


「リズ、それ以上はここでは」

「別にいいさ。俺は十歳近くまでチェリアと一緒だった。けれど宗教都市側の意向とはいえ、チェリアと俺を引き離してから目に見えて俺の体調が悪くなったことで、負い目を感じているらしくてね」

「そうじゃったのか」

「オーギュスが引き留めてくれてはいたんだけど、それを強引に進めたのはあの人たちで。その時も色々と合って、結果俺はあの人たちから距離を取った。それ以降、向こうから俺に会いに来ることはなくなったってだけだ」


 罪悪感を抱いている。合わせる顔がないなどというのは言い訳だ。ただ何年もそれが続くと、当たり前になってしまう。イオリスも特に何かをしてほしいわけでもなく、この先もそれは変わらないと。


「じゃが……」

「いいんだ。俺も、会ったところで何を言っていいかもわからないし、そもそも信じてもらえない。俺がいなくなっても、これまでと変わることはないからいいんだ」

「……」


 イオリスが今の身体になったこと、説明したところで信じられるものではない。しかし、それ以上にイオリスの中に親への情が残っていないのだろう。既に切り捨てていると言ってもいい。よくも知らないリズが立ち入ってよいものではない。今はそれで納得しておくと、リズは頷いた。


「では妾とイオリスは昼間の内にここを出る」

「もう行くのか?」

「人間たちの出入りが多い時の方が都合が良いからの」


 目覚めたばかりですぐに行動するのか。もう少し休んでもいいのではとアレックスは引き留める。


「外套を羽織ったところで、妾らの髪色は目立つ。あまり目に触れるような真似はしたくないのじゃ。心配いらぬよ、妾が消え去る時までイオリスは妾が見守っておる」

「リズ……」

「少なくとも、お主らよりは何百年と生きるからの」


 長い時を生きる。これ以上、ここにとどまったとて別れがつらくなるだけだ。特にずっと傍にいたオーギュスにとっては。イオリスは一向に立ち上がろうとしないオーギュスの前に膝を突くと、その手を取った。


「今まで感謝するよ、オーギュス。アレクも。リズとの出会いから、これまでにも影で俺のことを支えてくれた。たぶん、それが俺にとっての後押しだったから」

「イオリス様っ」

「生きてみる。王族としてではなく、イオリスとして。その決断をさせてくれたのはお前たちだから。ありがとう」

「……勿体ないお言葉です。どうか、イオリス様が望むままに生きてください。どこにいようと、私たちが望むのはそれだけですから」

「あぁ。お前たちも、どうか壮健でいてくれ」


 もう会うことはない。まずは遠く離れた土地へ移動する。そうリズは伝えていた。少なくとも数十年は戻らないと。この土地、この王都でリズは長いこと住んでいた。だから離れる必要がある。せめて世代交代が終わるまで。この土地にリズが住んでいたことを覚えている人間が、その寿命を終えるまで。そこにはオーギュスとアレックスについても含まれるのだ。


「達者でな、オーギュス、アレックス。お主らといた時間、悪くなかった」

「あぁ……お前も元気でな」

「うむ」


 


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