第32章『彷徨える巨影』
逃げ続け、探し続けて。
向かう未来は闇の中――
『どこに行ったの?』
薄暗い迷宮で影が忙しなく蠢いていた。
本来では光が届かないはずの迷宮内部は、辺りに点在する魔鉱石が放つ輝きで微かに陰影を浮き上がらせていた。
影の群は何かに追い立てられ、蜘蛛の子を散らすかのように四方に逃げ惑っていた。
その原因となる巨大な影が、重い足取りで入り組んだ迷宮を進んでいた。
小刻みに全身を震わせ、荒い呼吸を整えることもせずに、周囲に視線を巡らせている。
本来であれば中層域に存在しないはずの存在に、縄張りを追いやられる魔物の数が増えていく。
自らの住み家を追われた魔物達により、迷宮内は張り詰めた空気で満たされていた。
ソレの歩みは、ある目的を果たすために行われていた。
何か巨大なものが這いずり回ったような跡と微かなマナの残滓を追い続けているのだ。
その先で目的が果たされるかは、ソレにも分かっていなかった。
だが、もしかするとという淡い望みだけが、ソレに行動を起こさせていた。
何故自分の前から姿を消したのか。
その疑問を問い掛け、答えを得るためにもソレは歩み続ける。
見捨てられたのか、という疑念が頭を過ぎる。
幾度となく経験してきた結末に、心が闇に蝕まれていくのを感じる。
胸の奥が黒く染まっていくのを懸命に抑えながら、その真意を推し量ろうとする。
しかし、どれだけ思考を巡らせたところで推測の域は出ない。
やはり、直接問わねばならない。
先行きは深い闇に覆われて見通せないが、ソレは答えを求め進み続ける――
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